第三十一話 あまずっぱすぎるだろ!? しかし、謎は全て解決した!? 系なッ!?

 授業終了のチャイムが鳴った。

 真っ先に教室を飛び出した私は、真っ直ぐに体育館に向かう。

 まだ秋なのに気温がそんなに下がらない。しかも、雨が降り湿度が上がっているので、その倍以上に蒸し暑く感じている。

 これだと、今日は防具をつけるとその倍以上に汗をかきそうだ。

 生徒達の賑やかな声が聞こえてくる。

 運動部の掛け声や下校途中の楽しそうな話し声が、わだかまって耳に入ってくる。

 その賑やかな喧騒な声を聴きながら、体育館に向かおうと校舎を出たところだった。

 雨脚が激しいので、傘を差して体育館に向かう。


「――!」

「――!」


 突然、その空気を断ち切るように、鋭い話声が勢い良く耳に滑り込んで来た。

 体育館の軒下の通路のところで、誰かが喧嘩している……のだろうか?


「えっ? 何事、系な?」


 何事だろうと、私は興味本位でその方向に歩いて行った。

 すると、秋風が顔面に吹き付けてきた。

 思わず閉じた目を開ける。


「何を考えているんだ、お前は!」

「あはは。何のことだよ」

「お前の稽古相手がそんなに大事かァ!」


 十メートルぐらい先に、喧嘩真っ最中の二人組が居た。

 怒鳴り合っていたが、何故か空気がガラリと変わった。


「いや、俺にはお前だけだよ」

「えっ!」


 最後には、抱擁を交わして仲直りしていた。


「なんだ、痴話喧嘩か。私の大事な時間を無駄にしてしまった、系な」


 私は嘆息して、そこを通り過ぎようとした。

 その場から立ち去ろうとしたが、耳に容赦なく声が滑り込んできた。


「好きだよ、レモン」


 あれは、どこかで聞いた声だ。

 衝撃を感じた私は、振り返って吃驚仰天した。

 そこには、シトラス先輩とレモン先輩の影が重なっている最中だった。


「系なッ!」


 私はあますっぱい気持ちになって、ぶわっと感情があふれ出るようだった。


「あれ? シットラン?」

「系なーッッッ!」

「シットラン!」


 私はそのまま、体育館の裏の方に走ろうとした。

 しかし、シトラス先輩に手を掴まれてしまった。

 私は、とっさに護身術で手を振りほどき、雨で顔をぐしょぐしょにしながら、体育館の中に入って行ったのだった。


「あれ? シットラン?」


 向こうの体育館のドアから入ってきたのは、シトラス先輩だった。


「シトラス先輩は、自分勝手、系なー!」

「えっ? 何言ってるの?」


 私は、目元をぬぐって、シトラス先輩に鋭い目を向けた。

 しかし、そこで私は違和感に気づいた。


「あれ? 系な?」


 私は刮目して、再びシトラス先輩を注視する。

 私は、衝撃を感じてシトラス先輩を見つめた。


「あ、あれ? シトラス先輩はいつの間に、系な?」

「は?」


 私は、再び衝撃を受けて、固まった。

 先ほどシトラス先輩が、制服姿で横を通り過ぎたので変だと思っていたのだ。


「そ、そうか、系な!」


 息を吸い込んだ瞬間、頭の中のパズルのピースが全て繋がったのだった。

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