第三十話 あまずっぱい日! 系なァ!!
翌朝のことだ。私は、朝から快調だった。シトラス先輩のことなど、もはやどうでも良くなって、今日はさっさとレモン先輩と剣道して、クエン酸先輩のお兄さんに千連勝した竹刀を返そうと思っていた。竹刀を返した時点で、私とシトラス先輩との因縁は無くなる。
玄関のドアを開けると、小雨が降っていた。
私は可愛い傘を差して、アカデミーまでの道を歩いて行く。
確かに、傘は持参して正解だった。
途中から、小雨ではなくなっていた。
私はアカデミーの方に走って行く学生を横目に、マイペースで通学路を歩いていた。
その水の跳ねる慌ただし気な複数の足音の中で、落ち着いた足音が私の後ろで止まった。
「やあ、シットラン?」
「系な!?」
私は、ゆっくりと振り返る。
そこには、シトラス先輩が傘を差して居た。
「あはは。シットラン、昨日はレモンの剣道をすっぽかすと思わなかったよ」
「なんとなく、ムカついたから、系な?」
「何がムカついたのかな、シットラン」
「……」
「言っておくけど、俺のことはレモンが好きだから。レモンが大好きだから、諦めてね」
「……」
「今日のレモン相手の剣道にはちゃんと参加してね。じゃあね」
「……」
シトラス先輩は、笑いながら去って行った。
「系なァ!!」
私は、あの時のレモン先輩のように無敵化していた。
今なら、レモン先輩に勝てる気がする。
私はシトラス先輩を追い越し、百メートルを十秒で走り、教室の自分の席にフワッと着席した。
今日の私は向かうところ敵なしで、グレープフルーツ先生もクラスメイトもナツカンとヤマトタチバナも、目を丸くしていた。
嫌いなみじん切りの野菜を素早く全部取り除いた超絶最強系の私は、現在お弁当を美味しく頂いているところだ。
「美味い、系な! 美味い、系な! 美味い、系な!」
一人で昼食を食べていると、ナツカンとヤマトタチバナがやってきて、顔にたらりと汗を流していた。
「シットラン! お前、今日、迫力が違わないか?」
「今日はレモン先輩に勝てそうな気がする、系な!」
「おお! 今日は勝てるぞ!」
「おお、必ず、勝てるぞ!」
「系な!」
私はナツカンとヤマトタチバナに勇気を貰い、放課後の剣道に挑んだのだった。
しかし、私があまずっぱくなったのは、その放課後になる少し前の出来事になる。
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