第27話 超魔幽幻大巨神モードザシュガル

 死都モードガルの近くの上空でシロネはジャヒダラナとシュウシュトゥ、そしてアシャクと対峙する。


「おのれ邪魔をするな!!!」


 ジャヒダラナが吠える。

 だがシロネは聞く耳を持たない。

 

「悪いけど、レイジ君とクロキの邪魔はさせないよ。貴方達はここで私達の相手をするの」


 シロネは剣を向けてジャヒダラナ達を牽制する。

 モードガルの上空ではクロキ達が冥王ザシュススと戦っている。

 戦況はクロキ達が押している。

 そのため、冥王の配下である彼女達は援軍に行こうとしているのだ。

 もちろん、シロネ達はそんな事をさせるつもりはない。

 チユキもリノもナオも空を飛び、クロキ達とザシュススの戦いの邪魔をさせないように動いている。


「ちょっと、貴方達も手伝いなさいよ!!!」


 シュウシュトゥが周囲の邪神達に叫ぶ。

 邪神達はただ見ているだけで動く気配がない。

 ただ、遠巻きに戦いの行方を見ているだけだ。

 

「諦めなさい。そして、見ていなさい。これは冥王殿が始めた戦いなのですからね」


 そんな時だった。

 黒い翼の鳥人が降りて来る。

 鳥人はシロネとジャヒダラナ達の中間に立つ。

 そのたたずまいには隙がない。


(何!? こいつ!!? 強い!?) 


 シロネは突然現れた鳥人を見る。

 この鳥人からはかなりの強者の感じがする。


「お前は!? ハーパス!!? 何をしていた? 加勢しろ!!」


 ジャヒダラナは叫ぶがハーパスと呼ばれた鳥人は首を振る。


「それはやめておきましょう……。まあ、戦ってみたいですが……。それにしてもあの剣士がまさか噂の暗黒騎士とはね。冥王殿もさすがにこれではどうにもならないでしょう」


 ハーパスはそう言って遠くを見る。

 そこには暗黒騎士の姿となったクロキがいる。

 今にも戦いに割って入りたさそうにしている。

 もちろん、その時は止めるつもりでいる。

 だけど勝てる気がしない。

 そんな感じがするほどの力を感じていた。

 だが、今の所は冥王に加勢するつもりはないようだ。

 シロネはクロキ達を見る。

 戦いは終盤に入ろうとしていた。






 空船に乗り、遠くからクーナはクロキ達の様子を見る。

 遠くではクロキ達が冥王ザシュススを追い詰めている。

 予想通りの結果だ。

 クロキを相手にして勝てるわけがない。

 もっとも、主に戦っているのは光の勇者とレーナの兄だ。

 クロキが相手にするまでもないようだ。

 

「クーナ様の仰る通り、我らの出番はないようですな」


 傍らにいる暗黒騎士団副団長であるノースモールが言う。

 ノースモールは何名かの暗黒騎士を引き連れて来ているが、今の所何もすることがない。

 それはクロキの部下となっている女デイモンのグゥノも同じだ。


「確かにないぞ。だが、出撃の準備はしておけ、戦いが終わった後、エリオスの奴らがどう動くかわからん。もしもの時はこちらも動くぞ」


 クーナがそう言うとノースモールとグゥノは頭を下げる。

 今は共闘しているが冥王との戦いが終わればどうなるかわからない。

 その時はクーナ達も動くべきであった。


(さて、冥王よ。お前はどう動く? このままで終わるか?)


 


(……、何もすることがない)


 クロキの前の前ではザシュススとレイジ達が戦っている。

 戦況はレイジとアルフォスが押している。

 いかにザシュススが強くても、本来の力を取り戻したレイジとアルフォスを同時に相手にしたら敵わないのも仕方がない。

 

「ふん、この程度かよ。冥王!!」

「さっきまでの勢いはどうしたんだい!! そらそら!!」


 レイジとアルフォスはザシュススを追い詰める。


「くそがああああ!!!」


 ザシュススは悔しそうに吠えると翼を広げレイジとアルフォスに立ち向かう。

 その戦いはすさまじく、ザシュススの眷属は割って入れない。

 いや、入るのはそもそも不可能だ。

 眷属達が割って入る事をシロネ達が許さないだろう。

 その他の邪神達も見ているだけだ。

 もっとも、動きそうならクロキは動こうと思う。

 なぜなら暇だからだ。


「おのれ!! こうなったら仕方がねえ!!  この手を使ってやる!!」


 もはや、勝てないと悟ったザシュススは急降下するとモードガルの祭壇へと行く。

 祭壇はクロキが壊したばかりだ。

 何かまだあるのだろうか?


「おや? まだ何かあるのかな?」

「逃げたって無駄だぜ」


 アルフォスとレイジがザシュススを追う。 

 その時だった。

 モードガルが大きく揺れる。


(あっ、これは!!?)


 クロキは何が起きるか察して後ろに下がる。

 クロキが下がったのを見たレイジとアルフォスも下がる。

 モードガルは揺れて動くとその形を変えていく。

 変化が終わった後に現れたのは巨大な人型である。

 

「おい、これは? なんだ!!?」

「まさか、こんな手を隠していたなんて!!」


 レイジとアルフォスが驚きの表情をする。

 それもそうだろう。

 突然モードガルが人型に変わったのだから。

 もっとも、クロキとしては2度目である。

 しかも、クロキが燃やしたので以前よりも小さい。


「どうだ!!! 驚いたか!!! これが奥の手、超魔幽幻大巨神モードザシュガルだ!!! モードガルと一体化した冥王の力を見るがいい!!!」


 人型の頭の部分がザシュススへと変形し、その口が絶叫する。

 超魔幽幻大巨神モードザシュガルが巨大な翼を広げる。


「喰らうがいい!! 熱死炎嵐!!!!


 モードザシュガルは翼を羽ばたかせ灼熱の嵐を引き起こす。


「まずい!!! 水晶絶氷壁クリスタルウォール!!!!」


 周囲への影響を考えたアルフォスが巨大な氷の壁を作り出す。

 灼熱の嵐は氷の壁に阻まれその勢いを止める。

 これでマゾフェチェの街やレーナのいる空船への影響はないだろう。


「クソがああ!! 出てこい我が下僕、影の死霊共よ!!!! 」


 モードザシュガルの身体から無数の瘴気と共に黒い死霊が解き放たれる。

 影の死霊は南の地において多くの生き物の命を奪ったザシュススの眷属である。

 その影の死霊が周囲に解き放たれる。

 

「光の聖鳥ベンヌよ!! 死の影を消し飛ばせ!!!」


 レイジが命じると光の上位精霊ベンヌが羽ばたき、影の死霊達を消滅させる。

 敵にしたらやっかいだけど、味方にすると頼もしく感じるのはないしょである。

 クロキはモードザシュガルを見る。


「その姿になるのなら、もっと早くなるべきだった。それならば自分はモードガルの核に近づきにくかったのに……」


 クロキは魔剣を掲げるとモードザシュガルの正面へと飛んで行く。

 最初から全力だったら、クロキはモードガルの中心部に近づくのは難しかっただろう。

 ザシュススは相手をなめてかかりすぎた。

 光の勇者レイジと白麗の聖騎士アルフォス。

 なめて良い相手ではない。

 そして、特に致命的だったのはクロキを見落としていた事だ。

 もはや、冥王に勝利はない。

 

「暗黒騎士があああああああああ!!!!!  貴様さえ来なければ!!!!」


 モードザシュガルが正面にいるクロキへと掴みかかる。

 ただ力任せの突撃。

 だが、それでもモードザシュガルの巨体ならばかなりの脅威である。

 

「ごめんね……。これで終わりだよ。黒い炎よ刃となれ!!!」


 魔剣に黒い炎が纏わりつくとそのまま伸びて、長い刃となる。

 クロキはその刃を振り下ろす。


「ぐぎゃあああああああああ!!!!!!!」


 モードザシュガルの断末魔の悲鳴。

 黒い炎の刃はモードザシュガルを二つに斬り裂く。

 その後、黒い炎は広がりその身体を燃やし尽くす。

 これで勝負は終わりだった。






★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★


 更新です。

 次回からエピローグです。

 1回で終わるかどうかはわかりません。


 次の章は西大陸で炎竜王と対決の話。

 トトナとトトナに似ている謎の少女が登場予定です。

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