インジェクションとキャブレター

 応援コメント欄に『インジェクションのエンジンとは!?普通に使えないんすか?』とコメントが来たので大雑把な説明を少々します。


 説明と言っても本当にザックリなので、細かなこととか突っ込まないようにお願いします。私が二級自動車整備士資格を取ったのは三十年近く前になりますので、正直言って記憶があいまいです。


 まずスーパーカブに限らずオートバイ全般が二〇〇〇年ごろに排気ガス規制の影響で何らかの対策がされています。お国が『排気ガスをキレイにしなさい』とお触れを出したのです。


 まず影響受けたのが二工程2ストロークエンジンです。構造が単純でパワーが出る反面、燃焼後に掃気をするのに混合気が混ざるのでどうしても未燃焼ガス(ガソリンが混ざった空気=CO)が多く排出されます。


 辞書によると『吸気・圧縮・膨張・排気のうちガスの入れ替えをする吸気と排気を略して圧縮と膨張の二工程(サイクル)で作動する』らしい。エンジン一回転で四工程エンジンと比べて倍の燃焼回数になります。ゆえに理論上は倍の出力が出ます。


 ま、あくまでも理論上の話なんだけど二工程四九㏄と四工程八五㏄の馬力がほぼ変わらないあたりからすると間違っていないと思います。


 しかも潤滑で混合器と同時にオイルを燃やすため、触媒による排気ガス浄化が少し難かしいとか。で、時代は四工程エンジンに。


 四工程4ストロークエンジンは一工程を燃焼ガスを排出するのに使います。吸気・圧縮・膨張・排気が分かれているので、二工程エンジンみたいに混合器と排気ガスが混じらないのでCO(炭化水素)の排出量が少なくて済みます。


 排気ガスにオイルが混じらないから触媒が汚れにくいってのも長所ね。


 原動機付自転車で四工程エンジンの代表格といえばスーパーカブ。遅い遅いと言われたエンジンは元から排気ガスの有害成分が少なかったために吹き抜けガス循環装置をつけたキャブレターで初期の排気ガス規制に適合しました。


 私が主に分解したり組み立てたりしているのがキャブレター時代のスーパーカブや派生車種のエンジンです。


 キャブレターは『気化器』とも呼ばれる『ガソリンと空気を混ぜる装置』です。ガソリンと空気を混ぜてできた『混合気』をシリンダーに送り、火花を飛ばして着火・爆発をさせてエンジンが動きます。


 シリンダー内のピストンが下がる負圧を利用して霧吹きの要領でガソリンと空気を混ぜて混合気にする『ある意味原始的な仕組み』です。


 構造が単純で整備性が良く、プライベーターでも触りやすいキャブレターですが『ある意味原始的』な仕組みでは『お国が求める有害成分の少ない排気ガスの基準』を達成することが出来ませんでした。


 そもそもキャブレターは排気ガスを細かく制御しようとすればするほど複雑になって長所が薄れていくような(個人的見解)


 排気ガス規制後の『電子制御キャブレター』なんてソレノイドやバキュームホースだらけで、こんなのならインジェクションにしたほうが良いのではないかと思うレベルで複雑だと思いました。ま、あくまで四輪の話ですが。


 そこで、各オートバイメーカーは排気ガス規制に対応するために『電子燃料噴射装置』を採用しました。これが『インジェクション』とか『FI』ってやつです。各メーカーに呼び方は様々です。トヨタだと『EFI』で日産だと『EGI』、本田だと『PGM-FI』だったかな?


 面倒だからまとめて『インジェクション』とします。


 インジェクションは『燃料噴射システム』です。キャブレターが霧吹きだとしたらインジェクションは水鉄砲かな? 排気ガスの濃度やエンジンのノッキング等々をセンサーからの情報をコンピューターが判断して燃料の噴射量を制御します。


 寒い時、疑似的に混合気を濃くする『チョークを引く』とか、標高が高いところで混合比を調整するとかをコンピューターがやってくれるんです。その場に応じて最適な混合気を自動で作ります。無駄なガソリンを送り込まないから燃え残りが少なく、排気ガスもきれいでパワーが出るシステムです。


 ところが、複雑でブラックボックス化している部分もあるからプライベーターには扱いが難しいんだよなぁ……。


 少し長くなったので、インジェクションのエンジンを『普通に使えないんですか?』に対する答えは次回に持ち越します。


 

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