第3話

五月二〇日

今日は彼とデート。

今日はちょっと遠目の中華街へ出かけることにした。

私達の住む街からは若干遠いからなかなか行くことがない。

「なに食べよっか。」

『野菜が無けりゃなんでもおっけー。』

「じゃあ、色々食べ歩こう!」

そうして色々食べ歩いた。

その後、近くのショッピングモールや遊園地に行った。

先日のショッピングモールよりも遠いお出かけだから浮かれてしまったけど大丈夫かな?

こんな子供みたいにはしゃいでしまって彼にがっかりされたりしないかな?

「今日はたのしかったね。あ、これ、お小遣い。」

『そうだね。ありがと!』

「じゃあね。また明日。」

『ばいばーい。』


こんな夢のような話がいつまでも続いていいのかな?

夢はいつか覚めると言うけど、この恋は夢とは違うよね?

絶対に夢物語になんてさせない。

だって……彼を永遠に手離す気が無いのだから。



六月六日

そろそろ紫陽花の季節。ということで彼を誘って私はデートへ向かった。

紫陽花の花言葉はね、【辛抱強い愛情】【団結】ような強かなものを表すんだよ。

私はそんな紫陽花を彼と見てより二人の関係を強く結びつけたかった。

「とっても綺麗よね…。」

『こうやってここで紫陽花見るの初めてだけどすごいね。』

「ねぇ、紫陽花の花言葉って知ってる?」

『いや、知らない。』

「そっか。それならそれでいいんだ。」

『そうなの。じゃあ知らないままでいいや。』

そう、彼は知らないままでいい……

だって紫陽花の他の花言葉は【浮気】【無常】などだから。

そんな感情私は知らない、知りたくもない。

だからその気持ちにそっと蓋をして過ごすんだ。


私は彼を愛している。

彼だって私を愛してくれている。

それでいいんだ。それ以上はなにもいらない。関係ない。

彼が愛してくれてない?そんなのあるわけないのよ。


もし、もしだよ?

彼が私を愛してくれてないのなら私とこんな関係になったりする?しないよね?

彼は私のこと愛してくれてるから私とこんな風に関係を持ってくれているんでしょ。

なにより私がこんなに愛していて彼が私を愛さないわけがない。

だから紫陽花の花言葉は関係ない。

ただ美しいから見に来た。それだけ。

彼も私もお互いがお互いを愛し愛されている。

それをこれから証明して行くのだから。



六月一〇日

彼が持っているタブレットを先日出かけた場所に忘れてしまっていたので再びそこへ出かけることになった。

思わぬ形でのデートになった。

でも私もお仕事があったのでそんなに長い時間一緒にいられなかった。残念。

「タブレットあってよかったね。はい、これ今週のお小遣い。じゃあ私はそろそろお仕事だから。」

『ありがとう!頑張ってね。』

「頑張る!またね。」

そういって私は仕事へ向かった。

この仕事へ向かう時間がいつもいつもいつもいつも心を痛める。

彼と一緒に居たいと強く願うのがこの彼と離れる瞬間だから。

仕事中終始彼のことを考えていた。彼は今頃なにをやっているんだろう…

あぁ早く彼に会いたい、彼を抱きしめて彼の匂いに包まれたい、彼とイイトコにいきたい…

そんな狂気に似た何かを燻らせながら私は仕事をしていった。




六月二四日

今日は大きな銭湯型テーマパークに行った。

土曜日ってこともあって外国人が多かった。

中に入る前に浴衣に着替えなくてはいけないようだ。

初めて見る彼の浴衣姿……

とってもかっこいい…

今すぐ抱きしめてそのまま閉じ込めて置きたいくらい素敵!

緩く巻いた帯、着物の襟からのぞく少しだけ浮き出た鎖骨、袖から出てくる華奢そうに見えるも筋肉のしっかりついた腕、どこを取ってもとても素敵で大好き。

全部全部私だけのもの。永遠に閉じ込めてしまいたい。

あなたを誰の目にも触れさせたくない。

でも、現実はそれが許されない。しんどい世界だなぁ……

「どこから行こっか。」

『うーん…あ、足湯は?』

「いいね、行こっか。」

そうして足湯へと私達は向かった。

足湯は男女混合だから私達のようなカップルや夫婦が多い。

大切な人のそばにいたいって気持ちはみんな同じなんだね。

足湯も周りの風景も全て合わせて日本庭園みたいな、和な感じがすごく感じられた。私達の着ている浴衣も含めて一つの和な雰囲気。とっても綺麗……

「人がたくさんいるのにすごく和むね。」

『確かに。不思議だね。』

「…ねぇ、フィッシュセラピーだって!楽しそうじゃない?やってみたいな。」

『うん!』

足湯の奥にある小さな木製の小屋には〈フィッシュセラピー〉と書かれている。

どうやら足湯の湯の中に小さな魚がいて、私達の角質を食べて行ってくれるみたい。

あんま長い時間いる勇気は無いので一番時間が短いコースを選んだ。

「わっ!すぐ寄ってきた!ふふっ……くすぐったい…」

『っ…!でっかいのいるんだけど!?』

「ホントだ!……って大きいの痛い!痛い!」

『ちょっ!そんな強く捕まらないで…!』

「ごめっ……ふふっ…でも…ゃあ……くすぐった……ひゃぁ!」

《はい、時間です。お気をつけておかえりください、ありがとうございました。》

一番短い時間のコースでよかったような寂しいような……

楽しい時間はあっという間で、その後はご飯食べたり射的とかわなげとかを巡っていたらあっという間に帰る時間になっていた。

本当ならこのままお泊まりしたいのだけど、明日は朝イチでシフトがある。

「あ、これ、今週分のお小遣いね。」

『あーりがと。お仕事頑張ってね。』

「うん、またね。」

こうして泣く泣く解散し、翌日、私は仕事へ向かっていった。



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