第二十六話 激怒したシトラス先輩に汗がたらり、系な!
朝の気配が鳥の鳴き声と一緒に訪れた。
私は、ベッドの中でうっすらと目を開いた。
心地よい目覚めだったが、何故かスッキリしない。
とんでもない物を夢の中で見たような気がする。
ベッドの上で上体を起こすと、首から何かがぶら下がって揺れた。
貰ったとき嬉しかったので、ずっと身につけていたシトラス先輩から貰ったペンダントだった。
勝手気ままに揺れるペンダントトップを、抑えるように手に持った。
うつろな目をして、ペンダントトップを見下ろす。
「もしかして、目覚めがスッキリしないのは、このペンダントのせいなのか、系な?」
もしかして、夢の中でレモン先輩とシトラス先輩のラブシーンを見てしまったのでは?
何故、私は悩まされているのだろう。
クエン酸先輩とシトラス先輩は、未知数過ぎる。
私は頭をかきむしった。
「良く分かった、系なッ! このペンダントにノシを付けて返してやる、系なーッ!」
私は、ペンダントを首から外した。
「ノシだ! ノシを付けるにしてもノシがない! 系な!」
私は、姉からノシ袋を貰って、その中にペンダントを入れた。
「……」
私は、首を傾げた。何かが違うような気がする。
「系な?」
「それは、結婚式のノシ袋よ!」
「……」
何かが違う気がする。
私は、そっとノシ袋からペンダントを取り出して、姉にノシ袋を返した。
そのまま、制服のポケットに突っ込んだ。
「これで良し、系な!」
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「あれ? シットラン?」
登校途中に、後ろから声がかかった。
声をかけてきたのは、シトラス先輩だった。
「どうしたの? シットラン?」
私に駆け寄ってきたシトラス先輩は、今日は機嫌良く微笑んでいる。
要するに、レモン先輩と喧嘩していたけどよりが戻ったので、機嫌が良くなったのだろう。
「シトラス先輩は何を考えているんですか、系な!」
「えっ?」
シトラス先輩は、私が何を言いたいのか見当が付かないらしく、目を瞬いている。
「クエン酸先輩が妙におちょくってくると思ったら、シトラス先輩の仕業だったんじゃないですか! 系な?」
「はい?」
クエン酸先輩から貰った手紙の内容は黙っていようと思っていたが、もはや見て見ぬ振りする必要はなくなった。
何故なら――。
「今回の手紙の内容はシトラス先輩直筆だった、系な!」
「えっ? シットラン、何を言ってるの?」
「よく考えれば、今までの筆跡と同じなので、それは全部シトラスの先輩直筆ということになる、系な!」
それはつまり、シトラス先輩が仕組んだことだったので、シトラス先輩に隠す必要はなくなったということだ。
「シトラス先輩とレモン先輩が付き合っているならそう言えば良いじゃないですか、系な?」
「えっ?」
「とどのつまり、シトラス先輩が悩んでいることは、付き合っているレモン先輩の事だったんじゃないですか! 私は、シトラス先輩が何をしたいのか、何を言いたいのかわかりません、系な!」
「違うよ?」
「……系な?」
「俺が悩んでいるのは、確かにレモン先輩のことだけど……?」
「やっぱりそうでしょ、系な?」
「うーん、シットランが何を言いたいのかが、俺もわからない――」
「えっ?」
どういうことだろう。何故か、会話と会話がかみ合っていない気がする。
シトラス先輩は困惑したように頭を掻いていたが、何かに思い当たったように、
「あっ! まさか!」と、声を上げた。
私は、シトラス先輩の台詞が先に読めた気がして、得心して頷いた。
「要するに、私にレモン先輩との仲を取り持って欲しいと言いたかったんですか? 系な?」
「いや、違うよ? 自分で決着を付けるから、しばらく放って置いてくれないか?」
「あの、ペンダントを返します、系な!」
「……ッ!?」
クエン酸先輩の封筒に入っているペンダントをポケットから取り出した私は、シトラス先輩に手渡した。
何故か、シトラス先輩は私に激怒して、反対方向に戻って行った。
「あー、余計な詮索をしてしまったようだ、系なー……!」
私は、激怒したシトラス先輩をどうすることもできず、その後ろ姿に視線を注いでいた。
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