第二十七話 周り巡ってペンダント!? お、オイ……!

 シトラス先輩のことは、もう触れないでおくことにした。シトラス先輩の悩みは、レモン先輩の痴話喧嘩だったし、これは当人同士に任せておく方が良いだろう。

 私にペンダントをくれたのは、何かの間違いだったのか。


「あれ? どうして私にペンダントをシトラス先輩がくれた、系な?」


 突然、レモン先輩が激怒している顔が思い起こされた。レモン先輩は、私のペンダントを見て激怒していた。


『そのペンダントをどこで手に入れた?』

『えっ? 貰いました、系な?』

『誰から?』

『とある先輩からかもしれません、系な!』

『やっぱりアイツか! アイツ!! 許さん!! 許さーん!!』


 レモン先輩は、シトラス先輩のことで激怒して去って行った。

 その時、私の中でパズルのピースが足らないことに気づいた。

 私は、「系な?」と、瞬きした。


「あ、あれ? おかしい、系な! アイツってシトラス先輩のこと、系な?」


 霧掛かった頭の中の考えが鮮明になっていく。

 私は、再び目を瞬いた。


「レモン先輩は、どうして私のペンダントを見て、シトラス先輩のことを激怒していた、系な?」


 私は、とんでもないことに気づいて、「アッ!」と顔を上げた。


「ま、まさか! あのペンダントって、レモン先輩がシトラス先輩にプレゼントしていたものでは!? あー!」


 私は、自分の口調に構っている場合ではなくなっていた。


「ちょっと待て、オイ! も、もしかして、シトラス先輩がレモン先輩にあげたペンダントを無断で私にくれたのか! オイ!」


 私は、ひとりで突っ込みを繰り返していた。

 すれ違う学生は奇妙な目で私を見て、何も突っ込まずに去って行った。

 再び、レモン先輩の激怒する顔が思い起こされた。


「怒って当たり前だ、オイ。シトラス先輩ひどいな、オイ」


 私の口調が『系な』ではなく、『オイ』になっていることに気づいて、私はハッと我に返った。

 丁度その時、前方から私の方にレモン先輩が歩いてきた。

 噂をすればなんとやらだ。

 私は、一人突っ込みしていた手をさりげなく元に戻して、お辞儀した。


「レモン先輩、こんにちはー、系なー!」

「ああ、シットランか! 朗報だ、喜べ!」

「系な?」

「私のペンダントが戻ってきた!」

「エッ!」


 私は、その場で固まってしまった。

 レモン先輩のペンダントに唖然だ。

 これは、どう見てもシトラス先輩が私にくれた、私がシトラス先輩に戻した、ペンダントだ。

 瞠目して固まっている私に、レモン先輩は笑いながら去って行った。


「お、オイ! ペンダント戻るの早い、お、オイ……!」


 素早くレモン先輩に返還されたペンダントに再び突っ込むのだった。

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