第九話 稽古相手VS私! クエン酸先輩の企み! 系な!

「始め!」


 審判が開始の合図を告げる。相手はすぐに踏み込んで来たが、私もすぐに応戦する。直ぐにつばぜり合いになるが、竹刀しないを払ってきたので、後ろに飛びのいた。

 そこから、一気に踏み込んでいく。私の素足で踏み込む音が体育館に響いた。


「面ーッ! 系な!」

「甘い!」


 相手が、私の上段からの攻めを竹刀しないで受け止めようとした。しかし、私はそこでフェイントをかける。


「と、見せかけて、系な」

「何ィ!」


 しかし、私は直ぐに体制を低くして一気に踏み込んだ。


「からの、胴ーッ! 系なーッ!」


 竹刀の爽快な音が、明瞭に響き渡る。攻める間もなかったのか、相手の息を呑む音が聞こえた。


「胴!」


 審判が私の方に旗を上げた。彼は、がくりと膝をついた。

 稽古相手との剣道は、ものの数秒で片が付いた。


「ま、負けました……! 流石ですね!」


 稽古相手は、一礼して去って行った。


「よし! 勝った、系な! 勝ちました、クエン酸先輩、系な!」


 私は、クエン酸先輩を振り返った。

 すると、クエン酸先輩は、面白そうにこちらを見ていた。


「あの? 系な?」


 クエン酸先輩は、一通り私を観察すると、こちらに歩いてきた。


「流石だね、シットラン」

「また、シトラスの事を書いておいたから、読んで?」

「系な!? またですか!?」

「シトラスの悩みは解決したらしいからね」


 私は、例の封筒を手渡された。

 それを見て、私は瞬きした。

 見覚えのあるアニメのキャラクターの封筒だ。宛名とあて先はない。

 これは、以前クエン酸先輩が私に手渡した物と同一の封筒だ。

 私は再び顔を上げた。


 シトラス先輩には関わらないでおこうと思ったのに、どうしてこうなってしまうのか。

 この封筒を見ないで捨ててしまうのも良い。

 でも、読んでくれと言っているのだから、このまま捨てるのも考えものだ。

 手の中の封筒を見つめながら、私はその場から立ち去った。



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