aki_3
彼女を背中におぶった時、首に回された細い腕
その時、発した言葉に淋しげな表情の理由がわかった気がした
俺の部屋に連れて帰ってベッドに寝かせた。
安心したようにスヤスヤと眠り続ける
どれぐらいたったか俺もソファーで眠ってた
「えー!ここどこ?」
寝室で聞こえるアイツの声
「うっせぇなぁ、夜中に大声出すなよ」
「せ、先輩っ何で?」
「お前なぁ、酒弱いんだから、あんま飲むなよ」
「私、何かしました?」
「バカか、女なんだから何かされたかって、心配しねぇ?」
「されたり…したんですか?」
「ハハハ、おもしれぇ女。
何もしてねぇよ。
寝言で男の名前呼んでるような女に手出せるかよ」
「え?私…何て?」
「周平ぃーって言ってたぞ。彼氏か?」
軽く言った言葉に一気に固くなった表情の彼女、慌てて玄関に向かった
「帰ります。お世話になりました」
「ちょっと待てよ、今からどうやって帰るんだよ。もう電車ないっ…」
肩を掴んで振り向かせると
彼女の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた
「ごめん、俺…」
必死で涙を止めようと手の甲で口をおさえるも、後から後から溢れてくる涙
そんな彼女を見てると
どうしていいかわからず、
思わず抱きしめた
彼女はそんな俺に抵抗することもなく
遠慮がちにシャツの裾をきゅっと握った
腕の中で震える身体を更に強く抱きしめて背中をさすると声をあげて泣くんだ
どんだけ、その男のこと好きだったんだよ
「ごめんなさい。私…まだ酔ってるのかも
ほんと、帰ります」
俯いたまま俺の胸を押した
「帰んな」
「え?」
「普通、そんなんで帰せないだろ」
「でも……」
「いいから。
シャワー使うんなら適当に
あっ、着替えなぁ、何かあったかなぁ 」
リビングに積み上げられた洗濯物の山の中に、手を突っ込んでるゴソゴソ探し始めた先輩
「あの、先輩って、彼女、いないんですか?」
「いたら、いくら泣いてるからって女、泊めないだろ」
「それは、そうですよね」
「はい、これ」
着替えを渡されて戸惑いながらも
シャワーを借りた
出てくるとソファーで横になってる先輩
「俺、寝るからな、おやすみ」
「あのー」
「何だよ、早く寝ろよ」
「こっちで寝てください。私はここで」
「いいって」
「良くないです」
「じゃ一緒に寝る?」
「……。」
「だろ?」
「はい、寝た寝たぁ」
「…一緒に…寝ます」
「お前まだ酔ってんのか?」
「酔ってません」
「寝るだけですむと思うか?」
「思いません」
「自分で何言ってんのかわかってんの?」
「……わかってます」
「あんなぁ、昔の男忘れたいから抱いてくださいとかやめてくれよ」
「そんな……」
一気に血が昇るのが自分でもわかった
寝室に戻ろうとした時、どすどすと私に向かって歩いてきた先輩に通りすぎ様にグイっと腕を引っ張られ、ベッドに倒された
「や、やっぱりいいです」
「今更、怖くなった?」
首を横に振った途端唇が押し付けられ、
私は彼の背中に手を回した
乱暴になったり、優しくなったり彼の動きにあっという間に翻弄される
行為が終わり、ギュッと抱きしめられた時、再び涙が溢れる
「また、泣くのかよ勘弁してくれよなぁ」
「ご…め…」
口を動かそうとすると親指で涙を拭ってくれ額に触れるだけのkiss
「もう謝んな
お前、大して知りもしない男とこんなことすんの初めてだろ?」
「ぅん」
「だよな。もういいから今日のことは忘れろ。ゆっくり…眠れ」
どうしてだろう
最初っから、こうなることがわかってたかのように彼女の温もりが愛しく思えた
きっと、また違う男の夢を見てるであろう彼女の寝顔を見ないようにして髪を撫で目を閉じた
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