不意の一撃


トロンライトを手にしてカノンに斬りかかる。

確かにカノンはかなりの手練れだ。

だが、条件が互角であるならば負けはしない。

その程度の強さと言ってしまうと言葉が悪いが、彼女が弱いわけではない。


「くそ、予定外すぎるっての!」


カノンはイラつきながら斧を振るうが、先ほどのようなキレがない。

自分と凄まじい剣戟を繰り返しながらもアイリとアルフレッドの方向にも注意をしなければならないからだ。

そのせいで集中力を欠いていて、カノン追い詰めることができた。

追い詰められたカノンは地面に斧を突き立てた。


「グランコルス!」


斧に埋め込まれて入る宝玉が紫色に光り出す。

地面から兵隊の姿そした土塊の人形が地面から生成された。

合計で3体の土塊の兵士が現れた。


「いけえ!」

カノンの合図で兵士達が迫ってくる。

トロンライトをそれぞれに土塊の兵士に向け、三度何もない空間を斬り、光の斬撃を放つ。


「スライト!」


斬撃は兵士達を真っ二つに引き裂き、それを受けた兵士達はその場でただの土に戻る。


「そんな!?」


驚いているカノン。

すかさず距離を詰めて、地面に突き立てていた斧を弾き飛ばして、壁側まで追いやった。

トロンライトをカノンに突きつける。

勝負ありだ。


「くそ!」

「さあ、目的を吐いてもらうよ、お嬢さん?」


これにて一件落着となるのだろうか。

あとは事情聴取やら何やら観客達が無事かの確認やらとやる事は残っているが一先ずは安心だろう。


「ハルト!無事ですか?」

「無事無事。心配した?」

「俺がトロンライト持ってきたおかげだろう?」

「ああ、それはマジで助かった。二人ともありがとう。ところで、観客達は大丈夫?」

「ああ、心配すんな。全員避難済みだよ」

「さっすがアルさんいい仕事してくれるね」

「さてさて、問題は彼女だろ?とりあえずどうするよ」


アルフレッドのどうするという意味はこの場で尋問するか、騎士団の駐屯場へ連行するかという意味だ。

普通の場合なら駐屯場へ連呼するのがマニュアルではあるが、カノンは何やら誓約の紋章について詳しいようだ。

正直今この場でその話が聞きたい。


「なあ、お前さんこんな大掛かりな事をして結局何がしたかったんだ?」


アルフレッドの問いにカノンは口を塞ぐ。


「なあカノン。お前さっき言ってた紋章のことなんだけど」


カノンに誓約の紋章の話をしようとした時だった。


胸に激痛が走った。

視線をそこへやると、先ほど自分とカノンを囲んでいたものと同じ植物のツルがドリルのように螺旋状になって胸部を貫通していた。


「な!?」

「「ハルト!?」」


アイリとアルフレッドが名前を叫ぶ。

カノンも驚いている。

彼女の仕業ではないのか。

いやカノンの他にもう一人、この騒動に関与しているやつがいることに気がつかなかった。

薄れゆく意識の中、アイリが自分の名前を叫ぶ声だけが頭に響いた。

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