{第九十九話} アーマー

オイラー武具店の生産ラインがあるエリアから定時時間になり、作業員達が出てきた。

「は~あ、今日も終わった終わった」

「飯食って帰るか」

「そうだな。ケティング主任は?」

「今日も一人で残業するってよ」

「本当かよ~」

「でもケティングさんって、あれでも昔はすごい発明をしたらしぜ」

「えー、ただの残業好きなおっさんじゃないのか?」

「ハッハハハ」

歩きながら話しをしている三人組の笑い声が辺りに響いた。

そんな会話を笑い声は休憩室でお茶を飲んでいたケティング本人にも聞こえていた。

「お前達には分かるものか、私の苦しみなど」

拳を強くに握り、机で作業を始めた。

そこへ男が一人やってきた。

「ケティングさん」

「あ、オイラーさん」

「今日も残業ですか?」

「あ、いや。これは、すみません」

「いえ、気になさらず。貴方が仕事に熱心なのは重々承知していますから。お陰で政府から請け負っている大切な極秘プロジェクトのラインも滞りなく動いている。つらい気持ちも分かります。優秀な技術者であった貴方のすばらしい発明、そのすべてを奪われたのですから。貴方が「アーマー」を開発するまでは訓練での兵士達の怪我が絶えず兵士達が十分な経験をつめなかった、この国の兵士達が弱かったのも仕方ありません。だが、貴方がアーマーを開発したお陰で兵士達のより実戦に近い練習が出来るようになり、兵士達の戦闘力が飛躍的に上昇しました」

「ですが、アーマーはもう私の物ではありません」

「許せませんな~。貴方からアーマーの権利を奪った「武具店レクトロ」の社長「レクトロ・タバレ」武具店レクトロの武具は今期の出荷数は過去最高だとか。貴方が開発したアーマーの影響が大きいと言うのに」

「路頭に迷っていた所を拾っていただいたご恩、決して忘れていません」

「ここで結果を残していただければ、ケティング防具店の復活にも協力できるというもの」

「本当ですか?」

「本当ですとも」


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オイラーはケティングとの会話が終わると、応接室に入った。

応接室にはガウスが座っていた。

「来ていたのかね?彼とはもう会ったのかね?」

「いえ、これからです」

「機嫌を損なわなぬように気をつけたまえよ。科学者や技術者と言った連中は丁重に扱わんといかん。私の様にな」


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「ここが「オイラー武具店」の工場か」

「どうしますか?正門はしまっていますが」

確かに正門はしまっている。

何処か中に入れる所は無いかと、辺りを見回すと作業員用の出入り口があった。

そこから隙を見て敷地内に忍び込んだ。

敷地内に忍び込んだは良いが早速警備室のモニターに表示されてばれてしまっている事には気づいていない。


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警備室では侵入者が入ったと応接室にいるオイラーの元に連絡が入った。

「どうした?」

「オイラー会長、工場内に侵入者です!」

「何?!」

警備室のモニターに映った昌達の顔をアップにした物をオイラーが居る応接室のモニターに映し出した。

「この少年は!」

自分の直属の部下である三人組が相手した事があるだけあってガウスには見覚えがあった。


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工場内を進んでいると所々に生体認証ロックが掛かった扉があったが、ネラが端からハッキングして開けていく。

しかし、内側から空けられない扉が現れた。

これはどうしたものか?

取り合えず辺りを見回すと、頭上をダクトが通っている事に気づいた。

そのダクトには金網がついていて、簡単に外れた。

扉の向こう側にもダクトがつながって金網がある。

「ミイ、頼めるかな?」

「はい!」

ミイはダクトを通って扉の向こう側に出ると、ボタンを押して扉を開けた。

「ありがとう、ミイ」

この後もミイに頼む事がありそうなのミイにはオレの肩に乗っててもらおう。


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「まさか、探し物が向こうから来てくれるとは」

「どうするおつもりですか?」

オイラーとガウスはモニター越しに昌達の様子を見ている。


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また似たような扉が現れたので、またミイにダクトの中に入ってもらった。

ミイは暗いダクトの中を懐中電灯を片手にトコトコ歩いていく。

少し先ほどのダクトに比べれば距離があるだけかと思いきや、ミイに矢が飛んできた。

ミイはかわいい見た目の割りに、京一は戦闘能力を十二分に入れている。

そのため、飛んできた矢はすべて軽くかわし、矢が飛んで来た方向を見ると小さい手のひらサイズでミイと同じ位の人形が弓を構えて立っていた。

気づけば、ミイはそんな人形達に囲まれていた。

ミイはネラ達に助けを求め、ネラとネイも自身のミニメイドをダクトの中に送り込んだ。

ネラのミニメイドは弓を持っていて、ネイのミニメイドは双剣を持っている。

どうやらミニメイドは主に似るらしい。

ミニメイド達を囲む人形は十数体はいる。

戦闘を始めたが、人形達は決して強くない。

簡単に倒せるレベルだが、数が多いのが厄介だ。

倒しても倒しても、何処からとも無く沸いてくるが、確かに数は減ってきている。


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警備室に人形を操っている人間がいるが、限界がきたらしく、人形達は全滅した。

「そんなバカな!?」

「全滅か」

オイラーの「全滅」の一言に驚き、武器を構えて乗り込もうとする三人組がいる。

彼らは昌の部屋に乗り込んできた三人組だ。

この三人組はガウスの直属の部下で、ガウスの指示で直接動いている。

「こうなったら、オレ達が新しい武器で!」

「それには及ばんよ」

「え?」

応接室から出て、戦闘に加わろうとする三人組をオイラーは止めた。

「あのダクトには面白いものを配置している」

「アレを使うのですか」

オイラーはニヤリと笑った。


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ミイ達は人形達を全滅させて、ダクトの中を進んで行った。

しばらく進むと、武具を身に着けた人形が立っている。

再ほどまでの人形達とは違い、様子が違う。

ミイ達は警戒態勢に入った。

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