第8話

彼女の笑わない理由を聞いて、

俺はすぐに思ったんだ


悲しい思い出はきっと消えない

消せないなら

それに負けないぐらい

素敵な思い出を作ればいい



俺はそれから、次第に彼女と仲良くなり、

一緒に帰ったり、亜紀と3人で出掛けたりもした


笑顔は見ることはなかったけど

彼女の表情は柔らかくなってきていた



季節は2学期も終わり、あっという間に、卒業まで残り1ヶ月



俺は"石垣さん”ではなく、"美帆ちゃん”と呼ぶようになり

"美帆ちゃん”は"亜紀ちゃん”と呼び、

でも俺は相変わらず、"武田くん”





「ねぇ、美帆ちゃんは周平のこと好き?」


「好き……とかそんなんじゃ、

亜紀ちゃん好きなんでしょ?」


「え?何で?」


「わかるよ。

ちゃんと武田くんに言わないと本人はわかってないよ」


「うん、だよねぇ~」



私は昔を思い出してた

大切な2人の思いが通わなかったこと


もう、同じことを繰り返したくない

武田くんと亜紀ちゃん

2人ならきっと大丈夫



3月のまだ冷たい風に吹かれながら

胸の奥がチクリと痛かった


私は大丈夫


空に向かって、微笑んで見せた

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