第二十五話 レモン先輩とシトラス先輩に――ぎゃふん!?

 自宅のドアを開けた私は、速攻で二階に駆け上がった。

 自分の部屋に鍵をかける。


「どういうことですか、系な!」


 リュックを横に下ろして、勉強机の椅子に座る。

 私は手に持っていたクエン酸先輩自作のキャラクターの封筒を、勉強机の上に置いた。


「どう考えてもレモン先輩とシトラス先輩は怪しい関係じゃないですか、系な?」


 ジッと封筒を見つめ続ける。


「もう、答えは出ているような気がしますが、この封筒を見て納得するべきでしょうか、系な!」


 しかし、その関係をこれで立証してほしいような、して欲しくないような。 そっと、ゴミ箱に封筒を捨てようとした手から、何故か封筒が放せない。


「やっぱり、捨てるに捨てれない、系な。これで納得して、見なかったことにしよう、系な!」


 偽善者の私は、無理矢理自分の好奇心を納得させた。


「クエン酸先輩――恩に着る、系な!」


 アカデミーで買ったジュースをリュックの中から取り出した。


「ジュース用意、系な!」


 ハサミで封筒の封を開ける。


「何が書かれているかな? 何が書かれているかな? 敬・な・!」


 私は、封筒の中を覗いた。


「便箋が三つ折りになっている、系な! それから、何か分厚い紙が入っている、系な!」


 封筒の中に指を伸ばして、それをそっと取り出した。


「便箋には何か書いてある、系な? もう一つは写真、系な? なっ! ぐはぁ!?」


 私は、またしても衝撃を受けた。

 鮮やかな写真には、レモン先輩とシトラス先輩が写っていた。

 それだけじゃない。


「レモン先輩とシトラス先輩が抱きしめ合っている、系な!?」


 写真はラブシーンではなかったが、制服姿の二人が抱きしめ合っていた。

 格闘をしているわけではない、これはまさしく――!?


「ど、どうなっているんだ、これは! なんの激写だこれは!」


 私は私の口調をすっかり忘れたまま、写真を持って震えていた。

 その時、視界の端に焦点が当たる。

 勉強机に置かれた三つ折りにした便箋が目に留まった。


「これに、一体何が……!」


 私は、震える手で便箋の三つ折りを開く。


「何々? 『この二人は、付き合っている! 付き合っているのは、コンビニ等ではなく、交際しているということだ! とどのつまり、恋人同士だ! 参ったか! Byシトラス』ぐ、ぐはぁ!? やられた……!」


 私は衝撃を受けすぎて、勉強机に突っ伏した。


「ま、参りました……! しかも、『Byシトラス』って……! シトラス先輩直筆の手紙じゃないか……!」


 私は、もはや自分の口調などどうでも良くなっていた。

 確かに、私のお気に入りの口調だが。

 いや、あの口調は可愛い。再びあの口調を使うべきだ。


 私は、神妙に頷いてから、便箋を封筒の中に戻した。

 レースのカーテンを開ける。

 私は窓から太陽を眺めながら、ジュースを手に取った。

 キャップを開けて、ゴクゴクとジュースを傾ける。

 要らんことを知ってしまった。


「つまり、あれは、レモン先輩とシトラス先輩の痴話喧嘩だったというわけですか、系な……!」


 それどころか、余計なことにも気づいてしまった。

 『By シトラス』と最後に書かれてある。

 しかも、今までの手紙は

 ということは――。


「私、シトラス先輩の事情が分かってしまいました、系なー……!」

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