第19話 天使と悪魔
昼になりチユキ達が空船の周囲に天使の軍勢が集まっている。
死都モードガルが近づいた事で迎え撃つためにレーナが招集をかけたのだ。
レーナの前に聖騎士の姿をした5名の天使達が跪いて頭を下げている。
彼らが天使の騎士で構成された聖騎士団の幹部達である。
団長であるアルフォスが不在なのでレーナが彼らの指揮を取る事になる。
聖騎士団は男性しかおらず、特に強い者だけで構成される。
男天使だけの聖騎士団と女天使だけの戦乙女隊。
レーナが指揮を取る事により、普段は別行動を取る2つの組織が共同で戦う事になる。
「本当に大丈夫なの? アータル。アルフォスにレイジもいないのだけど……」
レーナは一番前にいる赤毛の天使を見る。
炎の天使アータルは聖騎士団の副団長だ。
実力もアルフォスに次いで高いらしく、かなり強いようだ。
「はい、レーナ様。お任せください。アルフォス様がいなくてもそう簡単に死神共に後れを取りはいたしません」
そう言ってアータルは朗らかに笑う。
まるで太陽のように明るい笑みだ。
かなりの美形であり、チユキ達はその笑みに魅かれる。
「わあ~。かなりの美形さんだね。聖騎士って恰好良い人が多いね」
リノが天使達を見て言う。
「そうね、結構イケメンが多いわね。しかも真面目で好感がもてるわ」
チユキは頷く。
天使達は外見が良い者が多い。
その中でも聖騎士である天使は強さも兼ね備えている。
さらに真面目な者が多いので、その点はアルフォスよりも好感がもてる。
「はあ、本当大丈夫かしら……」
レーナは溜息を吐く。
「でも、レーナは不安みたいね」
サホコがレーナを見てそう言う。
「そうっすね。もう少し、信用してあげても良いと思うっすけど」
ナオもレーナの態度を見てそう言う。
「それほど敵は強いって事なのかも……。油断はできないね」
シロネは腰の剣に手を掛けて言う。
レイジがいない今、仲間達でシロネが一番の戦力だ。
キョウカとカヤが帰ってしまったのが悔やまれる。
「心配されるのも無理はありません。ですが、再び暗黒騎士に負けたように不覚は取りません。この頭に誓って!」
そう言うとアータルは頭の髪に手を掛けるとそのまま外す。
中から出て来たのは禿げ頭だ。
その他の天使達も同様に髪を外す。
どうやら全員かつらだったらしい。
その姿を見てチユキ達は絶句する。
「えっ……? あの、みんな禿げなの……? 何で?」
リノが驚いた表情でアータル達を見る。
他の仲間達も驚いて開いた口がふさがらないようだ。
「何というか……。精鋭部隊が急にお笑い芸人になったかのようっすね。顔が良いだけにもったいないっす」
ナオが残念そうに言う。
それはチユキも同感だった。
「本当にそうね。折角顔が良いのに……」
チユキはすごく残念な気持ちになる。
何故禿げ頭にしているのかわからない。
しかし、これでは折角の美形が台無しだ。
非常にもったいない。
「はは、大丈夫だよ。強さには問題はないはずだから。あははは」
シロネは引きつった笑みでアータルを擁護する。
確かに強さと真面目さは変わらないだろう。
「やる気があるのは認めます、アータル。でも、思わず笑いたくなるから禿げ頭を見せる必要はありません。しまいなさい」
レーナは目元を手で押さえて言う。
「はっ、申し訳ございません。レーナ様」
アータル達は髪を戻し禿げ頭を隠す。
元通りの姿になったが、以前と同じ姿で見る事ができない。
「何でかな……。急に不安になったわ」
チユキは思わずそう呟く。
(レイジ君は何をしているのかしら?)
◆
レーナ達がいるマゾフェチェの街の東に黒い空船が浮かんでいる。
この船はクロキがモデスから貰ったものだ。
巨体である魔竜グロリアスも乗せる事ができ、かなり立派であった。
クーナはクロキから待機するように言われ持って来たのである。
その甲板でクーナは欠伸をする。
特にやる事がないので暇であった。
そのため、甲板に寝る事ができる座椅子を運んで、そこで寝ているのだった。
「あのクーナ様。我々はこのまま待機でよろしいのでしょうか? 死都が北上しているようですが……」
ノースモールがクーナに聞く。
暗黒騎士団副団長であるノースモールはクロキの補佐をするためにこの地に残っている。
その配下の暗黒騎士達も同じように残っている。
「何もする必要はないぞ。奴らの狙いはエリオスの奴らだ。クーナ達はここで見ているだけで良い」
クーナは手を振って言う。
「その通りです、ノースモール卿。奴らが共倒れになればこちらの利益になります。とりあえず成り行きを見ましょう」
この空船を持って来た女
クロキの部下であるグゥノは部下を引き連れて来ている。
ノースモールと同じくクロキの補佐するために来た。
「しかしだグゥノ卿。我々は閣下のお手伝いをするためにここにいる。何もしないので良いのだろうか?」
ノースモールは首を振る。
「ノースモール。確かにそうだな。まだ動く必要はないぞ……」
クーナは首を振る。
クーナとしてもクロキだけが戦うのはおかしいと思っている。
だが、クロキ自身がそれを率先して行っているので、何も言えない。
(このような雑事。他の奴らに任せておけば良いのだ。全くクロキは…。)
クーナは少し苛立つ。
「そうですか……。わかりました。クーナ様」
「そういう事だ。おいアンジュ。飲み物を持って来い。エリオスの奴らがどう対処するか、見物するぞ」
クーナは側にいる人形娘アンジュに命令する。
本来アンジュは日の光が苦手だが、大きな日除け帽子を被っているので問題なく動ける。
それは一緒に来ている弟である吸血鬼騎士ジュシオも同じだ。
日の光を遮る衣装を身に着け、甲板に立っている。
アンデッドの神が相手だから連れて来たが今の所出番はなかったりする。
「はい、クーナ様。只今お持ちします」
少女姿の人形娘は頭を下げると船の奥へと戻る。
船内にいる熊人の料理人は優秀で様々な料理をする事ができる。
彼女ならクーナのために美味しい飲料水を用意してくれるだろう。
クロキのために様々な食材を乗せているので、多彩な料理も出せる。
しばらくは暇な時間が続くだろう。
「はあ、全くクロキは何をしているのだ」
クーナは空船の上で溜息を吐くのだった。
◆
レイジの光の剣とアルフォスの光の矢が邪神を次々と打倒していく。
「さすがにやりますね……。これだけの数を相手にしても全く怯まないとは」
獄炎公ビフロンは乾いた笑い声を出す。
「それはどうも、ビフロン。君は来ないのかい? ラージェも後ろに下がったままじゃないか?」
アルフォスは笑って言う。
「ふふ、それは貴方達が上手く立ち回っていたからでしょう」
ビフロンは首を振る。
レイジとアルフォスは上手く戦い連携をさせなかったのだ。
ビフロンの炎もラージェの矢も他の神に盾にされてしまった。
「さて、どうする? 他はともかくお前と後ろの矢を放っている奴は少しはやるようだが」
レイジは剣を向けて言う。
「そうですね。大人しく撤退しましょう。ハーパス殿と違い私は好戦的ではありませんからね。貴方達の相手は私達の王となるザシュスス殿に任せます」
ビフロンはそう言うと姿を消す。
周囲の邪神達もそれを見て蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。
「さて、追いかけるかな。次の相手は冥王のようだね」
「そうだな……」
アルフォスは笑って言うとレイジは答える。
結局作戦は失敗であり、直接対決をしなければならないようであった。
★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★
更新です。
本当に暑いですね……。
レイジとアルフォスの活躍をどうしようか迷い、結局とばしました。
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