第21話 魔鳥の少女再び

 コウキとサーナは城壁の外へと連れていかれる。

 周囲には武器を持った大人達。

 これからこの大人達の隠れ家へと連れていかれるのだ。

 コウキ達が連れていかれた場所から裏道を通り城壁の外へと連れていかれる。


(この街にこんな抜け道があったなんて……)


 コウキは抜け道を見て驚く。

 おそらく、ずっと前から作っていたのだろう。

 やがて、とある建物の中に入る。

 建物は城壁の外にあるにしてはかなり立派だ。

 だが、それぐらいであり、特に怪しい所はない。

 中に入っても特に怪しい所は見当たらない。

 男の1人が地下へと続く隠し扉を開けるまでであった。


「さあ、降りな。嬢ちゃん達」


 頭目は笑いながら先に降りるように促す。

 おそらくこの下は牢獄だ。

 男達は逃げられないように取り囲んで立っている。

 コウキ達は地下へと続く階段を降りる。

 地下へ降りると予想通り牢屋がある。

 そして、その中には6人の子どもが入っている。

 中にはコウキよりも小さい子もいる。

 子ども達は降りて来た者達を見て恐怖で顔を歪ませる。

 

(予想はしてたけど……。これはちょっと……)


 コウキは周囲を見る。

 白鳥の騎士になろうとしている。騎士としてこれは見過ごせる事ではない。


「大変です!! かしら!! あの方がこちらに来るそうです!!」


 突然階段の上から声がする。


「な、何だと!? またか!! すぐ行くぞ!! こいつらをさっさと牢にぶちこめ!!」


 頭目は血相を変えると4人の子分と共に階段を上がっていく。

 残った子分は4人。

 どれもコウキよりも大きい。


「また、あの方が来たのかよ……。前回からほとんど日が経ってねえじゃねえか」


 残った子分の1人がぼやく。


「おい! そんな事を言うんじゃねえ! あの方に聞かれたらどうするんだ!!」


 もう1人の子分が怒鳴る。

 その顔は恐怖に歪んでいる。


「それにしてもだ。こいつらは不運だな。あの方に連れていかれるって事は死の神の生贄になるって事だからな。だが、悪く思うなよ。おめえらを連れて行かないと俺達の命が危ないんだからな」


 また別の子分がコウキ達を見て憐みの視線を向ける。


「なあ……、どうせこいつらは死ぬんだろ。だったら、その前に俺らが楽しんでも良いよな」


 最後の子分がサーナを見て言うと手を伸ばす。

 

(まずい!! え?)


 コウキは慌ててサーナを守ろうと動く。

 しかし、その動きを途中で止まる


「まて!! 贄に手を出したら大変な……、え!?」


 止めようとした者が驚いた顔をする。

 サーナに触れようとした者が急に倒れたからだ。

 倒れた者も何が起きたのかわからず天井を見上げている。

 その倒れた者の手足があらぬ方向に曲がっている。

 しかし、倒れた者は特に痛みを訴える事もなく寝転んでいる。


「兄貴……。俺の身体どうなっているんだ……。身体が動かねえんだが」


 自身がどうなっているのかわからず子分が言う。


「手足が変な方向に曲がっているぞ……。痛くねえのか? お前……?」


 兄貴分が倒れた男に言う。


「どうなっているんだ? 一体何が?」


 他の子分達も何が起きたのかわからず呆然としている。

 そんな中でコウキは何が起きたのかわかる。

 サーナは男の痛覚を消してから、触れることなく手足をへし折ったのだ。

 コウキはサーナを見る。

 普段と変わらない。

 男の方を見もしない。

 特に興味がないようだ。


「コウ。じっと見つめてどうしたの?」


 サーナはそう言うとコウキに抱き着く。

 それを見た子分達は怪訝な顔をする。


「おい? 何をイチャイチャしている!! 子どものくせによう!! さっさと牢屋に入れ!!」


 子分の1人が大声を出すと牢を開けて中に入るように促す。

 その顔には苛立ちが見える。

 すごく、羨ましそうだ。

 だけど、牢屋に入る気はない。


(牢屋に入る気はないよ……)


 コウキは心の中でそう言うと動くと立っている子分達の顎を軽く叩く。

 何が起きたのかわからなかっただろう。

 次の瞬間子分達が倒れる。

 

「出ておいでよ。助けに来たよ」


 コウキは牢屋に入っている子ども達に言う。

 子ども達は訳がわからないという顔をしている。

 それもそうだろう。

 突然子分の1人の両手両足が変な風に曲がり倒れたかと思えば、残りの子分達が意識を失ったのだ。

 何が起きたのかわからないのだ。


「えっ……。良いの?」


 囚われている少年の1人が聞く。


「うん。このままここにいたら危ない。だから、出ないと」


 コウキがそう言うと子ども達は顔を見合わせて頷く。

 

「待て! お前ら!! お前達が出ていったら俺はどうなる!?」


 腕をへし折られた子分が寝転んだ状態で言う。

 もちろん無視である。

 相手にしてはいられない。

 子ども達は出て来て階段まで行く。


「コウ……」


 階段を上ろうとするとサーナはコウキを止める

 

「はい、上から強い瘴気を感じます。ごめんみんな。ここで待っていて」


 コウキは階段を見上げて言う。

 上に強い瘴気を放つ何者かがいる。

 

(何者だろう?)


 コウキはゆっくりと階段を上る。

 そして、途中で止まる。

 上がったところに誰かがいるからだ。


「たったそれだけしかいないのか? 偉大なる冥王様に捧げる子は多い方が良い。それはお前もわかっているだろう」

「しかし、すでに10名以上。連れて行っております……。いくら騎士の数が減っているとはいえ、簡単に子どもを連れて行く事は難しいのですが……」


 頭目の声が聞こえる。

 誰かに弁明しているようだ。


(来ているのは誰だろう? 1人じゃないみたいだけど)


 コウキは気配を探る。

 頭目と喋っている者とは別に誰かがいる。

 その背後の者から只ならぬ気配を感じる。


「コウ、行こう」


 コウキが階段の途中で止まっていると後ろからサーナが追い抜いて上がっていく。


「ちょっと!? サーナ様!!?」


 慌ててコウキも上がる。

 上がったところにいたのは頭目達とそれに対峙する仮面を被った3名である。

 頭目の前に1名。

 その後ろに2名だ。

 仮面は死神の印が描かれており、死の教団と関わりがあることが伺えた。

 仮面を被っているから性別はわからない。

 その2名から強い瘴気を感じる。

 片方はコウキと背丈が変わらない。

 つまり子どものような姿だ。

 

「あれ……。あの子は? また会ったわね」


 後ろにいる2名の片方が仮面を取る。

 前にキソニア平原で見た顔だ。


 魔鳥の少女シュウシュトゥ。


 コウキは少女の名前を思い出す。

 それがこの街にいる。

 その事にコウキは驚く。


「へえ、シュウシュトゥ。もしかして、あれが前に貴方が言っていた子かしら」


 もう片方も仮面を取る。

 もう片方の顔は見たことがない。

 しかし、只者ではないだろう。


「ええ、ジャヒダラナ姉様。あの子がそうよ、うふふふ。まさか、ここで会うなんてねえ。星の巡りって奴かしら。さあ、来なさい今度こそ私の物にしてあげる」


 シュウシュトゥがそう言った時だった。

 隣にいるサーナの身体から強い圧力を感じる。

 

(えっ、サーナ様が怒っている? しかも、かなりだ)


 コウキはサーナを見る。

 サーナが怒る事は滅多にない。


「何? この女? コウキを連れて行く? どういう事?」


 サーナは呟く。

 その声は小さいが怒っているのがわかる。

 

「あら、何? このちっこいの? やる気かしら?」


 シュウシュトゥもサーナを睨む。

 

「あの姫神様……? 何を? 隠れてエリオスの者達を奇襲する計画が台なしになりますよ」


 頭と話をしていた仮面の者がシュウシュトゥを止めようとする。


「邪魔」


 シュウシュトゥの髪が羽ばたくように動く。


(まずい!!)


 コウキは素早くサーナの前に立つ。

 次の瞬間だった。

 仮面の者と頭目達の身体がバラバラになる。

 すぐ横の壁に羽が突き刺さっている。

 シュウシュトゥの羽矢が頭目達を斬り裂いたのだ。

 サーナの前に立つコウキに向かって来た羽矢は光る壁に阻まれ止まっている。

 どうやら、サーナが作りだしたようだ。

 守る必要はなかったみたいだ。


「やるじゃない。あの子は私が相手をするわ。良いでしょ姉様」


 シュウシュトゥは笑って言う。


「良いよ。元々隠れて行動するなんて面倒くさいと思っていたんだ。計画なんてどうでも良いわ。暴れましょう」


 シュウシュトゥのとなりの女が獰猛な笑みを浮かべる。


(まさか、マゾフェチェの街にこんな奴らが潜んでいたなんて)


 コウキはシュウシュトゥ達を見る。

 クロキ達とは別に戦いが起きるのであった。

 

 

 

 


★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★


更新です。

後告知ですネクストのシズフェ冒険が今無料期間中だそうです。

良かったらどうぞ。

ちなみに8月から週1更新になりました。

理由は自分の筆の遅さから……。

仕方ないね(-_-;)

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