第十七話 事の真相は闇に葬られた!? 系なァ~♪

 そして、夏休みが終わり、新学期が始まった。

 新学期も早々に、私は剣道で四百五十連勝を収めた。


「負けました!」

「四百五十連勝になりました、系な!」


 ガッツポーズした私は、体育館から出て行った。


「このペンダントのお陰でやる気倍増、系なー!」


 私は、首から提げていたペンダントを剣道着の上に垂らした。シトラス先輩から条件付きでもらったペンダントだ。私は、こっそりと制服や剣道着の下にペンダントを隠して付けている。私は、このペンダントの力だと勝手に思って、ホクホク顔になっていた。


「シットラン~」

「あ、ナツカンとヤマトタチバナ~、系な~!」


 ペンダントを制服と剣道着の下に戻して、ナツカンとヤマトタチバナの方を振り返った。

 視線を感じたナツカンはそちらを振り返った。私の方を見ている学生たちだった。


「最近、シットランは、すごいな~。ちょっとした有名人だぜ~」

「なんとか、がんばってます、系な」

「でも、最近シトラス先輩のことを聞かないけど、あれはどうしたんだ?」

「うん、シトラス先輩を詮索することは、もう止めました、系な」


 シトラス先輩が詮索するなと忠告してきたからではあるが、もはや私の気は済んでいた。


「はぁ、なんで?」


 ヤマトタチバナが不思議そうに聞いている。

 しかし、私は笑ってごまかした。

 シトラス先輩が、ポンス先輩と一緒にいるところを見かけない事がまず第一だ。

 クエン酸先輩があれこれ言ったことは、嘘かもしれない。

 クエン酸先輩の手紙は、嘘だとしても写真は――と思ったが、それも嘘かもしれない。

 クエン酸先輩なら、写真をどうこうすることも可能だと思ったからだ。

 ポンス先輩は、相変わらず向かうところ敵なしのようだ。

 優しいポンス先輩なので、たまにジュースをくれたりする。

 それでもやはり、シトラス先輩とポンス先輩が一緒にいるところは全く見かけない。


「やっぱり、シトラス先輩とポンス先輩が付き合っているというのは、デマかもしれません、系な」

「デマ?」と、ナツカンが眉をひそめた。


「シトラス先輩とポンス先輩が一緒にいるところを見かけないし、系な」

「まあ、確かに俺も見かけないぜ」

「俺も見かけないな~!」


 ヤマトタチバナにナツカンも同意していた。


 ポンス先輩とシトラス先輩は赤の他人。

 結局は、この結論に落ち着いていた。


「シトラス先輩もきっと元気になっていると思います、系な」

「真相を追求しなくていいのかよ?」


 そんなことを想いながら、制服の下からペンダントを取り出して眺める。


「あ、なるほど、物欲で解決したと」

「あ、なるほど、うまくごまかされたと」

「そんな感じです! 系な~!」


 ペンダントにほおずりする私に、ナツカンとヤマトタチバナは、引きつった顔で笑っていた。

 結局はペンダントの力で、私の心は納得したというわけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る