兆し


「「ハルト!!」」


アイリとアルフレッドがハルトの側へ駆け寄る。

ハルトの胸には背中から植物のツルのようなものが刺さり、その場に倒れた。

ハルトの名を叫ぶアイリの声が響き渡る。


「てめえか!」


アルフレッドはカノンの胸ぐらを掴み問いただそうとする。

しかし、カノンもだいぶ驚いている様子で直接の犯人出ないことをアルフレッドは察した。

すると地面が隆起し、そこから植物のツルがカノンを掴んでいる腕をめがけて凄い勢いで伸びて来た。

咄嗟にアルフレッドは掴んでいる手を離し、後ろに下がる。

ツルはその場で何本も出て来て球体状になってから一本一本地面に戻っていく。

ツルの中には人影が見えた。


「あらあら、女の子の胸ぐら掴むなんて野蛮な人ね」

「てめえがハルトをやったのか?」

「ええ、ご覧の通りよ」

「ユキア!」


蒼色の髪をなびかせながらユキアと呼ばれる女性がカノンの元へ近づき、カノンの拘束具を外した。


「ユキア、なんであいつ殺しちゃったの!?あいつ右手に」

「大丈夫よカノン。もしあれが私たちの探している物だったら死んでとしても紋章は消えないわ。死んでから右手ごと奪えば問題ないわ」


カノンの疑問に被せて答えるユキア。

そして地面からユキアの意思とは関係なく地中から植物のツルが一列になって出てきた。

アルフレッドがユキアに向かって槍を投擲したのだ。

地面から現れたツル達はそれを攻撃を遮った。


「あら、危ない。オートにしていなかったら私も彼みたいに貫かれていたかもしれないわ」

「てめえは俺が仕留める!」

「王国騎士らしからぬ発言ね。けど所詮ただの人間に魔術を扱う私を止められるかしら?」


アルフレッドが地面から現れるツルの攻撃を次々と避け、

先程投擲した槍を拾い、ツルを切り裂いていく。


「私達も急いでるの。ちょっとどいてくれるかしら」

「断る!」


今度は植物のツルではなく巨大な大樹が地面から勢いよく射出された。

アルフレッドはそれをもろに喰らい、会場の外まで吹き飛ばされてしまった。


「さて、回収しないと。行くわよカノン」

「う、うん」


ハルトとその側で名前を叫び続けるアイリの元にユキアとカノンがと近づく。


「お嬢さん。どいてくれないかしら」


ユキアの声など聞こえていないようにハルトの名を呼び続けるアイリ。


「はあ、鬱陶しいわね」


先程と同様に植物のツルを使い、アイリをどかそうとした瞬間。

視界からアイリとハルトの姿が消えた。

ツルによる攻撃は空を切る。


「ユキア後ろだ!」


カノンの声に従い振り返る。

そこにはアイリを抱え、貫かれた胸の痛みなど気にも留めない程堂々とした姿のハルトが立っていた。


「ごめんアイリ。心配かけた」


ハルトはおでこをアイリのおでこにくっつける。

するとアイリは目から涙が溢れて、両手で口を塞いだ。

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