入学試験③

体育館から出てから約2時間程たった。残り時間は1日を切った。細かく言うなら後18時間46分という所だろうか。

あの僕の正体を知っていた女子と別れてから1時間程この校舎を調べて見たが、出られる方法は思いつかなかった。


「……はぁー」


──どうしよう。あんな凄そうな雰囲気出したのはいいけど、僕まだ答え分からないんだよなぁ。

体育館出れたのもたまたまこの学校の校門の前に置いてあった学校案内の紙を持ってただけだしね。

しかも、ご自由にお取りくださいって書いてあったから取らなかった生徒がいたんだろう。

だから、別に僕が凄い訳じゃないないんだよなぁ。


「……どうしたものかなぁ」


「どうしたの? 大丈夫?」


────誰? いきなり黒髪ロングの超清楚そうな可愛い女の子が話しかけてきたけど知らない人だよね? ……髪綺麗だなぁ。と、そんなこと考えてる場合じゃなかった。


「えっと、君は誰かな?」


「あっ、ごめんね。急に話しかけちゃって、私は桜井結菜さくらいゆな。よろしくね。……えっと」


「あっ、僕は佐藤優樹よろしく櫻井さん」


「佐藤君だね。覚えた。覚えた。それで佐藤君あまり元気無いように見えたけど大丈夫? まあ、この状況で元気な方がおかしいんだけどね」


「うん。大丈夫だよ、少し考え事してただけだから」


「良かった。でもあまり思い詰めたらダメだよ? 皆にも頼っていいんだからね? 私だって少しは頼りにしていいんだからね?」


──いい子だなぁ。なんか元気でてきた気がする。


「ありがとう桜井さん。一緒に出れるよう頑張ろうね」


「うんうん。じゃあ私まだ上の階の方観てないから見てくるね。バイバイ」


「うん。バイバイ」


……いい時間だった。高校に来て良かったと思いました。

──入学絶対しないといけないな。



さてと、この校舎の作りはもう頭に入っている。一通りこの校舎の中は見た。

今回のこのゲームには不自然な点が一つある。

それは全部の部屋が開いているのだ。どこにも鍵は掛かってなかった。出口とか窓の鍵は掛かっているが、教室とかの鍵は掛かっていなかった。

どうして、それが不自然かと言うと大抵の脱出ゲームは普通開いてる部屋と開いてない部屋がある。

開いている部屋からできることをしていき開かない部屋を開けていきそこから視野を広げるのが普通の脱出ゲームだろう。



しかし、今回のこの脱出ゲームは全部の部屋は開いているし、特に使えるものとかもなかったと思う。

はっきり言って部屋数が多すぎてどこを見ればいいか絞りきれない。

後気になると言えば屋上ぐらいなのだが、一応、屋上に出れることは確認したが、周りの柵は針がたくさんあって下りることはできないとすぐに分かった。

それと、この学校の屋上は結構広いってことぐらいかな。

もう少し他の所も探索してみた方がいいよな。

────えっ? 急に意識が薄れていき、気づいたら床に倒れこんでいた。


「……ダメだ。……立つ気力もないや」


完全に意識を失ってしまった。



これが今まで起きた事だ。横にいる黒髪ロングの美少女は桜井さんだ。

しかし、どうして僕は保健室のベッドにいるのだろうか。不思議に思っていると桜井さんさんが話してくれた。


「佐藤君急に倒れたんだよ? だから、五十嵐君がここまで運んでくれたんだよ」


まあ、このゲーム始まってから寝てなかったから流石に体がもたなかったんだろう。

後、五十嵐君には後でお礼を言っておこう。

しかし、どうして桜井さんがいるのだろうか?


「そう言えば、桜井さんはどうしてここにいるの?」


「えっ? ……そ、その、倒れたって聞いたから、……し、心配して」


──ここにどうやら天使がいるようだ。なんていい子なのだろうか。

この子だけでも入学させようと僕は自分の胸に誓った。

いや、僕も入学しますけどね。

……入学。


「あっ! 桜井さん! 僕何時間寝てましたか。後残り時間何時間か分かりますか?」


「えっ? あーえっと佐藤君は12時間程寝てたよ」


「……じゅ、12時間もか」


まさかそんなにも寝ていたのか。


「あっ、で、でも気にしなくていいからね? 確かにいっぱい寝たのは事実だけどまだ時間はあるから誰も気にしてないよ」


あと6時間程か。まだ答えが分からないと言うのに。だいぶ時間を無駄にしてしまった。

──それに。


「その言い方だとまだ脱出方法は分からないって事だよね?」


桜井さんは困った顔をして答えた。


「……う、うん。……で、でも、まだ、時間はあるからだいじょ」


── その言葉は言ってはいけない。だから僕は桜井さんの言葉を遮った。


「桜井さん」


「えっ?」


「そんな考えだったらこのゲームはクリアできないよ。もうそんな事言えるような余裕はないんだよ」


少し強く言ってしまったかもしれない。桜井さんが少し泣きそう。


「……ごめんなさい。……私何も出来ないから。こんな事しか言えなくて。……無神経だったよね」


流石に女の子を泣かすわけにもいかない。ここは思ったことを言わなければ。


「いや、別に責めてるわけじゃないんだよ。……ただ、……その、……えっと」


「ん?」


「……い、いや、やっぱり何でもない!」


「えっ?」


ヘタレでした。すみません。主人公とかなら「心配しなくてもいい僕が守ってみせる」とか言うかもしれないが、僕は主人公じゃないから。

……だから、ゲームのクリア方法も分からない。

……って、……ゲーム。……脱出ゲーム。

……そうか。……そういうことか。

──分かったよ。このゲームのクリア方法が。

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