~異世界にて~
1話 始まり
目を覚ますと真っ白な天井が目に入った。
「ここは、どこだ? 」
テンプレ通りのセリフだなぁ、と思いながらもこんな時は出てしまうものなんだと実感する。
ベッドから起き上がると、部屋の中には知らない機械や見たことのない物が並んでいた。
仕事柄機械類をよく見るが、初めて見る物ばかりでテンションが上がったのは恥ずかしくて言えない。
そんなことを思っていると、部屋の扉が開いて1人の男性が入ってきた。
「カナデさん。目が覚めましたか。よかったです」
「は、はぁ。えっと、ここはどこなんでしょうか?」
疑問をぶつけた俺に謎の衝撃がくる。
「王子様ぁぁあ! 生きててよかったぁ!! 」
泣きながら俺の胸に抱きついてくるコイツは誰だ?
記憶をほじくり返すと、夢に出てきた赤髪の女の子だった。
「王子様って。メルさん、カナデさんが困ってますよ? 」
「え?! だって、とーっても心配したんだよー!! 王子様が私の為に死んじゃうなんていやだもん!! 」
「メルさんは、カナデさんに一週間ずっと付きっきりでしたもんね。」
一週間? 俺は一体何を……
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俺は、
趣味はゲーム、プラモ作り、ライブに行くことだ。
最近夢で、いつもやっているゲーム『ナイツ・オブ・プルガシオン』に登場するロボットで戦闘をする。というモノをよく見ている。
目が覚める前は、確かバリ旅行へ行く飛行機の中にいたはずなのだが……
いつもと違う感覚はあったものの、夢は夢。そう思ってその状況を楽しんでいたが、まさか夢はまだ続いているのか?
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「カナデさん。検査の為の準備をしてきますので、少々お待ちください」
「あ、はい。ちょっと状況が分からないですが……」
「あー。すみません、私はココで医師をやっている『ドクター・アイン』と申します。どうやら記憶障害が出ているかもしれません……ひとまずここで、ゆっくりしててください」
「分かりました……」
記憶障害か。確かにあちらの話してる事がイマイチ分からない。しかし記憶は失ってないぞ? 名前も覚えているし、昨日していた仕事の内容も覚えている……一体どういうことなのだろうか。
そもそも俺はこの人達を知らないし、こんな設備のある施設に入る程重要な人間でもないはずだ。
「カナデ? 深刻な顔してどうしたの? 」
メル。と呼ばれていた少女が俺に話しかけてくる。
「いや、どうしてキミは俺の名前を知っているんだい? 」
「どうしてって、カナデが私を助けてくれた時に名乗ったんじゃん」
顔を赤くしながら答えるメルに、疑問を抱きながらも少し質問をしてみようと思った。
「悪いんだがメル? だっけ。俺はその時の記憶がないんだ……キミのちゃんとした名前も、どうしてキミを助けたのかも。」
そう告げると、メルは目をうるませながら。
「そ、そうだったのね! 必死だったから忘れちゃうのも仕方ないよね! またね! 」
メルが椅子から急に立ち上がり、別れのセリフを言いながら部屋から出て行ってしまった。
「ちょっと! 待てって!」
叫んだつもりの言葉は思ったよりも出ていなかったらしく、むなしくその場に響いていった。
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また同じ天井を見て目が覚めた。
先生の話では、部屋から飛び出したメルを追いかけようとして、ベッドから落ちて気を失っていたみたいだ。
とても恥ずかしい。しかも、メルの事を探すことが出来なかった。もっとあの子の事を知りたいと思ったのに。
「傷つけてしまったかな……」
「大丈夫ですよ。メルさんは強い子ですから、またすぐに戻ってきますよ」
か細く呟く俺に、先生は優しい言葉をくれた。
「さっそくですが、軽く問診をしていきますね。まずはお名前と年齢、家族構成。所属と好きな物をお願いします」
前半は良いとして所属とはなんだろうか……。
「名前は、アイハラ・カナデ。年は26歳。家族は両親とも死別で、独り身です。所属はちょっと思い出せません。好きな物は、ロボットと寿司です 」
「分かりました。また少し経ったら検査するのでそれまで休んでくださいね」
「分かりました……先生。俺、何か変なこと言いましたか? 」
「そんなことないですよ。安心してお休みください」
所属を覚えていない、と言ったときの先生の表情に違和感を覚えた。
明るく話す先生だったが一抹の不安は拭えなかった。
「はい。お休みなさい」
体調も良くなかったので言われた通りに横になる。
部屋から先生が出て行ったものの、緊張からか目が冴えてしまった。
布団に包まったままこれからの進退について考える。
夢だと思っていた事が現実になっている?
地球ではない世界に来てしまったのか?
夢から覚める事なく閉じ込められた?
考えられるパターンがありすぎて頭痛がしてきた。
夢にしては、感覚が本物過ぎる……
現実にしては常識外の事が多すぎる……
はたして、俺は生きて元の世界に帰れるのだろうか……
「おっはよー! 」
「ぐふっ! 」
うつらうつらとし始めたその時だった。
本日2度目の突撃を食らい暗黒へと引き戻されていった。
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その日2度目の突撃を食らい、またもや気絶した俺はその張本人であるメルに看病を受けている。
「そんなに締めたら痛いんだけど………」
「ごっごめん! つい、しっかり傷口を締めようと思って力が……てへへ」
メル、と呼ばれていた少女が舌を出しながらおどけている。
「まったく……傷口も何も、もう塞がってるんだけど……まぁ、それでなんだが、お互い自己紹介を改めてしたいなって思ったんだが、どうだい?」
ごまかし切れてるか怪しいが、話の流れを作る為に質問した。
この子は一体何者なのだろうか…
「いいよ! 私の名前は、メルティ・ノーザンライト。12歳! 好きな物は太陽と、明るい人! あとドーナツが大好きだよ! それと、私、
矢継ぎ早に答え、最後にドヤ顔をしながら神姫だと言うことを告げたメル。
神姫とはこの世界では誇るべきモノなのだろうか?
「ありがとう。じゃあ俺も自己紹介するよ。
名前は
質問なんだけど、さっきから聞く『神姫』って何のことなんだい?」
「えー?! 神姫のこと知らないのに、私の事を助けたの? 神姫ってこの世で一番強い存在なんだよ! だから、誰も助けてくれない………」
「え……それってどういう事だい……? 神姫って神様か何かなのか………」
メルから出た言葉に俺は衝撃を受けた。さっきまで自分が乗っていたロボットよりも、生身の人間が強い?
そんなおかしな事があるものなのか。メルから語られる言葉を中々信じられずにいた。
「そうだよ!! 神様に選ばれし、凄い女の子なのだ!!」
両手を腰にやり、盛大にドヤ顔をするメル。その顔は自信とやる気に満ちあふれていた。
「そ、そうなのか……それで、神様に選ばれてどうなったんだ?」
質問としては雑なものだと理解していたが、どう質問していいか悩んだ俺はそう聞くしかなかった。
「えーっとねー! こんな事とか出来るようになったんだよー!」
そう言うと、メルは両腕を前に出し目を閉じた。
すると、両手の間に小さな火の玉が産まれ、次第にスイカ大の大きさにまで大きくなっていた。
「ふぅ。どーだぁー! 私は何もないところから火を産み出すことができるのだぁ!!!!」
俺は、目を見開き目の前の光景に釘付けになっていた。
この世界には、魔法があるのか? ロボットも魔法も存在する世界?
でも、神様に選ばれたと言っていたから魔法は存在していないのか?
色々な疑問が浮かんでいく。
「カーナーデー!! 私の能力凄いでしょ!! ライターとか使わなくても火が使えるんだよー! これが神姫に選ばれると言うことなのだぁ!! 凄いでしょ-!」
「す、凄いな……メルは魔法が使えるのか……」
「そーそー!! 魔法、魔法!! 私達神姫は、魔法が使えるようになった女の子なのです!」
神姫とは、魔法使いの事だったのか。だからってロボットとも生身で渡り合えるものなのか?
それにしては、メルの火球のサイズは小さかった。あんなのでは、俺が造っていたロボットの装甲ですら貫けない……
「さっきの火の玉でロボットと戦うのか?」
「まさかー!あんなちっこいのじゃ威嚇にもならないよー」
「そ、そうだよな。なら、どうやって……」
俺の疑問を先回りしたように、メルが両手を胸前で組み祈りを捧げるように目を閉じた。
「これが神姫の
そう言うと、炎が出現しメルを包みこむ。
「メル! 大丈夫か?!」
突然の出来事に焦る俺。思わず大声を出してしまった。
そして、炎の渦から現れたメルは見たことのない姿をしていたのであった。
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