第二十一話 レモン先輩とシトラス先輩の舌戦! 系な?

 翌日から、また私は剣道で連勝を繰り返して行った。

 シトラス先輩を見かけたが、またしても私と目が合った途端にスッと目をそらされた。

 私の頬から汗がたらりとなった。


「どうした? シットラン?」


 立ち止まっている私に、ナツカンが声をかけてきた。


「これは、放っておいても大丈夫と言うことですか、系な? 私に余計なお節介はするなと言うことですか、系な?」


 ナツカンとヤマトタチバナには、言っている意味がよく伝わってないらしい。

 顔を見合わせて、首を傾げていた。


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 その日の放課後のことだ。

 いつものように、剣道をしに体育館の扉を開けようとした時だった。

 体育館の裏から話し声が聞こえてきた。

 何の話し声だろう。

 なにやら、争っているような口調がぼんやりと聞こえる。

 何事だろうと思ったが、どうやら声のトーンが違うようだ。

 アルトの声とメゾソプラノの声が飛び交っている。


「なんだ? 系な?」


 私はそっと体育館の裏に足を忍ばせた。

 体育館の影から、そっと顔を出す。


「ふごッ!」


 衝撃で変な声が出てしまった私は、慌てて体育館の影に顔を引っ込めた。


「なんだ? 今の変な声?」


 アルトの声の主は、他でもないシトラス先輩だった。

 もう一人は、チッと舌打ちした。


「ああッ? お前の稽古相手がいるんじゃないのか! お前の稽古相手がなァ!」


 メゾソプラノの声は、あのレモン先輩だった。

 相変わらず、怖そうなレモン先輩だ。

 でも、何故シトラス先輩の剣道の稽古相手が居たら駄目なのかが分からない。

 頭に疑問符を浮かべていると、シトラス先輩はため息をついた。


「お前うぜーよ? もう、俺は行くからな?」


 私は、そっと体育館の影から顔を出した。

 シトラス先輩は、手を振って反対側の体育館の方に去って行こうとしている所だった。


「おい! シトラス!」


 大声で呼び止めたのは、レモン先輩だった。

 うっとうしそうに振り返っている。


「あ? なんだよ?」


 レモン先輩は、不敵に笑った。


「お前は、私から逃げられない!」

「えっ?」

「絶対に、私から逃げられないからなッ!」

「……」

「……」


 二人は、無言でうつろな目で見つめ合っている。

 隙を見つけたシトラス先輩は、猛スピードで逃げた。


「私からは逃げられん!」


 それを、レモン先輩が無敵化して追いかけて行った。


「エッ! 居ない、系な! 速ッ!」


 私が体育館の裏にやってくると、二人の姿はどこにもなくなっていた。


「系な?」


 私は、ポカーンだった。


「系な?」


 私は、首を傾げた。

 シトラス先輩は、レモン先輩のせいでくるしんでいると、クエン酸先輩の手紙に書いてあったが、何かが違うような気がするのは気のせいだろうか。

 私は、違和感を覚えて首を傾げた。

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