第三話 掴み所の無いポンス先輩、系な!

 グレープフルーツ先生は、元気良く手を上げた私に気づいて、にっこりと笑った。


「元気が良いな、シットラン! よし! じゃあ、最初の実演はシットランVSポンスで行う!」

「やった! 系な!」

「じゃあ、シットラン! 前に出て!」


 私は、心を躍らせながらみんなの前に出た。


「ポンス先輩、よろしくお願いします、系な!」

「……」


 ポンス先輩は、じっと私を見ている。やけにまじまじと見ているので、私もじっと見つめ返した。じっと見つめられたので、私もじっと見つめ返した。私の頬に汗がたらりとなるようだった。


「……」

「……」


 見つめあっている私たちに気づいたグレープフルーツ先生が、汗をたらりと流している。グレープフルーツ先生は、ポンス先輩は掴み所が無いと思ったのだろう。私もそう思っていた。私は、汗をたらりと流す。私は、グレープフルーツ先生に目で訴えかける。すると、グレープフルーツ先生はハッと我に返っていた。


「では、実演を行う!」と、グレープフルーツ先生は無理やり授業を進めた。


 私とポンス先輩は一礼して、三歩前へ出てそんきょした。

 そして、構える。


「始め!」


 ポンス先輩を見やる。

 ポンス先輩の姿勢が明らかに違う。

 ポンス先輩の気迫が伝わってくる。


「格好良い、系な……!」


 ポンス先輩の手前にちらつく影に、私はハッと我に返った。

 視界にちらついていた影は、竹刀しないだった。

 竹刀しないが、何故か折れ曲がっていた。

 私は、この竹刀を二度見してしまった。


「なんじゃあ、これ、系なぁ!?」


 何処かでさっきぶつけたらしい。

 今見て、びっくりした。


「シットラン! 十円だからだよ!」

「そうそう! 十円だからだよ!」


 ナツカンとヤマトタチバナの声に私は、格好良く振り返る。

 私の目が泳いで、ナツカンとヤマトタチバナの方に向く。


「やっぱり、お値段なりでしょうか、系な~……!」

『そうだよ、絶対!』クラスメイトたちは力強く同調した。


「私は、意欲が上がってる覇! 意欲が上がり過ぎな覇!」

「……!?」


 ポンス先輩のやる気は計り知れない。


「行くぞ! 覇ッ!」


 クラスメイトたちは、「きゃあああああああああああああああ!」と黄色い声を上げた。


「えっ? 系な?」




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