{第六十八話} 異世界でオセロ
手紙と封筒のデザインも決まり、後は姫様が手紙を書き終われば郵便局に来た目的は達成される。
姫様はネラと一緒に別室で手紙を書きに行ってしまい、この部屋にはオレとおじさんとミイだけだ。
ネイもまだやることがあると言って何処かに言ってしまった。
暇なので、紅茶と飲みつつ雑談。
「おじさんはどうして郵便局にいるん?さすがにトップだがらってわけじゃないだろ?」
最初から気になってたんだよね、おじさんがわざわざ顔を出す事があるだろうか、オレの経験上おじさんは信頼できる部下を下につけて「あとは任せた!」って感じだからな。
かと言って、すべて人任せにするわけではなく、それぞれの部下が何が得意で何が苦手かすべて把握した上で命令している。
命令する内容が重要であればあるほど「命令」を強調し、必要があれば自らスケットに行く。
おじさんの仕事中の座右の銘は「部下の失態は上司の責任、上司の成功は部下のお陰」だからな。
多少は振り回される事があるだろうが、いい上司そのものなのかもしれない。
まぁ、働いたこと無いけどな。
「ちょっと調べ物をな...」
「調べ物とは?」
「騎士団長への殺人予告が何処からの物か調べていた。帝国、少なからずここ帝都での手紙はこの帝都中央郵便局が99.9%を担っているからな、調べるくらい容易い事さw」
「理解理解、結局分かったの?」
「分からんって事が分かった」
分かっていないとも言う。
と言うか、本来はそう言う。
「0.1%を引いたのか」
「そんな冗談は置いといて、分かったのであとは突撃するだけだ」
「オレは?」
「私に任せなさい!」
「お、おう」
そんな雑談をしていると、おじさんのスマホが鳴り出した。
「ちょっとすまん」
「いいってことよ」
電話に出たおじさんを紅茶を飲みつつオレは耳を少し傾ける。
「ん?どうしたんだ?」
「...」
「あ、やっぱりw」
「...」
「え?そりゃねぇよ、オンラインゲームじゃないんだからよ~」
「...」
「出来ないことは無いが...やるの?本当にやるの?」
「...」
「分かった、今やってる事が片付いたら一緒に連れて行くわ」
「...」
「じゃあの」
電話を切り、ポケットにスマホをしまったおじさんは「仕方ないか」と言った感じの顔でため息をついた。
「どったの?」
「怒られたw」
「誰に?」
「神様w」
「ん?w神様?w」
思わす飲んでいた紅茶を吹きかけたぞ?
「つまり、さっきの「一緒に連れて行く」のはオレか?」
「せやで」
その時に詳しい話を聞けばいいか。
5分後...
「ゲームが出来ないな、すぐログインエラーだもんな...」
「仕方ないだろ、現世の時間は止まってるんだからw」
「ぐぬぬ...」
スマホの画面に表示された「ロクインエラー」の文字を見て、オレはスマホをソファー投げた。
インターネットを使わないアプリなら通常通り使えるが、そういったゲームは長時間の暇つぶしに向かない。(当社調べ)
結果、オレが行き着いた先は「マインスイーパー」なわけだが、久々にやってみると結構面白いな。
今思えば、初めてプレイしたゲームはマインスイーパーかもしれない。
親のPCに最初から入っていて親がやってるのを見て気になってやったのが最初だったな。
かと言って、ルールが分からなかった当時のオレは適当のカチカチして爆弾を引き当て、何度もゲームオバーになって「何が面白いんだ?コレ?」と思いやめた気がする。
ルールやシステムを知って、ハマるのにはあと何年か経ってからだ。
30分後...
「オイオイ、角が取れるぞ?wいいのかな~」
「あ...オワタw」
クリエイトで出したオセロで遊ぶオレとおじさん。
何故オセロかって?異世界=オセロ見たいな風潮あるじゃん?
「おじさんオセロ強くね?」
普通であればオセロの決着って前面が埋まって白色と黒色のどちらの石が多いかで決まる物のはずだが、おじさんとオセロでの決着の付き方は「置けなくなる」「置くところが無くなる」と言った感じだ。しかも序盤の5、6手でだ。置かれた石十数個が全部黒くなる。
「オセロなんて、ただのマルバツゲーム」
「やかましいわw」
せめて将棋にしろよ。
「さーって、オセロを使って一稼ぎするか」
「やめとけって、どうせあれだろ?オセロをこの世界で始めて作った人間になって、特許とってお金儲けするんだろ?」
「少し違うな」
「何だと?」
「特許と言う物がまず存在しなくて、国の偉い人と話しをして特許と言う制度を作るが抜けてるぜ?」
「あ~」
「ちょっと国王の所に行ってくるか」
「やめとけw」
「冗談w冗談w」
そんな下らない話しをしていると、姫様とネラが帰ってきた。
姫様の手には封がされた先ほどの封筒を5通持っていた。
「手紙を書き終わりました。これはどちらに渡せばいいんでしょうか?」
「俺が貰おう」
姫様はおじさんに封筒を渡した。
「中身を見るなよ?w」
「見るわけ無いだろw普通に貰っても見ないし、今は郵便局のトップだぞ?そんな事したら写真か動画を撮られて、SNSに載せられて炎上するからな」
「おk、SNSに上げて炎上させようぜw」
そう言い、スマホを構えた。
「そのセリフはイカン、炎上の矛先がお前になるからな?」
「ですよね~」
「何の話をしているんですか?えんじょう?何が燃えるんですか?」
オレ達の話しを横で聞いていた姫様は話の内容をつかめない様で、とても不思議そうな顔をしている。
分からないのも当然だ、「炎上」の意味と使い方が違うし「SNS」なんて知る由も無いだろう。
「強いて言うなら、オレかな?w」
「燃えているようには見えませんが?」
「そうだな、オレは炎上する可能性のある未来を別の選択肢を選ぶ事で回避したのさ」
「選択肢をミスった時はタクシーに乗ればいい」
「そんなタクシー現実には無いわw」
もしそんなタクシーがあるなら素敵なタクシーに違いない。
「この後は何か用事があるのか?」
おじさんに言われて気づいたが、このあとの予定ってなくね?
「お腹が減ったのでご飯を食べに行きましょう!」
たしかにオレもお腹が減ったな。
朝食と言えるのか分からないが、食べたのはアレだけだ。
今日は一日が長く感じる。
4時に起こされ、気づけば7時でベットに倒れ、ちょっと街を歩けば姫様に出会う。
濃いわ~普段のオレの生活が普通のあの乳酸菌飲料なら、今日は濃いヤツどころか原液を一気飲みレベルだ。
そんな一日も、腕時計の針は12時を指していた。
飯だ、飯だ~!
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