aki_6

颯真と出会って1年


また、周平にサヨナラした桜の季節がやってきた



「なぁ、亜紀、明日、花見行かない?」


「お花見?ちょっと遅いんじゃない?もう散り始めるよ」


「いいじゃん、行こうよ」


「んー、行かない。お買い物にしようよ。洋服とか見たいし」


「買い物?まっ、いっかぁ」



別に買いたい物なんて、なかった

ただ、

散りゆく桜を見たくなかっただけ。




新しく出来たショッピングモール

たくさんの店が建ち並び、私達はウィンドショッピングを楽しんだ




「亜紀っ」


人混みの中に懐かしい声が響いた


周平だった


振り返ると隣には美帆ちゃんの姿も。

少しは戸惑っているような周平にこちらから近づいた



「周平、美帆ちゃん、久しぶり」


「亜紀ちゃん…」


困った顔で俯いた美帆ちゃんにすかさず言った


「美帆ちゃん、笑えるようになったんだよね?周平と一緒なら」


「うんっ」


そう言って私が見たことのない素敵な笑顔を見せた彼女


きっと、幸せなんだ


「良かったね」


「周平、私も幸せになったよ」


少し離れたところで不機嫌そうにこっちを見てる颯真に視線をやった



「そっかぁ、亜紀、そっかぁ」


安心したように目を細めて笑う周平


「そうだよ。じゃ、もう行くね」


「あー、亜紀、ほんとに大丈夫だよな?」


「もう、相変わらず周平はお人好しだね。

周平は美帆ちゃんのことだけ心配してな。

彼…大切な人なの。すごく……

じゃ、ほんと行くね」


「うん、またな」


「うん、また、いつか」



周平のこと…まだ心の隅に生きていると思ってた

でも、今、周平の顔を見てやっと気付いた


私の心の中は颯真でいっぱいになってること。



「ごめんねぇ。高校の時の友達だったの」


「ふーん」


「ねぇ、今からお花見行こうか?」


「何だよ今更。行かないって言ったじゃん」


「やっぱり行きたくなったのー、行こ!」


「勝手なヤツだなぁ」






「何だよアイツ

先々歩いてって亜紀ほったらかしじゃん」


「周平、何にもわかってないね」


「ん?何が?」


「よーく見てごらん

あの人、さっきから何度も後ろ気にして見てるよ」


「そう?」


角を曲がろうとした時さりげなく差し出された彼の手を亜紀はしっかり握った


「ねっ?

あの人、亜紀ちゃんのこと大切にしてくれてると思うよ」


「そうだな。そうかもしんないな」


「絶対、そうよ」



星の数ほどいる人の中で、出会って、別れて、そして、また巡り会う。



愛する人と出会えるのは奇跡なのかもしれない




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