第六話 私のビフォアーアフター! 系な!?

 私は剣道の格好に着替えて、体育館のドアを開けた。

 すると、私の方に駆けてくる足音がした。

 こちらに向かってくるのは裸足の足音だ。

 ペタペタという足音が気になって、私は横に視線を走らせた。


「シットラン! 俺と剣道しようぜ!」

「系な?」


 防具を身に着けている誰かが手を振りながら、私に声を掛けてきた。

 今から特訓しようと思っていた所だが、剣道の稽古相手になってくれるなら大歓迎だ。


「勝負してくれるんですか、系な?」

「おお、かかって来いよ!」


 稽古相手は、竹刀しないを構える。

 すぐに私も竹刀しないを構える。


「始め!」


 審判が開始の合図をかけた。

 相手の竹刀しないと自分の竹刀しないの先の方が、隙を見つけようとして震える。何時、相手の懐に入り込むか、間合いを図っている。


「……!」


 相手が私の方に踏み込んで来ようとした。相手の、面金より竹刀しないが上がる。私はそのすきを見て、相手の方に踏み込んだ。斜め横にすれ違いざまに竹刀しないを横に振るった。


「胴ーッ! 系な!」


 私は、相手の胴を打っていた。

 軽快な竹刀しないの音が、体育館に響き渡る。


「胴!」


 審判の旗が私の方にサッと上がる。相手は放心していたが、息をはきだす音と共に後ろに下がって一礼した。


「ま、負けました……!」

「す、すごい、系な!」


 私は、持っている竹刀しないを見つめた。羽が生えたように、竹刀しないは軽かった。そして、思う方向に素早く、思い通りに竹刀しないが動く。クエン酸先輩のお兄さんの最高傑作は伊達ではないようだ。稽古相手は、一礼をして去って行った。


「本当に、この竹刀しないはすごい、系な! でも、私の実力じゃないような、系な?」

「そんなことはないよ!」


 突然すぐ横で声がしたので、私は驚いてそこから飛び退いた。

 横隣を確認すると、クエン酸先輩が朗らかに笑っていた。


「クエン酸先輩!? 気配を消して真後ろに立たないでください、系な!」

竹刀しないは力を貸してくれるだけ、勝ったのはシットランの実力だよ!」


 誰かと思えば、気配をすっかり消し去ったクエン酸先輩だった。

 それから、私の日常は一変した。


「シットラン! 俺と剣道しようぜ!」

「シットラン! 私と剣道しよ!」


 と、私は剣道を挑み続けられた。私は、お兄さんの最高傑作の竹刀しないで連勝を繰り返した。そうして、それからは勝ちっぱなしになった。ついに、気がついた時、私は百連勝していた。


「私は、超絶最強系な!」


 私は、みんなの声援を聞きながら手を振っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る