第7話

辺りはすっかり暗くなってきた

住宅街の街灯が点り始め、会社帰りの人達が駅から家路を急ぎ、足早に歩く姿が増えてきた


俺はまだ公園のベンチにいた


帰ろうかと何度も思ったけど、やっぱりお姉さんに会って聞きたかった。

彼女のこと…。



「お姉さん!」


「武田くん?

どうしたのー!こんなところで」


「今日、石垣さんを送ってきて。

お姉さん今度、会ったらって言ってたから…」


「ずっと待ってたの?」


「はい」


「私が思ったとおりの人ね。

武田くん」


「へ?」


「うううん、いいの

ここじゃ、何だから駅前まで行こっか

お腹すいたでしょ?」




駅前の洋食屋さん

石垣さんも小さい頃からよく来ている店らしい



「美味しそうに食べるねぇ」


「そうですか?だって、ほんとに美味しいです」


「そう?良かったわ」



食事も終わりかけた頃

お姉さんが少しずつ話始めた



「美帆、中学の時はよく笑う明るい子だったのよ。

幼なじみがいてね、

美帆にとっては大切な友達だった

沙也加と伸二。

いつも3人一緒にいた。


けど…年頃になるとやっぱり意識し始めるもので、

美帆は鈍感だから何も感じてなかったけど

沙也加は伸二のことを好きになっていった


中学の卒業式、沙也加は勇気を出して、伸二に気持ちを打ち明けたの。

伸二の返事は……

"好きな人がいる。いつも隣で笑ってる美帆のことが好きなんだ”って。


っで、沙也加は美帆に言ったらしいの


"美帆は誰にでも優しいし、いっつも皆をその笑顔で救ってる

でも、美帆の笑顔で傷付く人もいるの

私がそうなの”

ってね」



「そんな…こと」



「私の笑顔が大切な友達を傷付けた。

ずっと一緒にいた大切な2人を一度に失った美帆は…笑わなくなったの


美帆は家族の前では今まで変わりなかったから私達は笑わなくなったこと気付かなかったの


しばらくして沙也加が私に会いに来たの

美帆にひどいことを言ってしまったって。

すべて話してくれた。

何てことを言うのって私は沙也加を責めようとした

…けどね、自分が悪かったと思ってくれてる人は傷付けた方もきっと心に大きな傷を負ってるんだと思う。

美帆は自分自身で乗り越えていかなきゃいけないんだって。


武田くん、ごめんね。こんな話

私が一方的に喋りすぎちゃったね」



「いえ、俺が聞きたかったんです」



「不思議ね、武田くんににここまで話すなんて自分でも驚いてる。

でも、あなたの真っ直ぐな目を見てると

話したくなったの

…美帆には内緒よ」



「わかってます

でも、俺は美帆ちゃんの笑顔が見たいんです」



「ありがとう。

力になってやってね」




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