12話 覚醒
戦線へと繰り出した俺だったが、帝国の新型機により味方が圧倒されていくのを少ししか食い止められず、呆然としていた。
そこへ、俺自身と言う謎の声から新たなる真実が告げられる。戸惑いはあったものの流れ込んでくる力により意識が飛びそうになってしまった。
「また、気を失ってなんか居られるか!! うおぉぉぉぉぉ!!」
気合いの雄叫びを上げ、なんとか正気を保つ事に成功した。
すると。
『魔力を関知しました。セーフモード解除。ウォーリアー2ndシークエンス起動』
突如ARMEDのシステム音声が鳴り始めた。初めて聞く言葉に焦る俺だが、音声はそれを無視して続ける。
『操作アシスト起動。頭部・腕部にインターフェースを装着します』
すると、操縦席の上から卵を半分に切った様な機械が降りてきて、頭と二の腕に装着される。
「痛っ!」
二の腕に装着される時に金属が刺さったような痛みが走った。
『インターフェース装着完了。同期開始。続いて機体状態チェック開始。…………同機及びチェック完了。ウォーリアー2ndモード【ゼルエル】起動します』
そう言うと、今まで前面しか映し出されていなかったモニターが、全方向が映る全天周モニターに変わった。
それに加え、操縦桿だった物が半円の球体になり、ボタン類が無くなってしまった。
「これは一体…… ARMEDにこんな機能が隠されていたのか……」
呟きながら操縦桿? へと手を当てる。
『操縦者認識。カナデ・アイハラ。射撃モードへと移行』
アナウンスと共に球体に手が吸い込まれる。中にはグリップがありそれを掴む。
「……。よし、良い感触のグリップだ。これならやれる……。ウォーリアー、行くぞ!!」
操縦桿を前に倒し前進する。今までと違い動きがとても滑らかに動く。上下の振動も少なく振り向き動作も生身で動いているようだった。
どうやら頭と腕に付いているインタフェースから脳波を読み取り、操縦桿を動かす事に加え、生身の動きと同じようなイメージを思い浮かべて動かすと細かい動作までカバーされる様だった。
「もはやロボットスーツだな……」
メカオタクとしてテンションが上がってしまったが、まだここは戦場だ。高台からじゃカバー仕切れなくなっている。
この操作性なら格闘戦へ持って行ければアドバンテージが取れそうな感じがする……。
崖を敵に見つからないよう慎重に進んでいく。
「前方に敵機3確認。こちらには気付いていないようだ」
帝国の新型機『リザードマン』だ。
前衛に通常兵装2機。後衛には遠距離ライフルを装備した援護要員らしき1機の編成だった。
あたりを警戒しているようで、それぞれの機体は約10メートル幅間隔で位置取っている。
『使用弾丸は変更しますか?』
突然音声が流れびっくりする。
「……!! いきなりなんだよ…… えっと、今の装備はっと。通常弾か。他には何があるんだ?」
質問すると目の前にウインドウが展開された。
の5個が表示されていて、通常弾にマーカーが表示されていた。
「増加弾はどう言う弾なんだ?」
『増加弾は、操縦者の込めた魔力に応じて複数の弾丸を同時発射可能にする物です。
「なるほど……魔力が必要なのが気になるが、今の状況に最適な弾だな。よし、それにしよう。どうやって選択すればいい?」
『方法は2つです。1つはウインドウに直接触れ選択する方法。もう1つは音声認識で指示して頂ければ変更いたします』
随分と便利な機能だな……。ウインドウで選択すること自体は、前の状態でも同じように手元のタッチパネルで変更していたから違和感はなかったが、音声認識機能まで追加されているとは……
目の前のウインドウの『
するとマーカーが移動し、ウォーリアーがマガジンを交換する動作を行った。
「よし、これでいいだろう。作戦開始する!」
自らの士気を上げる様に発声し、『リザードマン』へ照準を合わせる。十時レクティルが3機を捕捉。狙うは頭部。呼吸を整え、敵機が反対側を向いた瞬間引き金を引いた。
ドーンッ!
「チッ! まじかよっ!!」
放たれた弾丸は『リザードマン』に直撃したものの、撃破出来た数は1機。そう、弾丸は1発しか発射されなかったのである。
「魔力の込め方なんて分からないわ……! って、気付かれたか! 通常兵装2機ならやれるか?!」
こちらに気付いた『リザードマン』の両肩からミサイルが発射される。
「くそったれが!」
やけくそになりながらも、飛来してくるミサイル4基へ照準合わせロックオン。さっきと同じヘマをしないために、4回引き金を引く。
ドーンッ!ドーンッ!と4回爆発音がなり、無事攻撃は凌げたようだ。魔力の込められていない弾丸でも威力が通常より上がっていることに驚く。
「アイツ中々やるぞ!! 1機しかいないようだから、取り囲め!!」
空中でミサイルを堕とした事に警戒した帝国側の兵士は、左側の1機が裏を取るためだろうか、俺から距離を取り始めた。
「逃がすかよ!」
こちらを正面に向けたまま背走しているため、『リザードマン』はそこまで早く移動は出来ていない。
ブーストを全力全開にし一気に距離を詰める。その間ももう1機への牽制射撃を忘れない。
「逃げ切れると思ったか!」
武器を振動刀に切り替えて、左下から斜めに切り上げる。
しかし『リザードマン』が手にする大型振動刀に防がれる。
「今だ! 撃て!」
「それくらいお見通しだ!」
右足で『リザードマン』の胴を蹴飛ばし、その勢いのまま旋回しながら5メートル程の距離に迫ったミサイルを左腕のハンドバルカンで撃ち落とした。
「コイツ、後ろに目でも付いてやがるのか!!」
驚愕の声が聞こえてくるが、こちらは全天周モニターになっているから、あながち間違ってはいない。
「挟撃したのにこんな物なのか」
俺は呆れながら武器をライフルへ変更し、体勢を崩している『リザードマン』へと流れるような動きで、通常弾を右膝と頭部へ撃ち込んだ。
ズーーン。
頭部と右足を壊され『リザードマン』が倒れる。
「そっちのお前も潰すから待ってろ」
「ひ、ひぇぇえーーー!」
脅しの一言を告げると、帝国の兵士が叫び声と共に撤退を始めた。
「逃がすと思ってるのか?
やけに頭の中がスッキリしている……。この感覚は何なのだろう……。
思考していると、『リザードマン』がブーストを全開にして西の方角へと飛び立っていくのが目に入った。
照準を『リザードマン』に合わせていく。
ひとつ
ふたつ
みっつ
刻々と『リザードマン』との距離が離れていく。
よっつ
いつつ
むっつ
「死ね」
静かにトリガーを引く。
銃身から蒼い銃弾が放たれ『リザードマン』へと向かっていく。
その弾丸は目標に衝突する寸前に6つに分裂。ひとつひとつが『リザードマン』に当たり飲み込んでいく。
全てが敵を飲み込むと、轟音と共に辺り一帯を目映い光が覆っていくのであった。
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