決着

「くそ、不意打ちくらった!」


アルフレッド右足を引きずりながら槍杖代わりにしてハルト達の元向かっている。

ユキアの魔術によって闘技場の外へ吹き飛ばされたが、何とか上手く受け身をとってダメージを最小限に抑えた。

しかし、相当な高さから地面に落下したこともあり、その衝撃の力全てを受け流すことは出来ず、ダメージ右足に集約されてしまった。

痛みを堪えながら闘技場へ入りハルトとアイリの姿を探す。

すると意識を失っていたはずのハルトがアイリを抱えて立ち上がっている姿がアルフレッドの視界に入った。


「ハルトのやつ、無事だったか」


けど確かにあの攻撃は致命傷だったはずだ。

一体何でハルトはあんな何もなかったような風で立っていられるのだろうか。





「ごめんアイリ。心配かけた」


何故だろう。

目が覚めてからというもの妙に落ち着いてる自分がいる。


「貴方、一体何であれだけの怪我を負っていて……」


ユキアが自分の胸の部分を見て驚愕の表情をした。

自分でも確認してみると、植物のツルによって貫かれ、胸に空いたはずの穴が塞がっていて、血の一滴も流れていない。


「そう、それが貴方の力ね」


何かに納得した様子のユキア。

しかし今そんなことはどうでもいい。


「ごめんアイリ。すぐ終わらせるからちょっと待ってて」

「待ってください!私も戦えます!」

「これは王国騎士の、僕の仕事だからアイリには応援して待ってて欲しいんだ」


アイリの頭に手を置いて目を見つめる。

自分でもよくわからない。

だけど今なら、アイリのためならなんでもできそうなイメージが頭の中にある。


「カノン。貴方まだ動ける?」

「うん。どうするの?」

「どうやら紋章持ちの彼はおそらく回復系の恩恵を持ってるわ」

「回復系?てっきり攻撃系かと思ってたよ」

「胸に空いた穴がもう完全に治ってる所を見ると驚異的な回復力よ。貴方の斧で右腕を切り離して何とかこの状況を切り抜けるわよ」


どうやら彼女達の作戦は決まったようだ。

剣を構えようしたが手元にないことに今気がついた。

辺りを見渡すと彼女達の後ろ側にトロンライトが転がっていた。

カノンは斧を構え、ユキアは魔法を発動させるために手をこちらにかざしている。

だがあちら側は自分の様子を伺っているようだった。

大きく息を吐く。


「あんたらには聞きたいことがあるんだ。大人しくしてくれ」

「だれが・・・」

「そうか、少し痛むけど我慢してね」

「え?」

「カノン!!」


カノンの背後にこれまで自分が体感した事のない速度で回り込んだ。

他の人からしたらいきなり現れたくらいに感じるのではないだろうか。

カノンの脇腹に蹴りを入れる。


「ぐあっ」


流石に女の子に攻撃するのびは抵抗があるので手加減した。

しかし、それでも十分なダメージが入ったようでカノンはその場にうずくまる。

ユキアはすぐさま魔法を発動させ、地面から無数の植物のツルが現れ、カノンごと飲み込もうとする勢いでこちらに迫ってきた。


「ハルトおおおお!」


名前を叫ぶ声と同時に無数のツルに向かって光の一線が放たれる。

アルフレッドが槍を投げたのだ。

ツルに向かっていく槍を掴み取り、投擲の勢いを利用して次々とツルを切り刻んでいく。

その途中、地面に転がるトロンライトを右手で拾い上げ、辺りのツルを左手に持つ槍で薙ぎ払ってからトロンライトを地面に突き立てる。


「五芒星の光(ペンタグラムライト)!」


トロンライトを中心に五芒星が地面に刻まれると同時にそれとは別にユキアを中心とした五芒星の円が現れ、光の壁が遙か上空まで登っていった。

ユキアは光の円陣から抜け出そうと試みるも光の壁に阻まれる。


「こんなもの魔法で……!」

「無駄だよ。その隔離された場所じゃ魔法は使えないから」


この「五芒星の光」はトロンライトの特殊効果の一つだ。

この光は外界の内と外を切り離す性質がある。

ユキアは魔法の発動をしようとするが何も起こらない。

何度か試行錯誤をしたのち諦めるように地面に座り込んだ。


「じゃあ、話を聞かせてもらおうか」

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