第十五話 完全な証拠!? あのひとは嘘をついていた!? 系な!
一年Ⅰ組に戻りながら、手持ちぶさたに、封筒を翳したり、振ったり、ぐにゃりと曲げたりしていた。
何故か、いつもの便箋よりしっかりとしている。分厚い感じがする。
厚紙のような物が入っているのだろうか。
そうしてみても、中身がどうなのかまでは分からない。
通りすがりの私なのに、シトラス先輩の悩みに関わっていいのか。
正直なところ、面倒事には関わりたくない。
「そうだ! 照明で透かす、系な!」
LEDの光に中身を透かして見る。
しかし――。私は眉を寄せた。
「キャラクターの絵がカラフルで、中身が全然見えない、系な……!」
楽し気な話し声が聞こえてきて、封筒を持った手を下ろす。
辺りを窺うと、学生たちが廊下を行きかっている。
一応開封して、ヤバかったら見なかったことにしよう。
「校内は、学生だらけだ。トイレの個室で見ようか、系な」
しかし、と考える。
「内容が衝撃的だった場合、その後の授業を平常心で受けることができるだろうか、系な」
しばらく考えて、ハッと我に返る。
「否! 動揺しすぎてその後の授業でヘマをしてしまうに違いない! 系な!」
下手をすれば、グレープフルーツ先生に補習しろと言われるだろう。そうなってくると、時間を大幅に空費してしまう。そうなってしまえば、私はグレープフルーツ先生のお茶目な補習を受けながら、この封筒の好奇心に耐え抜かなければならない。
私は、頷く。
「よし! 自宅で読もう! 系な!」
私は、スカートのポケットに封筒を仕舞った。
「自宅で封筒の中身を確認しよう、系な~! ヤバかったら見なかったことにすれば良いし、系な~!」
クエン酸先輩が言っていたことは真実なのか。シトラス先輩のことが書かれてあるのか。
「ハッハッハ、楽しみになってきました、系な~!」
そして、私はその後のグレープフルーツ先生の授業を楽しく受けて、下校になった。
好きなジュースを自動販売機で買い求める。
「自宅で封筒の中身を確認しながら、まったりと飲む、系な!」
そして、私は帰宅の途に就いた。
はやる心を押さえながら、超特急の速さで安全に自宅にたどり着いた。
あんなに早く走ったのに、剣道の三百連勝のお陰か、息一つ切れることがない。
「ジュース用意、系な!」
自宅の二階に急ぎ、私はジュースをチャッと取り出す。
ジュースはまだ冷えていて、飲み頃だ。
「ハッハッハ! 系な~!」
そして、椅子の背にもたれる。
「封筒を用意、系な!」
そして、懐から封筒を取り出した。
封筒の口を、ワクワクしながら開ける。
「何が書かれているかな~何が書かれているかな~、系な~」
中身を取り出すと、便箋ではなかった。
「これは、写真? ガハッ!? 系な!?」
その中に写っていたのは、シトラス先輩と楽しく話しているポンス先輩の姿が写っていた。
衝撃を受けて、暫し私は呆然となった。
「シトラス先輩はポンス先輩とは面識がないと言っていたのに、嘘だったんですか、系な!?」
私は、首をかしげる。
「じゃあ、クエン酸先輩の手紙の方が真実だったということ? 系な?」
私は、こっそりとクエン酸先輩に謝った。
「……。でも、そんなにショックなことでもない気がします、系な! ポンス先輩とは楽しく話しているだけだし、系な! 通りすがりか何かだったのかもしれません、系な! シトラス先輩は私にポンス先輩のことを秘密にしたかったんですか? 系な?」
机の上に置いていた、ジュースを一気飲みする。
「ハッハッハ! 美味しかった、系な! 生き返った、系な!」
今までになく、おいしいジュースだった。
じゃあ、ポンス先輩のことが原因ではなかった場合、シトラス先輩の悩みは一体何なのだろう。
「私がどうやって、シトラス先輩の悩みを探り当てるかだ、系な! そして、どうやってシトラス先輩の悩みを、バレずに解決するかだ、系な!」
『シットラン? 助けてくれてありがとう?』
未来のシトラス先輩の笑顔が見えた気がした。
でも、解決したら心地よい気分になることだろう。
「ハッハッハ! ハッハッハ! やってやる、系な!」
窓から夕陽を眺める。
今日の太陽は、やけに綺麗な日の光だった。
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