{第九十八話} オイラー

ブルーキャッツでおじさんについて詳しい話しをソアリンに聞く事にした。

「あの店が火災現場になったのはヤツらが仕組んだ計画だ。君のおじさんである京一はさらわれた「ルキャメラ」に。京一は生きている」

今回は気分を変えてカフェラテを飲みつつ話しを聞いているがはじめて聞く単語が出てきた。

「なんなんです、その「ルキャメラ」って?」

「勢力を拡大しつづける謎の組織、今回の国王暗殺を計画したのもルキャメラだ。ヤツらの真の目的はもっと大きく深い。そのために京一の力が必要だったんだ」

「おじさんの何が必要だったんですか?」

「ヤツらが欲しいのは京一が開発、設計した「MPインフィニティプロダクション」通称「MIP」の開発。これは魔力を限り無く無限に生成できる無限稼働機関だ。帝国ばかりか、この世界が必要とする魔力をすべて補うことが出来る。しかしこの技術は無限の魔力を生成するのを目的に作ったが、使い方を間違えればこの世界を滅ぼす兵器になりうる事が分かった。ルキャメラはMIPの技術を悪用して、この世界を手に入れようとしている。その事に気づいた京一はMIPの設計図や研究成果等のデータをまとめて封印したが、ルキャメラに封印の事を悟られてしまった。なんとかMIPのデータだけでもヤツらの手に渡らないように誰か信用できる人物に託す必要があった」

「それって」

「ああ、MIPのデータが入ったデータクリスタルをGOSに埋め込んで君に渡した。つまり君にこの世界の重要なカギを託したんだ」

「そうだったのか」

下を向いて手首につけたGOSを見ると、一部色が違う部分が確かにあった。

きっとこの部分にデータクリスタルが使われているのだろう。

「当然ルキャメラはGOSに隠されたデータクリスタルを奪還しようとするだろう。だが、クリスタルを強引に取り出そうとすると、京一が作った防衛システムが発動。取り出そうとした人物の命を奪い、クリスタル内のデータは消える」

「しかし、防衛システムも万能ではない。戦闘中は武器等のシステムに機能の大半が使われ防衛システムが機能しない。つまり、データクリスタルを回収するには、その防衛システムがOFFになる戦闘中に君を倒して奪わないといけない」

ここでマスターも話しに参加してきた。

マスターもこの件には深く関わっているらしい。

「君が今後狙われる事になる理由だ。WHBもおそらく昌のサポートに回るであろうネラのために京一が設計した物だろう。これからもルキャメラはデータクリスタルを狙って君達に戦闘を挑んでくるだろう。だが、今後は俺達がフォローする。困った事があったらいつでも相談してくれ」

「ちなみに、おじさんは今何処に?」

「それは...」

「すまない、そこまでは分かってないんだ。ヤツらには京一の頭脳が必要だ。そう簡単に危害は加えないだろう」

答えに詰まったソアリンに変わってマスターが変わりに答えた。

「昌、必ず俺達が居場所を突き止めて見せる。くれぐれも軽率な行動はするなよ」

「政府や警察だけではない、ルキャメラの力はこの世界のあらゆるところに及んでいるからな」


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広い部屋の奥に置かれた椅子にアルキメデスが座っており、向かいにあの上司が立っていた。

「この書類に書かれた「国王暗殺計画」これは何ですか?」

「分からないな、何故このような物を見せる?」

「貴方の指示ではなかったのか、そうお聞きしているのです」

「私の?馬鹿な」

「貴方にとってハネット国王は邪魔者。居なくなったほうが、都合がいいはずです。アルキメデス様、コレは我々ルキャメラの崇高な意思に反する行為です。いつからルキャメラは野蛮なテロ組織に成り下がったのですか」

「すべて君の憶測にすぎん。直情的でいかんな、君ともあろう者が。私もまたルキャメラの一人として正義と平和のために行動している。その信念は一度たりとも揺らいだことは無い。私は暗殺などしらんよ」

「信じましょう、その言葉を」

「ところで、データカプセルの奪還はどうなっているのかね?早くあのデーターを取り戻さねば計画に支障が出る事は分かっているだろう。聡明な君ならば」

「ご心配なく、ご指示に従ってすでに次の手を準備中です」

「結構」

「では、私はこれで」

上司はアルキメデスとの話が終わると部屋から出て行った。

アルキメデスは部屋から出て行くのを確認すると椅子の背もたれに深く寄りかかり、扉とは反対の方向を向いた。

「そろそろ扱いにくくなってきたな「ガウス」め」


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昌達が家に帰った後のブルーキャッツ店内。

マスターとソアリンが話していた。

「良かったのか、本当の事を言わなくて」

「では、さらに彼らを危険な目に?」

「それもそうだが...」

「あらかた調べはついた、コレをみれくれ」

「これは帝国の南西にある工業地帯の一角か」

「ああ、京一はここに居る」

「やはり「オイラー」が絡んでいたか」

この話しを聞いている者はもう一人。

ソアリン達が話しをしている机の下にネラに遣えているミニメイドが立っていて、会話の内容を一通り録音すると、店を出てネラが居る家に帰っていった。


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ネラは帰って来たミニメイドから録音データを回収し、皆が居る場で再生した。

「これは?」

「なんだが、怪しかったので聞かせてもらいました」

「会話の中に出てくる「南西の工業地帯」って何処?」

「帝国は「北西」「北東」「南西」「南東」の四つのエリアに分かれていて、それぞれスラム街と繁華街がある「バラス区」農園や牧場がある「ファーム区」防具や武具等を生産している工業地帯「リト区」そして居住区の「スイツ区」の四つの区に分かれています。そして「オイラー」は工業地帯にある会社の社長の名前です」

ネラの説明でようやく理解した。

「「オイラー」は社長の名前で会社名は「オイラー武具店」兵器密造の疑惑があるって京一も言っていたわね。ナノトクル学園が見学を申し込んだけど断られたりしたしね。とても怪しいわね」

ネイの説明も加わって完全に理解した。

次に向かう場所は決まったな。

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