第5話
七月二九日
今日は彼の誕生日。
「お誕生日おめでとう。やっと二十歳だっけ?」
『そうだよ。』
「せっかくだし、寝る前に一杯どう?」
『いいねぇ。』
「んじゃ適当に買ってくるね。」
『待ってる〜。』
彼の誕生日を一番に祝えるなんてすごく嬉しい。
どんどん彼に夢中になってる私が少し怖い。
でも好きになったら止められない。だから尽くすしかないよね?
「おまたせ。買ってきたよ。」
『ありがとう!じゃあ早速…。』
「かんぱーい!」
お酒も程よく楽しんだところで私達は眠ってしまった。
私は夢を見た。どんな夢か、いまでは思い出せないけど、少し不思議な夢。
『…あれ?もう朝?』
「ホントだね。おはよう。よく眠れた?」
『うん、だいぶぐっすり寝てたみたい。そっちは?ちゃんと寝た?』
「うん、でも、変な夢は見たかも?」
『へー。どんな?』
「あんまり細かい事は分からないんだけどね。ここ数日見てる夢。一昨日は兎をみたわ。昨日は鹿。そして今日はあなた。不思議な雰囲気ではあるのだけどでも別に起きてから何かあったわけでは無いから心配しないで。多分最近読んだ小説のせいだと思うし。」
『そっか。なんか面白いね。』
「ほら、それよりご飯食べて出かけよ。今日は赤レンガのとこ行きたいの。」
『おっけ。』
今日はちょっとオシャレな赤レンガで出来た建物やインスタント麺の工場、ラーメンが沢山展示されているとことかにも行ってきた。
夏休みな事もあって少し混んでたけどその分楽しいイベントも多かった。
少しオシャレなお店でディナーを食べた。そのあとは再び観覧車に乗った。
「とっても楽しかったね。そういえば、なんで私が明日までの三日間のお泊まりにしたか知ってる?」
『いや?休みが三日間あったからとか?』
「まぁ、それもちょっとあるけどさ…それだけじゃなくてね、明日の夜は流星群が見えるの。せっかくだから一緒に見たくって…。」
『そうだったんだ。意外とロマンチストなとこあるよね。』
「……っ!そういう事は言わなくていいのっ!いいじゃん、ちょっと夢見ても。」
『はいはい、そうだね。ごめんごめん。』
「そんなことあんまり言うと夜寝かさないんだからね?」
『最初からそのつもりだったんじゃないの?まぁいいけど。』
「失礼な…そんなことはあったけどさ…。」
観覧車を堪能した私達はホテルに戻って二人っきりの夜を目一杯堪能して行くの。
だって夜は長いのだから……
七月三〇日
昨晩遅くまで戯れていたためかなかなか起きられなかった。
たまにはそんな朝も悪くないよね。
その為にもチェックアウト時間遅くしていたし。
だから今日はのんびり彼の寝顔を拝んでいた。
こんなこと書いてたら彼に見つかった時怒られちゃいそうだね。
そんな彼も見てみたいけど。
彼が起きてから、流星群は地元で見ようと言うことになったので一旦私達の地元へ帰っていった。
それから一度荷物を置いて、再び合流した。
「夜までどうしよっか。どっか行きたいとことかある?」
『別にない。』
「そっか。じゃあ、カラオケとかにでも行く?」
『おっけー。』
そんな感じでカラオケに程よい時間までいることにした。
「あぁ〜もう喉ガラガラ。これ以上歌えないよ。」
『わかる…。もう無理…。』
「そろそろいい時間だしご飯食べて公園まで行こっか。」
『うん。』
そして、公園まで来ると、自由研究のためか子供が思ったより多かった。
『そういや何座なの?流星群。』
「みずがめ座だって。方角はあっちみたいだね。さっきそこの小学生達が話してるの聞いた。」
『そっか。まだ流れてこないし俺はソシャゲのイベあるから走ってるわ。』
「うん、来たら教えるね。」
彼はとんでもない廃人ゲーマーなのでよくゲームしてる。
その顔が楽しそうだからいくらでも見守っていられるんだけどね。
「あ、流れ星。」
『ん?始まった?』
「うん!わぁ…すっごい綺麗……。」
『そうだね。』
「ねね、なんかお願いごとしよ?」
『そうだね。』
「もう、見てないじゃない…ほら、一緒にお願いごとするよ。」
『はいはい。』
「お願いした?私は今の幸せがずっと続きますように。ってお願いしたよ。」
『俺は金金金っていっといた。短いし。』
「っぷ、あはは!リアリストすぎるよ!お星様もびっくりだね。」
そんな彼も堪らなく愛おしくなっていた。
私は悪い子なのかもしれない。だって、星に託した願いは違うものだから。
私の本当に願ったこと、それは〈彼とずっと一緒にいられますように〉
彼と一緒に居られるなら他はどうでもいい。
それが私にとって不幸に導かれるとしても、他人を犠牲にするとしても。
そして、彼が苦しんだとしても。
私は彼を離すつもりなんてないんだから。もう絶対絶対手放さないよ?
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