4話 回想~メル1~
「あーあ。カナデも行っちゃたかぁ……。でも最後に励ましてくれてた。私みたいな『怪物』にも関係なく。そんなに優しくされたら好きになっちゃうに決まってるじゃん」
____________________
私達『神姫』は、この世界に7人いるらしい。
世界が混乱に包まれた時、
でも、私が知っている限りだと、神姫は悪者や魔女みたいな『怪物』のイメージが強かったの……
その時代で1人の神姫しか現れなかった、という記述もあったらしいんだけど、前に7人揃ったのは700年前の『人魔大戦』の時だったみたい。
その時は『魔王』っていう悪いヒトが世界を統一しようと世界を巻き込んだ戦争をしたんだって。
その時代は『魔法』も存在していたらしいんだけど、今じゃ私たち神姫しか使えないみたい。
それでも今は『科学』が発達し、ロボットやマシーンの力を借りて生活できてるから、魔法はなくても問題ないんだけどね。
私が能力に目覚めたのは10歳の時だったんだけど、夢の中に女神様が現れて
『世界を救うのを手伝って欲しい』
って言われたんだ……
女神様のお願いだもの断ることなんてしないよね!
だって神様なんて誰でも会える訳じゃないもん!!
次の日、目が覚めると身体が燃える様に熱かったのを今でも覚えてる……
それからは、色々と修行? して頑張ったの!
神姫に選ばれる事はとても嬉しくて凄い事だってのは分かってたんだけど、やっぱり大人って怖いよね。
軍隊の人が神姫の力を欲しがってるんだって。
神姫はARMEDを簡単に倒してしまえるくらい強いんだけど、おとぎ話だと。
『剣の一振りで海をも切り裂き、魔法を放てば山をも吹き飛ばす程の力を持つ』
って書かれてる程とーっても強いんだって!
軍に見つかったら何をされるか分からないから、神姫になったって言うのもお父さんお母さんにしか言えなかったの。
だから、私は独りでこの力を使いこなせるよう頑張ったの!!
魔法に関する本は、村の図書館に無かったから、自分の手で魔力の使い方を覚えていったよ。
初めてマッチくらいの火の玉を出せる様になった時は、凄く嬉しかったなぁ。
お母さん達にお披露目したら、2人は泣きながら喜んでくれて、私も嬉しかった!
順調に魔法を操れる様になってきた頃に、軍隊さんが神姫を探し回っているという話を聞いたんだ……
まさか、私の存在がバレたのかなってビクビクしてたよ……
でも、みんなの話を聞いてると違うみたいで、私の他にも神姫が見つかってるって話みたい。
私の住む『エアリウス共和国』の他に『ガイアクル帝国』『ルニアルマ宗教国家』等大小沢山の国があるんだけど、それぞれの国が神姫を見つけてる。
戦争が始まる。
子供の私でもそれはすぐに分かったよ……
みんなを護れるよう、早く能力を使いこなせるようになりたくて、修行の内容を野生動物を相手にしていったんだ
始めは狼。次は大蛇やオオトカゲ。熊や巨大イノシシとも戦ったんだよ!!
戦闘をするたびに私は強くなっていったなぁ。
魔法もだけど、何より怪我もしないし、なんか疲れなくなったんだ。
神姫になるって
『人ではなくなる』
と言うことだったのかも……
神の使いとなり世界を平和に導く。それが自分の役目なんだなって。
『みんなは私が護る』11歳の誕生日にそう心に決めた。
それから半年くらいたった頃かな。
とうとう、世界的な戦争が始まっちゃった……
私の村の近くでも戦闘があったり、怪我を負った兵隊さんが村に来たりなど戦争の匂いが直に感じられるようになってきた……
「メルティ・ノーザンライトはいるか!! 」
運命って残酷だよね。
「私が、メルティ・ノーザンライトよ!!
村のみんなには手を出さないで!! 」
もし、軍が来て私のことを捜索し始めたら、独りで出頭する事を家族で決めてた。
みんなに迷惑はかけられない。
両親は泣きながら私の決心を受け入れてくれた……
道中数回の戦闘があったけど、無事に首都『セントマルクス』へ到着したよ。
軍での生活が始まったんだ。
思っていた生活よりも自由に過ごせたのは驚いたなぁ。
基地の敷地内はほとんど自由に動けたし、食事もしっかりしていてびっくりしたもん。
でもお母さんの手料理が恋しかったなぁ。
暮らしていく内に、訓練や白兵戦、ARMEDの演習に付き添ったりして実践訓練もやったよ。
初めてARMEDと戦った時はその大きさに驚いたけど、いざ戦ってみたら普通に戦えてびっくりしちゃった。
その訓練の後くらいからかな。なんか自信が付いたし。
『来た頃より笑顔が増えたね』
って言われる様になってからは、みんなとも仲良くやれてるのかな、って私自身でも思うな。
そんなある日の事だった。
「緊急警報!! 緊急警報!! 敵軍隊及び神姫接近中!! 」
背筋に嫌な汗が流れ落ちていく……
とうとう、他の神姫が攻めて来てしまった……
____________________
帝国軍旗を掲げた、人狼型ARMED『ミラージュ』が10数機で隊列を組んで進んでくるのが見える。
草原に並び進む姿は凄い。
ミラージュは紫の装甲を身に纏い、両肩にショットガン。
胸部に3連のバルカンを搭載していて、半2足歩行型になってて面白い動きをしてる。
「あんなにたくさん……しかも神姫もいるんでしょ……私に出来るかな……」
「ミラなら大丈夫だ。君の力をみんな信じてるよ」
司令部に設置されたモニター見ていたら、男の人に声を掛けられた……
「なんでそんなこと言えるの!? あんな大群になんて勝てっこないよ!! 」
怖じ気づいているのは分かってる……
でも殺気が凄い。訓練なんかでは感じられない空気感が怖い……
「大丈夫だって。訓練たくさんしてるんだろ?
みんなそれを知ってる。だからこそ、メルに背中を預けられるんだよ。だから、大丈夫」
大きな手が私の頭を撫でてきた。
不思議と嫌な感じはしない。
むしろ心地よくて安心する手だった。
「ちょっと! いつまでやってるの! 」
恥ずかしくなり、撫でてくる手を払いのけてしまう。
今の自分の顔は真っ赤なんだろうなぁ……
今まで訓練ばかりでこんなことされたことなかったから、なんだかむず痒い。
「少しは気が紛れたか? みんなも雑魚じゃない。メルもみんなの事信用してやれよ? じゃあ、戦場でな」
後ろ手に手を振りながら名前も知らない彼の姿を、黙って見送ることしか出来なかった……
「名前聞くの忘れちゃったなぁ。この戦い……絶対負けられない」
なんとなく気持ちも落ち着いたし、高揚感が身体を包んでいる感じ。これなら大丈夫そう!
「よーっし!! 頑張るぞーーー!! 」
気合いを入れて、走って甲板へと向かった。
「メル、気持ちの準備は出来た? 今から外に出たら、そこはもう『戦場』です。いくら神姫とは言え、相手方にも神姫が居ます。無傷で帰って来い! とは言いません。ただ、無事に帰ってきてください」
オペレーターから励ましを貰い、更に感覚が研ぎ澄まされていく感じが肌を伝わって感じる。
「ありがと! 頑張ってくるね!! 」
装備を展開。両手に焔色のショットガンを握り、空を見上げる。
敵は多いが仲間もいる。負ける訳なんかない。
「メルティ・ノーザンライト! いっくよーーーー!! 」
ブーストを全開にし、一気に急加速。
青空へと一直線に飛び上がる。風を切る音が耳に心地よく響いてくる中を一心不乱に突き進んだ。
そして3分後、先に出撃していた部隊へと合流することが出来た。
「みんなおまたせ!! 前線押していくよ!! 」
「「おう!! 」」
部隊のみんなが声を合わせ反応してくれる。
みんなを護るんだ!!
覚悟を改めて決め、警戒しながら交戦予定ポイントへと向かう。
「敵部隊補足! 戦闘開始します! 」
部隊の1人が通信でみんなに伝えてくれる。
全力で行くよ!!
三角形に陣形を組んで進んでいる部隊の中央へ、上空から突撃する。
「し、神姫だぁぁぁぁ!! 」
別に、そんなに驚くことないじゃんね。か弱い乙女相手にさ。
「『ウリエル』の神姫。メルティ・ノーザンライト! ここは誰1人通さないよ!! 」
大見得を切って、一番近いミラージュへ接近。
土手っ腹にショットガンを撃ち込む。全力で撃つのは初めてだったけど躊躇無く撃てた!
ショットガンを諸に喰らったミラージュは、そのお腹に大きな空洞を造ってその場に倒れ込む。
「こ、こんなに簡単にARMEDの装甲を撃ち抜けるの?! ヤバっ! 」
ここまで強いなんて思って無かったけど、今はやらなければやられてしまう!
「こんだけ強ければ、ARMEDなんて怖くない!! 」
そう叫んで、今倒したミラージュを蹴り飛ばし他の機体へ衝突させる。
「調子に乗るなよ!! 小娘が!!」
背後から狙ってきた敵の一撃を蹴り上げた勢いを使いムーンサルトで避ける。
「そんな大ぶりじゃ当たらないよ!!」
敵の上から銃での一撃を加える。
ミラージュは避けられず呆気なくスクラップに。
「次っ!! 」
そこからは私の独壇場だった。
神姫は人のサイズだから下手くそな操縦者だと、そもそも攻撃が当てることが出来ないし、それに加えて、私は動物との戦闘で直感的な勘が鍛えられていたから簡単に敵の数を減らしていってた。
このまま壊滅させられる。と思っていたんだけどね。
「フリーズバレット」
遠くから女の子声が聞こえてきた。
その瞬間、私の身体に信じられない事が起きたんだ。
「きゃぁぁ!! 」
今までダメージというダメージで痛みを感じなかったし、そもそも攻撃をまともに受けたのも初めてだったかもしれない。
「貴方やりすぎよ。私の家族の命。これ以上消させはしない」
とうとう現れてしまったみたい。
帝国軍所属。
閉ざされし神姫・ミュー・マクスウェル。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます