夢の中
聞こえてくるのは波の音。
背中一面には砂の感触が広がり、蒸し暑いが汗は一滴も出てこない。
夢を見ているのだろうか。
そういえば何をしていたんだっけ?
だんだんと意識が覚醒していく。
確か闘技大会の決勝戦を戦ってたはず。
そうだ。
カノンを追い詰めて、目的を問いただそうとして。
ハッと胸に手を当てる。
貫かれたはずの胸に傷が一つもない。
どういうことだ?
辺りを見渡す。
するとどうだろうか。
周り一面は海になっており、後ろを振り返ると樹林が広がっている。
「まさか死んだのか僕は?」
恐る恐る右手を見る。
その手にはアイリより先に死なないと誓った誓約の紋章が刻まれたままだ。
「紋章があるってことは、まだ誓約を破ってないってことだよな」
「そうだね。まだ君は死んではいないよ」
「だれだ!?」
声のする方向に振り返る。
そこには白髪の少年が砂浜に座っていた。
白い外套を羽織っていて、肌すらも色白い。
なんとも存在が希薄に感じる少年だ。
先程辺りを見渡した時には誰もいなかったはずなのにいつからそこにいたのだろうか。
「だれ....か。それに答えるのは中々に難しい。けどこの場所についてなら答えれるよ。ここは君の中さ」
「なんだって?」
僕の中?
一体何を言っているんだこいつは。
「おや、その顔は僕の言うことを信じていない様子だね?」
「今の話をどう信じろと?」
「提示出来る物がないんだ。些細なことだし、信じないならそれでもいいさ」
どこか掴み所のない少年だ。
「君は確かに死にそうになっていたよ。そうだね。もしアイリより先に死なないっていう誓約をしていなければ、君は死んでいたね」
なんで自分がアイリに誓った誓約を知っている?
「なんで誓約の内容を知っているかは簡単だ。僕は君の右手に刻まれた誓約そのものさ」
「誓約そのもの?」
「まあ積もる話もあるけれど、時間がないんだ。僕の力を君に貸すよ」
「ちょっと待ってくれ!話が見えない!」
「はははっ。確かにこれで話が見えたら君は未来視の才能があるよ」
少年は優しく微笑み、僕の頭に手を置いた。
「心配しないでもすぐに彼女に会えるさ。そうそう、僕の名前は」
少年が最後になんて言ったのか聴き取ることが叶わなかった。
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