第二十三話 ポンス先輩とシトラス先輩の真相は! 覇じゃなくて、系な!

「始め!」


 審判が開始の合図をかけると、すぐさまポンス先輩が床を蹴った。


「面!」

「っ!?」

「胴ッ!」


 ポンス先輩の太刀さばきは、全く予想ができない。上段の構えから、下段の構えになった。しかし、そのまま竹刀しないの先を横に寝かせて、胴を狙って来た。


「くっ!」


 私は、竹刀しないを下げてポンス先輩の右胴狙いの攻めを弾き返す。竹刀しないが子気味の良い音を立てて、勢いが相殺される。ポンス先輩の考えが全く読めない。

 このままでは、確実に負け――、系な!?

 ポンス先輩が、竹刀しないを打ち込んでくる。そのまま、つばぜり合いになった。竹刀しないが弾かれて、バランスが崩れる。


「っ! 系な!?」


 顔を上げるとポンス先輩の姿が消えていた。

 私は、かすかな気配を背後で感じた。


「くっ! 後ろ! 系な!」

「面! 覇!」

「系な!」


 私は、振り向きざまにポンス先輩からの上段からの攻めを避ける。

 竹刀しないを横に振って、右胴を狙う。


「胴ーッ! 系なーッ!」

「覇!?」


 私は、斜めに駆け抜けて行った。


「胴!」


 審判からの旗が、私の方に上がった。


「やった、系な!」


 ポンス先輩は、小手を両手から外した。そして、先輩は顔から面を取った。私は呼吸が荒くなっていたのに、先輩は息一つ切らしていない。面を抱えてポンス先輩は、無表情でこちらをじっと見ている。


「……?」

「……」


 私は、汗がたらりとなった。

 ポンス先輩は、無表情でこちらをじっと見ている。


「……!?」

「……」


 私は、汗がたらりたらりとなった。ポンス先輩は、自分の懐に手を突っ込んでから何かを取り出した。それは、一つの封筒だった。


「えっ? これは、クエン酸先輩の?」


 クエン酸先輩を振り返る。

 すると、クエン酸先輩は微笑んでいた。


「そうだよ。ポンスと僕は知り合いだからね」

「じゃあ、私は自宅に帰って読みます覇――じゃなかった、系な!」


 私は、ポンス先輩に貰った封筒を懐に仕舞う。

 ふと、私はある事を思い出した。


「そういえば、ポンス先輩とシトラス先輩は知り合いなんですか、系な?」

「違います、覇! クラスが違います、覇!」

「やっぱり違うんですか覇、じゃなくて、系な……」


 クエン酸先輩は、確かにシトラス先輩とポンス先輩が付き合っていると書いてあった。

 ポンス先輩とシトラス先輩の写真の証拠はどうだろう?

 やはり、あの写真も、ポンス先輩とシトラス先輩が楽しく喋っている姿を激写したもので、付き合っているとは断言できない。


「やっぱり、シトラス先輩とポンス先輩は付き合っていないんですか? 系な?」

「そうです、覇! 付き合っていません、覇!」

「そうだね! 僕の早とちりだったようだよ! ゴメンね!」

「な、なんだ、系な!」


 謎は一つ解くことができた。

 シトラス先輩とポンス先輩は付き合っていなかった。

 でも、あの写真は?

 話したことを忘れているだけだろうか?

 写真は自宅に置いてきたので、確かめることができなかった。


「ポンス先輩、ありがとうございました、系な」

「シットラン!」


 更衣室に戻ろうとした私に、ポンス先輩が呼び止めた。


「ジュースを飲んでホッとする、覇!」


 ポンス先輩は、懐からジュースを取り出した。

 例のポンス先輩お気に入りのジュースだ。


「ポンス先輩、優しい覇――じゃなくって! 優しい、系な!」

「どうぞ、覇!」

「ありがとうございます!」


 後で、冷蔵庫で冷やして飲もうと思った。

 私は、苦笑して一礼すると、更衣室に戻って行った。

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