入学試験②

……入学式から2日が経った。どうやら状況は良くないらしい。あれから五十嵐君がいろんな指示を出したものの、この体育館を出られる手段は見つかっていなかった。

他の生徒も少しずつ疲労が溜まってきている様にも見える。

しかし、気になる事はもう1つある。それは生徒が20人程度減っているということだ。ようするに脱出した人がいるということだ。

ほとんどの人は気づいていないようだけど。


「五十嵐君本当に出られるのー?」

「もう2日も経っているけど出れそうにないじゃないか」

「本当にお前が仕切って大丈夫なのかよ」

「少し信じれなくなってきたよ」


やっぱりかなり、精神的にダメージがきているようだ。……仕方がないか。


「……す、すまない俺の力不足で、けど、まだ時間はあるんだ。それまで皆で頑張ろう!」


「そんなこと言うけどどうやって出るの?」


「……それは、ん? こんな所に紙が落ちている。こんな物あったかな? ……えっこれは学校案内の地図? どうしてこんなものが、……いや、これってまさか」


「どうしたの五十嵐君何かあったの?」


「皆舞台裏にある大きな鉄壁がある場所があったはずだ。そこが出口のはずだ」


「こんなでけえ鉄の塊人の力で動かねえだろ」


「いや、多分簡単に動くはずだ。俺がやろう。……いくよ」


「……空いた」「空いたよ!」「出られる!」「ヤッター!」


「あれでもここは外じゃないの?」「ここは校舎の中?」


「あぁ、そうだ。この学校の体育館は校舎と繋がっているんだ。けど、誰もあの鉄壁は人では動かせないと思っていたから抜け出せなかったんだ」


「そうなんだ」「でもこれで皆出れるよね」「入学できるぞ!」


「いや、まだ終わっていないわ」


「えっ? 君は誰かな? 終わってないってどういうことだ?」


「そのままの意味よ。ねぇ、そうでしょ佐藤優樹」


…………。


「……そうだね。まだ終わっていないかな」


「佐藤優樹君? 説明してくれると助かるんだが」


「あの時生徒会長の説明を覚えているかな? あの時会長は学校の校舎から出ろと言ったんだよ。あそこは体育館だったのにあえて校舎に出ろと言った。つまり体育館は校舎を出るための1つの通過点なんだ」


「つまりここからが本番ということなのか?」


「そういうことになるね」


「ま、待ってくれ。なら俺たちはたかが通過点に2日もかかったってことか」


「……そんな」「もう無理だよ」「なんなんだよ! クソっ!」


──確かに状況は変わっていないな。

しかし、それよりも気になる事の方がある。


「……ちょっといいかな」




校舎の端っこの方まで二人で来た。薄暗いし男女二人でこんな所いるのがバレたら変な誤解をされそうだ。


「それで話したいことって何かしら」


体育館で話してきた女子生徒を僕は呼び出した。名前を知らないから今はそう表現する他ないのだ。


「どうして僕の名前を知っているの? 君は一体何者なんだ」


僕はこの人に名乗った覚えもないし前に会ったことも無いはずだ。


「なら先に私の質問に答えて貰えるかしら。あの時の学校案内の紙はあなたが置いて行ったのよね? 途中からあなたの姿も見えなかったし先に校舎の中に入っていたのよね?」


──この人に虚偽は通じないかな。


「……そうだよ。僕が紙を置いていったよ。そして校舎の中に先に入ったのも正解だよ。けど、それがどうかしたの? 君には関係のないことだよ」


「……どうして傍観者みたいなことをしているのあなたならこのゲームもすぐにクリア出来るはずでしょ」


「君は僕の正体を知っているんだね。まさか僕のことを知っている人がいるとは思いもしなかったよ」


「私もこんな所に『日本最強のゲームプレイヤー』がいるとは思わなかったわ」


「……ゲームはもう始まっているんだよ。君もゲームクリア頑張ってね」


「待って! あなたはもうこのゲームの答えを知っているの?」


「……学園ゲーム。それだけ今は頭に入れておいて。それじゃあ僕は行くね」


学園ゲームはもう始まっている。この学校に入った時からね。





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