管理官と王女様
しろもじ
第0話 プロローグ
「それでは、これより学徒会長選、選挙結果を発表します」
その日、広い講堂は、多くの生徒で埋め尽くされていた。誰もが、今か今かと結果発表を待っている。一段高くなっている壇上では、10人ほどの生徒が並んで立っていて、その中央にはひとつのパネルが置かれていた。
それにかけられていた紫色の布が、スゥッと静かに取り除かれた。講堂でその様子を見ていた彼の目が大きく開いた。講堂内に選挙結果が告げられる。同時に大きな歓声が巻き起こった。
彼とその仲間は、愕然とした様子でそれを見ていた。しばらく言葉も出ないまま、立ち尽くしていた。段々身体の力が抜けていくのが分かった。この半年のことが脳裏を過ぎった。楽しかったことも、辛かったことも、笑ったことも、泣いたことも、怒ったことも……。そこから何かが抜けていくような感触。
そんな彼を見て、彼女が明るく言った。
「まぁ、やることはやったんだし。しょうがないよ」
全然納得してはいかなった。しかし、彼女がそう言うのならば、それはそうかもしれないと思った。いや、そう思わないといけないのだと思った。今までやってきたことが全て失われたわけではない。やってきたことが無駄だったわけではない。そうだ、どんなことにも無意味なことなんてないはずだ。これはこれで、きっと未来に繋がっていくはずなんだ。
そう思い込むことにした。それでもひとつだけ、心残りはあった。
隣で無理に明るくしている彼女を勝たせてやりたかった。みんなで、喜び合いたかった。
なんとか平常心を保ちつつ、彼女と向き合っても、その思いだけは消えない。彼は気づかれないように、そっと目を閉じた。
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