Ⅲ
「で、結局これ事故なの?殺人なの?病死なの?」
私は、朝比奈にぶっきらぼうに聞いた。
「なんで、俺に聞くんですか?俺、解剖に立ち会ってませんし……つか、まだその途中だろうし。」
あからさまに不機嫌さを全面に出された表情と口調で返された。まぁ、わかるけど。
「じゃあ、質問を変える。なんで、私が呼ばれたの?あの段階で。」
あの段階とは、まだ遺体がその場所にある段階。詳しい死因も原因判らない段階の事。いつもなら……といっても殆ど呼ばれることすらないし、呼ばれるとしても事件と断定されて一ヶ月くらいしたら何となく声をかけられるくらいなのに。
「あー……課長がね、呼んできてって。今回ばかりは、どーしようもないとか何とか。」
朝比奈も、私が呼ばれた理由をはっきりとは知らないらしかった。
……今回ばかりは?
うだうだと、朝比奈と話していると、課長ー太田 慶吾が部屋に入ってきた。
「上條~やっとお前の出番だよ~!」
まるで、酔っぱらっているかのような、ふにゃふにゃした声で言った。……気持ち悪い。
「課長様ともあろうものが……
そう……意味が判らないのだ。「人外被害対策室」もしかしたら、人間以外の「何か」の起こした犯罪だとしたら。また大量の犠牲者が、結局なんで被害にあったのか判らないなんて事がないように作られた対策室の室長は……
何もできないから。人以外のものなんて見たことも、感じたことも触れたこともないのだから。
もちろん、猫や犬などは触ったことがあるし、ハムスターは飼ったことがある。そういうのではなくて……人間をどうこうしようとする、出来そうなものには、出会ったことがないのである。
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