第13話
俯く横顔も
風に揺れる栗色の髪も
伸ばした細い指も
俺の鼓動を早めてた
あの頃
気がつくといつも彼女の姿を探してた
きっと、初めて会った時から
俺は君に恋してたんだ
「美帆…陽、沈んじゃったね」
「うん」
「帰ろっか」
「…うん」
「どした?」
「うううん、いこ」
俺の手を引っ張って歩き出す
車に乗ると美帆が泣きそうな顔で見つめる
「どうした?何かあった?」
「周平くん…あの、ほんとに帰っちゃうの?」
「え?」
「だって…えっと、まだ………帰りたくない」
そう言うと恥ずかしそうにプイっと窓の方を向いてしまった
「美帆…
ごめんな、俺、わかってなかったよな
こっち向いてよ」
「やだっ」
「美帆…なぁって」
「いやっ」
少し強引に肩を掴んで振り向かせると真っ赤になって目をそらす彼女
熱い頬に手を伸ばした
「美帆…俺もまだ一緒にいたい」
「ほんと?
私…変なこと言ってない?
周平くんといると、すごくわがままになっちゃいそうで…」
「わがままなんかじゃないよ。
俺は美帆が素直に言ってくれて嬉しいよ」
"良かった”と一人言のように小さく呟いた彼女の肩を引き寄せて髪にキスをする
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好きな人といると
自分が自分でなくなるような気持ちになる
これでいいの?と不安になる
でも、きっとそれがホントの自分
不安な気持ち=好きな気持ち
なのかな。
海沿いのcityhotel
彼は何も言わずにハンドルを切った
「急だったからこんなところでごめんね」
場所なんか何処でも良かった
周平くんと一緒にいれれば
この先どうなるか…
そんなことわかってた
自信なくて、戸惑ってる私の気持ちをすくい上げてくれるように周平くんは笑った
「美帆…無理しなくていいからね」
「む、無理なんかしてないもん」
「そっか」
口数が少なくなった彼
お互いシャワーを浴びて、ベッドに座ると
黙って肩を抱き寄せられた
「周平…くん、何か…言って…よ」
「美帆…俺だって緊張してるんだよ
大好きな人に触れてるんだから」
ぎゅーぅっと抱きしめられ
目を閉じると優しいキス
瞼を開くと周平くんの顔が真上にあって、
さっき微笑んだ顔とは違うドキっとする程の鋭く、男っぽい目
「俺のこと怖い?」
「うううん、怖く…ないよ」
ほんとはちょっぴり怖かったんだ
でも、少し背伸びしたかったの
心細くて手を伸ばすと
指を絡めて握ってくれる
その温もりに誘(いざな)われるように
私はあなたにすべてを委ねた
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