27話 戦場とは
メルと一緒に『ミミ・パルミー』のライブへと参加した俺。
ミミ・パルミーは、前世で友人だった『獅子原・澪』とそっくりだった。
そんな彼女のライブが盛り上がりの最高潮を迎える時、それは起きたのであった。
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轟音と共にアリーナの観客席が爆破。それによりコンクリートや砂埃が辺りにまき散らされていき、会場内が一気に阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わってしまった。
「メル!! 」
「うん! 」
俺達はお互いに目を合わせる。
「あー。あー。マイクテストー。えー私の名前は『ガルゼン・ファーント』七つの大罪『暴食』を冠してます。んで、ミミ・パルミーはドコですか? ちゃちゃっと連れて帰れってのが上の要望なんで」
会場に青年の様な若い男性の声が響く。しかし、その姿は砂埃でまだ確認が出来ない。
「七つの大罪?! 」
「? メル、七つの大罪について何か知っているのか? 」
隣で驚きの声を上げたメルに質問する。
「この前ヴァーミル王国で私が別に闘った相手が、七つの大罪の『憤怒』を名乗ってたの……! あの時は師匠が対応してくれたんだけど、結構厄介な相手だったよ……! 」
そうだったのか……。憤怒の次は暴食……。いったいどんな能力持ちなのか。
「ちょっとー。ガル。早まるのはよしてよー。砂埃で服が汚れちゃうじゃない」
今度は女の声が聞こえてきた。その声からは妖艶さがにじみ出ていた。
「すいません。目的達成が最優先ですから。遠回りしても仕方ないでしょう? 」
「それはそうだけどぉ。まぁ、いいわ。さっさと仕事するわよ」
女の方の声が引き締まる。
「カナデ。バルムンクを取りに行って! それまで何とかつないでおくから!! 」
神姫のメルが手強いと言う相手をARMEDで対抗出来るのか……。そんな不安に駆られてしまう。
ばんっ!
「痛っ! 」
「大丈夫だよ。バルムンクなら並のARMEDとは違うんだから、戦力になるよ! だから早く! 」
「……! 分かった。少し遅くなるけどそれまで頑張ってくれ」
俺はそう言いながら、メルの頬へ口づけをして走り出した。
「おーーーーーーーー!! 」
俺の背後からものすごい熱量を感じたが、それをも力にするように全力で会場を駆け抜けた。
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「すいません! 出撃準備大丈夫ですか?! 」
「問題ありません! 出撃いつでもいけます! 」
ARMED格納庫を全速力で駆けながら確認をすると、オペ子さんから出撃可能の返答がくる。
「ありがとうございます! 」
既に格納庫内にあるARMEDが出撃していたのを、基地へ向かう途中で確認していた。
格納庫の端にある階段を駆け上り、高架通路の先にある最後の一基。
「よし、メルを助けに行くぞ! 」
バルムンクの胸にあるハンドルを捻りハッチを開け、コックピットへと飛び乗る。
『魔力関知。搭乗者カナデ・アイハラ。バルムンク起動します』
操縦席に座り操縦桿を握ると認証アナウンスが流れ、コックピット内が明るくなる。
「計器異常無し! 出力安定! 射出ユニット接続完了! バルムンク行けます! 」
いつものアーク・ジェネラルからの出撃ではなく、整備も兼ねた格納庫からの出撃だったが、いつもの様に射出カタパルトに両足が接続され、格納庫横の滑走路までレールにのって移動してからの出撃となった。
「分かりました! カナデ・アイハラ。バルムンク。行きます!! 」
両手の操縦桿を前に倒し、両足のペダルを踏み込む。すると背面の二基のブースターが起動され、甲高い回転音がなり出す。そして機体は前傾姿勢を保ちながら加速していく。
無事射出シークエンスが完了し、カタパルトが動き機体が空へと飛び立った。
今日の空は晴天だ。夜になった今も満点の星空がこの世界を照らしている。そして、独り奮闘する
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「これは随分と派手に戦ってるな……」
セントラルアリーナに着いた俺は、外壁が崩壊し中のの様子が外から見えるようになっている現状に溜息を吐いた。
何気なくレーダーを確認すると、そこには敵勢力を表す赤三つが出現したのを確認した。
「新型レーダーは光化学迷彩も関知するのか……。まずは、こいつらを排除してからだな! 」
深呼吸を一つして気合いを入れ、
レーダーに記されているのは、【シーフ】
機体の特徴は、カメレオンの舌のような伸びる鞭のような中近距離武器と、光化学迷彩による隠密行動。遠距離武器は60ミリ機関銃のみ。見た目は黒いカメレオンの様な形の忍者型で、装甲等弱い機体だが、複数機編成だと手も足も出ず負けることもある。
ザシュッ!
わざと棒立ちしていた所に、鞭での一撃が振るわれる。
だが、その一撃がバルムンクに当たることは無かった。
「多対一では有利な機体だが、この
「なにっ! こちらの攻撃に気付いていたの!? 」
女性の驚くような声が聞こえたがそれを無視し、鞭が機体に当たる寸前に右ペダルを踏み込み、操縦桿を右を前に左を後に引くことで、その場で急速旋回をし掬いあげる様にして鞭を叩き切った。
その相手はその動きに対応仕切れず転倒。がら空きになった機体の両手両足を切断しようと俺は
しかし。
「まだ私達がいるの忘れないでよね! 」
右から突進してくるのをレーダーで確認していた俺は、ブースターを使い後方へバックステップをし突撃を避ける。
「分かっているよ! 」
「きゃっ」
どうやら、相手は自機の隠密性能に頼り切っていたようで、動きが雑すぎる。
「くそ! 見たことの無い機体だが、連携をしっかり取れば私達の前に敵は無い! 」
「分かりましたわ、お姉様!! 」
突進を避けて居る間に転倒していた機体が味方の手を借りて立ち上がっていた。
「あんたらに構ってる暇は無いんだ。どいてもらおうか」
俺は
「何を馬鹿なことを。ここを通りたくば、我ら透明の
アリーナを背に、三機の【シーフ】が俺の前に立ち塞がった。
「仕方ない……。やるしか無いか……。メル、少し待っていてくれ」
シーフに対抗する方法はおよそ二つあり。
一つは、敵の数を上回る味方を呼ぶ。
もう一つは、一対一に持ち込む。
だが、相手との力量に大差がある場合は……。
「えっ?! 」
「先に行かせて貰う」
何もさせずに撃墜する。
俺は三機のシーフの背後へと着地しつつ先へと進む。
ズドーーーーン!
俺の背後で轟音を立てシーフが崩れ落ちる音が響くのであった。
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「何で誰も居ない……。ココに着く前の通信では戦闘中だったはずだったのに……」
俺は、シーフ三人衆を無力化した後、アリーナ内に進入しメルの加勢のため勢いよく飛び出したものの、そこには破壊された【ウォーリアー】や【ミラージュ】の残骸が散らばっているだけだった。
確かにココに到着した時点で戦闘音が聞こえて来ず静かだった事を思い出した。
「クソ! 神姫が二人も居たのに何故だ! 」
俺はつい苛立ちから声を荒げてしまう。
カタッ
「ん? 」
足下で瓦礫が動いたのを確認した俺は、バルムンクを跪かせコックピットのハッチを開けた。
シートベルトを外し座席の横にある自動小銃を装備し地面へと降りる。
「誰かいますか! 」
「おーい。こっちだよー」
少年のようは男の子の声が聞こえた。
「瓦礫の下か。今いくよー! 」
「ありがとー。閉じ込められちゃって出られなくなっちゃったんだー」
子供が何故……。と言うよりも、
そもそも何故アリーナ内に人が居ないんだ。
違和感を感じながらも、警戒は怠らずに少年の声がする瓦礫の場所まで走る。
「よし、着いたぞ。怪我は無いかい? 」
声の感じからは元気そうだが確認のために容態を確認する。
「うん、大丈夫だよ! 」
「よかった。そしたら、壁際に穴があるからそこまで来てくれ。子供なら通れると思う
」
ちょうど到着した所が穴になっていてよかった。
「分かったよ! 」
男の子が穴の近くまで来て手を伸ばしてくる。
「よし、届いた! 頑張って握っててくれ! 」
俺は男の子の小さな手を掴むとゆっくりと確実に引き上げていく。
「やったー! お兄ちゃんありがと! 」
引き上げた少年をみると、汚れてしまった
ミミのライブTシャツに背中にはマントを着けたヒーローの様な格好をしていた。
「無事でよかったよ。頑張ったな。ところで、さっきまで闘いがあったと思うんだけどそいつらはドコに行ったか知ってるかい? 」
「ミミちゃんと赤いお姉ちゃんが戦ってくれてたんだけどね、会場の人を皆殺しにするぞって脅されて、急に現れた船みたいのに連れて行かれちゃったんだ……」
「そうだったのか……」
どうやら相手さんは、会場のファンを人質にしてミミ・パルミーの身柄を確保したようだった。
メルも黙ってはいなかっただろうが、大勢の人を巻き込むことは出来なかったのだろう。
悔しさに握り拳から血が出るほど手を握りしめていた。
「教えてくれてありがとね。お兄ちゃんはこれからみんなを助けに行くから、キミはこれから来る軍人さん達が来るまで隠れててね」
「うん! 分かった! お兄ちゃんお名前は? ボクは【イェン・キッド】って言うんだ! 」
「良い名前だ。俺は【カナデ・アイハラ】だ。じゃ、気をつけて待ってるんだよ! 」
俺はイェンに別れを告げ、バルムンクの下へと走り出した。
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