11話 強襲


 追跡していた少女から受けた攻撃により、過去を追体験することになった俺。


 その中で『双子の兄』を名乗る人物。


藍原弾あいはら・だん


 と遭遇。記憶の中に存在しない彼だったが、自然と受け入れられている自分がいた。


 彼から今俺がいる世界について、話しをしてくれるようなので聞くことになった。


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「ざっくりと言うとこの世界は、俺らが暮らしていた地球の並行世界にあたる場所だ。並行世界は知ってるよな? 軸がズレたもう一つの世界だ。

 それで、この星は『テクナマギア』って言って、地球から何万光年だったか忘れたけど、かなり離れている星だ。

 この星は生物が生存出来る環境であり、元々人型の生命体はいなかったらしい」


「らしい? そこは詳しくは分かっていないのか?」


「そうだな。そもそも、この星に地球人が移住してきたのが約3000年くらい前になるからな。その間に戦争やら色々あったみたいで歴史書はざっくりとしていた。

 あ、あと、地球はもう無くなってるんだなーこれが」


 弾は、笑いながら洒落にならないことを言い放った。


「は?! なんで地球が無くなったんだ?!」


「驚くのも無理ないわな。まぁ、隕石衝突がメインになるんだけど、異星人が攻めてきたってのもある。隕石に異星人が乗っていたみたいで、地球の防衛能力ではどうにもならなかったらしい。

 なんとか宇宙に逃げ出せた人や、異星人と交渉し協力関係を結んだ後、宇宙へと旅だった人とか、様々な方法で地球から離れていったんだとさ。

 んで、その中の一部が、まぁ日本近辺や日本好きの連中がこの星にたどり着いたって感じだな」


 だから日本人みたいな名前や、言葉が見たことのあるモノだったりしたのか……

 納得することもあるが、受け入れるにはキツい物も多くあった。


「並行世界って事は、やはり俺らの世界の延長ではないんだな。そもそも魔法とかあるしロボットもARMEDってのが……」


 ツッコミ所満載なのは異世界あるあるだけど……


「そしたら、元の世界の俺はどうなったんだ? 転移? 転生? したとしても、周りの反応を見てるとこの身体の持ち主は居たはずだろうし……」


「んー。それは俺も分からない。どうしてこの世界の『カナデ・アイハラ』としてココに来たのかは俺の知る所じゃない。ただ、俺もお前も同じ世界から来た。それだけは確かだ」


 「なんだ……結局分からず仕舞いじゃないか」


 何か情報を掴めるかと期待したが、結局異世界転移したって事が分かっただけだった。


「俺だって全知全能じゃあないんだ。

勘弁してくれ」


 肩をすくめながらやれやれと苦笑いをする。


「そうだ、奏、ちょっとこっちこい」


 ちょいちょいと、手招きをされたので近くに歩み寄る。

 すると俺の頭に手をかざしてくる。


「久しぶりに逢えた記念だ。兄ちゃんからプレゼントをやろう。『魔力探知マジックサーチ

 あー。これは中々に深いな……でも大丈夫だろう。よし、終わりだ」


 弾のかざした手が光り何やら物騒な事を言っていたが、頭が軽くなった気がする。


「次に会える時までには俺を超えられるくらい強くなっていろよ。またな」


 聞き覚えのある台詞を告げられると、急に目の前が真っ白になっていった。


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「こうなったら、キ、キ、キスをして起こすしかありませんわね!!!」


 目が覚めると、至近距離にマリアンヌがキス顔をして迫ってきている所だった。


「なっ!?!?!」


「きゃっ! 痛っ!」


 思わぬ急接近に驚いてしまいマリアンヌを突き飛ばしてしまった。狭いコックピットの中だった為強かに頭をぶつけるマリアンヌ。


「姫! 申し訳ありません! お怪我はありませんか?! 」


 ハッとなり、謝罪をする。

 

「カナデ様! 酷いですわ!! わたくしは気を失った王子様を起こそうとしただけで……決してキ、キ、キ、キキスをしたかっただけではありませんからね!!!」


 顔を真っ赤にしながらマリアンヌが怒鳴ってくるが、王子様と言った辺りから照れながら顔を隠してしまった。


 …………


 微妙な沈黙が訪れる。


「って! こんなことしてる場合じゃあ無いですよ!! 通信で話した敵と思しき少女はどこへ行ったんですか?!」


 緊急事態だったことを忘れていた。一体どれだけの時間気を失っていたのかを考えると、非常にまずい……。


「そうでしたわ!! 今この先の平原で戦闘が始まったと連絡がありましたの。敵機の数は30。突然の出現で戦線は混乱してますわ。

 なんとか援軍のおかげで押し込まれるのは防いでいますが、そろそろ厳しいかと……応援の神姫のお二方の姿も見えないようで……あの小娘は何所で油を売っているのですか!!」


「何だって……。俺が気を失っている間に攻め込まれていたのか……。メルの方も押さえられているままか……

姫!! 急いで戦線に向かいます! 案内お願いします……!!」


 非常にまずいことになった。どうやら、俺が追いかけていた少女は『神姫』だったようだ。この世界で魔法を使えるのは、神姫だけなはず。

 神姫であれば、ARMEDのレーダーに反応しない様に魔法でジャミングも出来なくはないはずだ。


「分かりましたわ! このまま山を1つ越えた所で戦闘になってます! 全速力で進めば20分もあればつくでしょう!」


「よし、すぐに向かいましょう!! 起きろ相棒! 闘いの時間だ」


 起動シークエンスを実行。機能停止していたウォーリアーを呼び起こす為に各種スイッチをオンにする。


 キュイィィーーーン!!


 駆動機構にエネルギーが巡っていき、独特な金属音が機体を中心に響き渡る。


「システムオールグリーン! ウォーリアー!発進する!!」


 操縦桿を全力で前へ倒し急加速し青い空へと飛び立った。




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 戦場は混迷を極めていた。


 帝国軍は神姫の魔法による光学迷彩を機体に施すことにより、王国の探知網を掻い潜り接近。

 俺たち共和国の援護部隊が護る箇所へ、神姫と謎の男。そして量産型最新機を投入することでいともたやすく防衛網を突破したのであった。


____________________


「クソッ!! 帝国の新型がココまでやるとは思って無かったぜ!!」


 敵部隊と戦闘中のライアンが、部隊通信で話しかけてきた。


「ホントですね。装甲と言い機動力と言い、今までの機体とはレベルが違うっ!!」


 返答しながら援護射撃を続ける。

 マリアンヌと合流後、戦闘区域で部隊と合流した俺は、崖の頂上付近で敵機を迎え撃っていた。


 敵の新型機『リザードマン』が、王国軍のARMED『バックラー』を、その手に持つ大型振動刀を振るい、盾もろとも切り裂いていく。


 リザードマンは、竜人のような見た目をしていて、左手には胴体を覆う程の盾を。右手にはサーベル型の大型振動刀を装備している。

 遠距離武器は肩に装備されている、2門のミサイルキャノンだけが視認できた。


「機体の性能が上がるだけで、ここまで一方的になってしまうものなのか……」


 悲惨な戦場を前に気持ちが折れそうになる。だが、護ると決めたんだ。最後まで諦めるわけには行かない!


「うぉぉぉぉおおお!!」


 射撃。射撃。装填。射撃。


 敵機から攻撃を受けている味方をひたすらに援護していく。時には武器を。時には脚部を。時にはメインカメラを潰していき、敵機を行動不能にしていく。しかし、新型機の装甲が厚く弾を通常より消耗している。


「これじゃあジリ貧で押されるぞ…… メルはまだ合流出来ないのか…… マリアンヌも神姫とやり合っているから援護も期待できないか…… クソッ……! クソッ!! クソーーーッ!!」


『ナニグズグズヤッテルンダ。クソザコガ』


 突如頭の中に声が響いてきた。


「?! 誰だ! 何処から話しかけている?!」


『オレノコトヲワスレタノカ? クソザコノクセニナメタコトイッテンジャネエヨ。テキナンザサッサトミナゴロシニシロ』


 男性とも女性とも取れるような、人の声がたくさん混じった声が語りかけてくる。


「俺は人は殺さない」


『ハハハハ。ソレハムリダ。クソザコガイキテイクニハ、ヒトノタマシイヲクラワナケレバナラナインダ。ソンナコトモワスレタノカ。サッサトチカラヲカイホウシロ』


「何だって? 俺は普通の人間だ。そんな化け物みたいな事はしない」


『タマシイヲクラワナケレバ、クソザコハショウメツスルダケダ。スデニオマエノタマシイノハンブンイジョウウシナッテイル』


「お前はなんなんだ。俺の何を知っている?」


『オレハオマエ。オマエハオレダ。タマシイヲクラエ。サスレバチカラヲカシツヅケヨウ』


 最後に声がそう告げると、急に身体の奥底から力の奔流が駆け巡ってきた。


「うわぁぁぁーーーーーあ!!」


 コックピット内に俺の絶叫が響き渡っていった……。


 


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