17話 その先
『ウォーリアーセカンド』をなんとか使いこなし始めた俺は、帝国の神姫『ツクモ・カミヤ』を前に、俺とマリアンヌ二人がかりで対応する。
初めての魔法を使い、その代償を感じながらもツクモを追い込んだ俺たちだった……
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「やった……のか……」
ハァハァと、肩で息をしながらマリアンヌに尋ねる。これはフラグ立ててしまったなぁ、と後悔したがもう遅い。
「きっと大丈夫ですわ…… ハァ。私達の総攻撃を食らったのですもの……ハァ。きっと……」
マリアンヌが言い終わるのと被るように、大地が震えだした。
「お前ら……ボクを本気にさせたようだね……ココがお前らの死に場所だ!!! 」
姿が見えないが声だけが聞こえる。
すると、上空から雷が目の前に落ちたのであった。
ズカーーーンッ!!
「じゃあね。不思議なお兄さん」
その声を聞いた俺は咄嗟に魔法を使おうとした。
が、それは間に合わなかった。
俺に向け青紫の電撃が突き進んで来るのを確認した時には、ウォーリアーの左腕が吹き飛んでいた。
「うぉあおぁぁぁぁぁあ!! 」
激痛。なんていうには甘い程の痛みが身体に走る。しかし。ウォーリアーに接続されているせいなのか、意識は飛ばずに保たれてしまう。
「ふふーん。流石、と言っていいのかな。ほんとは操縦席をぶち抜いたつもりだったんだけどねー」
そう言い放つツクモの姿が先ほどとは激変していた。
一目に異形と言えるその姿は、紫雷で形成されているのであった。
「あー。コレ? コレはね、神姫の第2の姿【
驚愕する俺達を笑いながら解説をするツクモ。
そんな彼女を横目に見ながら、マリアンヌの方を見ると、その顔からは絶望しか見えなかった……。
「ふふ。お姫様もボクの魔力の質を見て怖じ気づいてしまったようッスね。じゃ、終わらせよう」
『
呪文を唱えたツクモの両腕が、枝下桜のような柔軟性を持つ雷の鉤爪になる。
────焦がすは想い故に我は想う
「まだまだボクには勝てないッスよ」
────惑う貴方を助けたい
「じゃ、さよならッス」
────煉獄の焔龍よ我が前に現れ道を示せ!
ツクモが軽く呟くとその姿が見えなくなった。
「どうやら俺にもツキが回って来たようだ」
空に声が響き渡る。
『ドラゴン・エチュード!! 』
「メル! 」
メルの得意技が辺りの気温を上げていく。そして、俺の視界に2頭の龍が現れた時、その大きさに俺は驚愕した。
「ヒーローは遅れてくるんだよ!! 完全詠唱の威力! がっつり喰らえ!!! 」
そう、今までの龍は直径2メートル前後だった。しかし、今目の前に現れた物は、直径10メートルは優に超えるサイズだったのである。
上空から現れた双龍は俺から20メートルほど前に着弾する。
「クソックソックソックソックソックソッ!! ボクは負ける訳ないんだあーーーー!! 」
隠し球を出して余裕だったツクモの悲痛な叫びが辺りに木霊する。
「これは決まったな……! 」
俺は握りこぶしをグッと作り勝利を確信した。
「待たせてごめん!! ちょっと師匠からお願いされちゃって。てか、あの子随分凄い魔法使ってたね……」
そう言いながら俺の隣にメルが降りたちながら話しかけて来る。
「あぁ……。メルが来てくれて無かったら正直かなりヤバかった。ありがとう」
「今回ばかりはお礼を言わざる他ありません。メルティ・ノーグバイン。ありがとうございます」
近づいてきたマリアンヌも、メルにお礼を言ってくる。それだけメルの魔法が戦況を変えてくれたのだった。
「いやいやー! そんなに褒められると照れちゃうよー! もっと褒めて! 」
「なんでやねん!! 」
「「アハハハー! 」」
なんとか強敵を打ち倒した安心感でみんなで笑い合う。
カタッ。
石の動く音がした。
どうやら、まだ終わりではないらしい。
「チッ。みんなまだ生きているようだ! 気を抜くな!! 」
「まじで! 」
「分かりましたわ! メルさんも気を抜かずですわよ! 」
二人は緩んだ顔をしていたが、俺の声を聞いて音のした方を睨みつける。
「フフフフフフフフ。ボクをこれだけ追い詰めるなんて、たいしたモノだよ。まさかもう一人の神姫が来るとはね。ゼノの奴は何してるんだ!! 」
「避けろ!! 」
小さな笑い声と共に怒声がしたかと思うと、ドラゴン・エチュードが着弾した辺りから大小の岩が吹き飛ばされてくる。咄嗟に回避の指示を出すと、それぞれが方々に散った。
「お姫様の癖に神姫になってんじゃねぇ!! 」
「マリアンヌ!! 」
再度【
「お前とボクとでは接近戦相性最悪なんだよ! おとなしくやられろ!! 」
先ほど使った魔法の応用のように、2槍に雷の武装を纏わせマリアンヌへと連擊を撃ち込んでいく。
「チッ! ちょこまかと小賢しいですわねーー!! 」
「メル! 」
俺はアイコンタクトをメルに送り、飛び出した。
射撃はマリアンヌを巻き込む危険があるからダメ。魔法も同じ。
ならば、する事は一つだ。
「喰らえ! 」
マリアンヌに連擊を入れている背中へ振動刀で袈裟切りに振り下ろす。
「邪魔するな! この人間風情が! 」
ツクモがマリアンヌへの攻撃をしながら、振り向くことをせず振動刀を短槍で受け止める。
「その態勢で受け止められるのか……!!」
「舐めるなぁぁぁあ! 」
俺が振動刀を引き戻しバックステップでその場を退避すると、そこへ炎を拳に纏わせたメルが吶喊してくる。
「だーかーらー! 私には勝てないって言ってるじゃんか! 」
「キャラが崩壊してるぞ! 【
口癖が付かなくなっているのに突っ込みを入れながら、
メルの拳と俺の銃弾。お前はどう対処する?
「チッ」
舌打ちと共にツクモはその場で回転。吶喊してきたメルを2槍で受け流し、その勢いのまま俺の銃弾は雷を周囲に張り巡らせ弾き飛ばした。そして、マリアンヌにも回転の剣戟が迫る。
「ちょこまかとー! ふんっ! 」
マリアンヌが回転しているツクモにウルスを叩き込んだ。
「きゃっ」
あの重量の一撃を弾いた! そして、そのままカウンターの連擊が始まる。
「雑魚雑魚雑魚雑魚雑魚!! 」
吹き飛ばされたマリアンヌへツクモが迫撃を掛ける。
「やらせない! 」
それを、メルがすかさずマリアンヌとの間に割り込みレーヴァテインを横薙ぎに振り抜きやらせない。
ガキン!
難なくそれを受け止めるツクモ。
だが、それは囮だ。
「【
魔力を込めた弾丸達が一列になりツクモの頭部へ突き進む。
「貫けぇ!! 」
「よっと! 」
短槍を地面に刺し鍔迫り合いをしていたメルを蹴飛ばし銃弾から逃れようとする。
「【
一直線だった銃弾がツクモにが避ける動作をするのと同じくらいのタイミングで拡散させる。
「これはずるいよ! 【
ツクモが右手を弾丸の方へと突き出すと、ツクモを護る様に雷の壁が出来上がった。
「これでどうです!! 【グラビティ・プレッシャー】! 」
銃弾が弾かれると同時に、俺たちの後ろで魔力を溜めていたマリアンヌが魔法を発動する。
「くっ、がっ! なんなんだよ……コレは……!! 」
突如雷の檻が消し飛んだかと思うと、ツクモが片膝を着き苦しみ出す。
「苦しみなさい! 重力を通常の10倍にしたのよ! 並の力じゃ立ち上がる事も出来ませんわ!! 」
「ナイスマリアンヌ!! そのまま続けてて!
突き進め戒めよ。罪を認め溶かし留めよ。【フレア・ケージ】! 」
今度はメルの魔法だ。その両手から6本の火の杭が撃ち出され、ツクモを取り囲むとそれぞれが火を放つ。そして、お互いが繋がりあい炎の牢屋が完成した。
「雑魚がこのボクを捕まえようと言うのかぁ! 」
「そんな跪いた姿で言われても、怖くなんかないんだから!! 」
メルがあっかんべーをしながら、ツクモに言い放つ。
その瞬間。
俺の乗るウォーリアーが爆発した。
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