aki_last
近くの公園に行くと、桜の花はまだ散らず、咲き誇っていた
「私…桜が散るのを見たくなかった。辛くなるの」
周平との春の別れのこと
美帆ちゃんの笑顔のこと
初めて颯真に話した
彼は黙って聞いてくれた
「亜紀、
めちゃくちゃ、かっこいいじゃん」
「でしょ?だからね、私、桜が散るのを見るのが嫌だったの
でも、颯真となら、見れるかも?と思って…」
隣に並ぶ彼を見上げてそう言うと
颯真は私の方を向かず遠くを見つめて強い口調で話始めた
「亜紀が好きになった男だからアイツ…きっとすっげぇいいやつなんだと思う
でも俺はだいっ嫌いだな」
「どうして?」
「亜紀を泣かすやつはどんなヤツでも嫌いなんだよ」
「そんなこと言うんだねぇ、颯真」
「な、何だよ」
「ありがと 」
恥ずかしそうな彼の横顔を見てると
ふわりと空に花びらが一片、舞った
「あっ」
私の声を聞くとすぐ、彼は後ろから強く抱き締めた
「なぁ、亜紀、目閉じて」
「嫌だよ」
身体の向きを変えて肩に手を置くと
もう一度言った
「いいから」
「だって、颯真いなくなったら」
風にあおられて花びらは次々と散り始める
心が震えた
「大丈夫だから、早く」
「…わかった」
彼の袖口を摘まんだまま、固く目を閉じると瞼にそっと唇が触れた
「亜紀、桜が散っても俺はここにいるよ
どこにもいかない
だから、亜紀も…俺から勝手に離れていくなよ
もし、亜紀が俺の隣でいたくなくなったら、そん時はちゃんと話して」
「颯真、そんなことないよ」
「うん、でもな、俺らまだ学生じゃん。
だから、亜紀をずっと守っていくなんて軽はずみなことは言えない。
今の俺にはそれだけの度量もない」
「わかってる」
「けど、今、これだけは言える
俺…いるから
亜紀の側にいるから
この先、どんな道を歩くとしても、俺がいること忘れんな」
「んっ」
ゆっくり重ねられた唇から伝わる彼の思いに涙が溢れた
『ずっと側にいる』
どんな未来が訪れるかわからない私達には
それは不確かな言葉なのかもしれない
でも、
彼のその言葉は
この先、私の心の中で
ずっと生き続ける
支え続ける
未来への道を照らしてくれる
「ねぇ、颯真」
「んー?」
「颯真ってさぁ、いい男だね」
「あったりめぇじゃん、今頃、気付いたの?」
「私もいい女になんないと!」
「ふっ、だな」
いつか、すべてのことから彼女を守れるようになった時
また、ここで亜紀を抱きしめよう
そして、今度はずっと…じゃくて
『一生側にいる』
って言うんだ
fin
Your smile ノン❄ @non_non129
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