5話 回想~メル2~


 私に初めてダメージを与えた相手。


 ミュー・マクスウェル。


 彼女は、氷を操ったり狙撃銃による遠距離からの攻撃を得意としてるみたい。

 武器は遠距離ライフル。

 レイピア。

 あとミサイルポットを積んでいると、戦闘前に公開されていた情報に書いてあった。


 白に近い青のショートカットをしていて、肌の色も白い。

 全体的に華奢な感じはするけど、蒼白い瞳からはとてつもない威圧感を感じられる……

 装備しているアーマーは私のに似てて、私のは鷹をイメージして作り上げたけど、あの子のは鷲の様なフォルムをしている。


「進軍してきたのは、あなたたちの方でしょ!!  人の敷地に入ってきて、そういうのはおかしいでしょ! 」


 先ほど受けたダメージで痛むお腹を押さえながら叫ぶ。


「それは、先に貴方達共和国が喧嘩をしかけて来たからです。正当防衛を主張してるんですか? 馬鹿なんですか?」


「はぁーーーーっ?! 今馬鹿って言ったよね! 怒ったよ!! ぶっ飛ばす! 」


 人を小馬鹿にするような態度にカッとなり、ミューに向かい一気に加速する。

 右手に炎を生成。火力をマックスにして思いきり拳を振りかぶる。


「一撃で決める!! 」


「フリーズ・ブクリエ」


 私の渾身の一撃が氷の盾に防がれ、盾からカウンター気味に放たれた雹弾を避けるのに体勢が崩れた。


「エクラ・デ・グレイス」


 やばい。


 本能的に身体を強引に右へ捻る。


 そこへ、ミューがいつの間にか手にしていたレイピアによる突きが唸りを上げ顔の横を通り過ぎていった。


「これを避けられるんですね。中々やりますね。では、これはどうでしょう。アバランチェ・プランタン」


 高速の連続突きが私に迫る。


 避ける?

 防ぐ?

 弾く?


 考えるより先に身体が動いていた。


「なっ!! 馬鹿なんですか?! レイピアを直接掴むなんて?! 」


「へへ。あなたの攻撃早すぎだよ。でも直線的すぎて掴むのなんて簡単!! サンライズ・バニッシュ!! 」


 掴んだレイピアを思い切り手前に引っ張り、その勢いを利用し炎を纏った左拳で渾身の一撃を叩き込む。


「いい一撃です。でもまだまだです」


 必殺の一撃を受けて、吹き飛ばされたミューが、余裕そうに立ちあがりながら言う。


「なんで……手応えはあったのに……」


「魔法は攻撃にだけ使うものではありませんよ」


 そう言うミューのお腹を見ると、装甲の上に更に氷の鎧が造られていた。


「まだまだですね。貴方には死んで貰います。ルナ・デージュ」


 レイピアの先から特大の氷柱が現れ、私へと向かってくる。


「メル!! 後ろに飛べ!! 」


 聞き覚えのある声。


 それを信じて、後ろに全力で飛び退く。

 その瞬間、私の居た所で爆発が起きそれとともに、周囲に氷の欠片が散らばっていく。


「誰ですか、私の邪魔をするのは」


「あぁ、俺か? 俺の名前は『カナデ・アイハラ』国を護る狙撃手さ。ミューちゃん。ちょいとお痛が過ぎたね。うちの神姫ちゃんを怪我させたのはよろしくないねー」


 カナデ……格好いい名前。

 でも、少しチャラいかも。


「なんなんですか、貴方は。我々神姫は神の使い。貴方達雑魚とは格が違うんですよ」


 言いながら、ミューがカナデが乗るウォーリアーに氷塊を放った。


「おっと。怒らせちゃったかな? ごめんねー」


 飄々と答えながら氷塊を撃ち抜くカナデ。神姫の魔法なのにどうやっているのだろう……


「中々やりますね。何かの手品ですか?」


「いや、俺の腕前が良いだけ。驚いた?」


 2人が睨み合っているおかげで、私への意識が逸れている。今なら奇襲出来るかも。

 ミューの位置はカナデの後ろ側。私を護るために間に入った形だ。

 これならウォーリアーに隠れて攻撃が出来る。


 しかし。


「動かないならこちらから行くぜっ!!」


 カナデが先に動いた。


 左腕のバルカンをミューに向けて放つ。ミューはそれを横には避けずに前進して最小限の動きで避け突き進む。


「勇敢なこった!!」


 腰に携えている対神姫用振動刀を抜き、突き進んでくるミューへ上段から思い切り叩きつけた。


 バーンッ!!


 大きな衝撃音が鳴り、辺り一面に砂埃が舞う。


 今だ。


「フレア・バースト!!」


 私はありったけの魔力を砂埃の舞う場所へ放った。

 狙った先に巨大な火柱が発生する。私が今使える最強の魔法。

 ARMEDを本体丸々溶かせる威力があるはず。

 神姫には使った事は無いが、大きなダメージを与えられたに違いない。


「やった。神姫を倒した……」


 そこで私の意識は途切れた。


____________________



 長いようで短いカナデとの出会いを思い出し、改めて彼の事が好きなんだなぁ……と苦笑いする。

 今のカナデは記憶が無くなってしまったけど、ARMEDの操縦は相変わらず上手だったし、私の事を護ろうとしてくれた。

 やっぱり人は根本的な所は変わらないんだと思うんだよね。


「何をにやけているのです。貴女一人になってしまいましたわよ?」


「これで全力が出せるようになって嬉しいだけだよ。マリアンヌ、覚悟しな!!」


 私の周りに炎が渦巻き出す。


「面白いですわ。その力、見せてみなさい!!」


「言われなくても!! ドラゴン・エチュード!!」


 私の周りの炎の渦が2頭の巨竜になってマリアンヌを喰らうため、轟音と共に突き進んで行くのであった。


____________________



「本当にメル1人に任せてよかったのですか? 俺たちがいても普通に戦えてたのでは……」


「おめぇは心配症だな。前はもっと適当だったのに、記憶を無くしてから随分と真面目になったものだ」


 笑いながら俺をおちょくるライアンを先頭に、母艦へと帰還する小隊の4人。

 機体の速度は最高速を維持しているため身体に掛かるGはそれなりに強い。


 それを気にすることなく冗談を言えるライアンは凄いなと感心する。


「俺は元々こういう性格です。ライアン、メルの戦闘方法ってどんな感じなんですか? 大剣を持っていましたが、他の武器とかは?」


「あー、それすらも忘れてるのか。メルの装備は、焔剣『レーヴァテイン』弾幕兵装『サン・オブ・ザ・フレア』2丁ショットガン『アグニ』だな。あとは範囲の広い火の魔法をそこそこに使ってたな。基本派手な武器による戦闘になるから、周りを巻き込みがちなのが玉にきずだな」


「なるほど。火を使うだけあって巻き添えも必至なんですね」


 見た目からは想像付かなかったが、その様な戦闘スタイルだったのか。


「到着だ。みんな身体を休めてメルの帰りを待とう」


「了解」


 戦艦『アーク・ジェネラル』へと帰還した俺たちだったが、メルの事が心配で仕方ない俺はウォーリアーから中々降りる事が出来なかった。


「いつまで乗ってるんだー? 早く整備したいんだけどー?」


「すいません。いつでも出撃出来るようにしておきたくて。やはり、降りないとダメですか?」


「「ダメって事はなけいど、休むことも兵士の仕事でしょー」」


 機体から中々降りてこない事に、整備班の『マルタ』と『ミルタ』の双子の兄妹が2人同時に声を掛けてきた。


 双子は俺の機体の前に来て話を続ける。


「そんなにメルが気になる? 前から思ってたんだけど」


「カナデはメルのこと好きなの?」


「そ、そんなことないですよ! あの子の事全然知りませんし!」


 2人で交互に話すという、独特な話術から突然の質問に慌ててしまう。助けて貰ったし普通に可愛い子で気になってはいるが、好きとかではないはず。そもそも年齢差がありすぎる。世間的にどうなの? 


「あれ? ずいぶん真面目になったんだね?」


「世界の女の子はみんな俺のモノって言ってたのに」


 衝撃の台詞に驚く。

 周りは俺の変化に驚いているようだが、いちいち突っ込みを入れるのも疲れてきた。


「はぁ。記憶無くしてるとは言え、そんな言い方はひどくないですか?」


「ははっ。別にそんなに怒る事ないじゃん」


「真面目なカナデもかっこよくて良いかもね。とりあえず、搭乗したままで補給とかするね」


 どうやら、搭乗したまま整備してくれるようだ。ありがたい。

 いつでも出撃出来るようにしておきたかったから、うれしい限りだ。


 目の前で作業が進んで行くのを、操縦席から眺めながら時が過ぎていく。


 メルからの通信も無いようで心配だ。


「メルは大丈夫なのですか! あれから30分は経ってますよね?!」


 司令室に通信を飛ばす。


「大丈夫だー。そろそろ戦いも終わりそうだ。」


「わかりました。ありがとうございます」


 この艦の艦長『ルーイット・バン』が答えてくれた。

 ルーイット艦長は年齢は分からないが、白髪白ひげで貫禄のある体型。

 艦長らしい見た目をしている。


「みんなーー! ただいまーーー!!」


 俺の耳に聞き慣れた明るい声が聞こえた。


「私の力に恐れ入って、マリアンヌは帰って行ったよー!!」


 お姫様のご帰還だ。


「お帰り。無事でよかった」


 操縦席から降りて、メルを抱きしめる。


「ちょっ、いきなりどうしたのさ! 恥ずかしいよカナデ」


「ごめん! うれしくてつい。マリアンヌが強そうだったし、苦戦していたから心配してたんだよ」


「ありがとう……心配してくれるのはカナデだけだよ」


 顔を真っ赤にしながら、はにかんだ笑顔でそう言ってくれた。


「そんなことないよ。みんな心配してたよ」


 小さな嘘を付いたけど、メルが帰ってきた事にみんな喜んでいる。それは事実。


「ちょっとー! 何良い雰囲気になってるのさ。いくら神姫を退けたからって余裕こいてる暇はないよ!」


「そうだ。今うちらは国の極秘任務中なんだ。この船に積んでるブツ。そいつ次第で戦況がガラッと変わるんだとよ。それをカナデが居るからって襲われて、そのままブツが盗まれたりなんぞしてみろ。ウチらの首は、真っ二つだ」


「すいませんでした。メルの事が心配で皆さんにまで迷惑を掛ける所でした」


 深々とお辞儀をし謝罪をする。


「記憶喪失だとは言え腕前が落ちてないから連れてきたんだが、判断誤ったかな」


 顎に手を当てながら思考するライアン。

 その顔は冗談めいているような本気の様な、つかめない表情をしていた。


「もー!! 勝ったんだから良いじゃん!! ライアンのそういう所キライ!」


 ライアンからの言葉にメルが俺の事を庇ってくれたものの、メルはメルでそっぽを向いてしまう。


「いや、いいんだよ。自分の腕には自信あるけど迂闊だった。庇ってくれてありがとな、メル」


 そう言いながら、メルの頭を撫でる。


「むー」


 撫でられたことで、変な声を上げながらむくれるメル。

 そんなメルを微笑ましく見ていると。


「カナデちゃーん。街に着いたらデートしましょー」


 金髪巨乳のミラがタンクトップ姿で現れた。


「仕事後のお約束よね♡」


「は、はぁ。デートですか? 何をすれば良いんでしょうか……」


「それは着いてからのお楽しみよ♡ 楽しみにしてたんだから♡あ、メルちゃんも来る? 楽しいわよぉー」


 俺の腕を組み胸を当てながら、メルも誘うミラ。


「か、カナデが行くなら私も行く!! ミラと2人になんてさせないんだから!!」


「おー、怖い怖い。カナデちゃんはモテモテだねー。じゃあ上陸したら通用口で待ってるからねー。バイバーイ」


 俺から腕を解くと、手を振りながら部屋の方へとスキップしながら去って行った。

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