元・首無しプレスカブ⑤ 予想外に作業が進まない

 今回は十一月六日の出来事。スーパーカブと細かな部分に違いのあるプレスカブに苦戦する私ですが、やはりこの回も苦戦するのでした。


 さて、前回はタンクをハンダで穴埋めしてサビ取り剤を入れておいた燃料タンク。結局タンクシーラーで内部をコーティングすることになりました……っていうかコーティングしておかないと後悔しそうな気がしたので。だってハンダで穴埋めなんて初めてだもの。失敗していて当たり前、上手くいけば丸儲けです。


「使ったのはPOR15タンクシーラーです」


 このタンクシーラーは恐ろしいほど強烈に燃料タンク内をコーティングする耐ガソリン性の塗料(と言ってよいのか?)です。給油ノズルが当たったくらいで剥がれない柔軟性のあるコーティング剤です。


「手に付着すると一週間は剥がれません。必ず手袋を着用して取り扱いましょう」


 燃料タンク内の錆取り液を抜き取って水洗いをします。沈殿物を取り除いたら完全乾燥をさせてタンク内へシーラーを流し込みます。


「燃料タンクを密閉してグリグリと色々な方向へ傾けたりひっくり返したりしてタンク内に万遍なくシーラーを行き渡らせます」


 燃料通路にシーラーが入って固まってしまうと冗談抜きでタンクが使い物にならなくなります。カブの場合は燃料タンクから出ているパイプが真っ直ぐなので詰まったところで突いて通せば大丈夫ですが、曲がったパイプだと大惨事です。


「タンクシーラーが固まる間にチェーンカバーを取り付けます」


 錆転換剤で錆止めしたチェーンカバーはクリアー塗装で仕上げてあります。


「錆びた部分や傷を風合いとして楽しむ『ラットロッド』です……嘘です。面倒だったんでさび止めした上にそのままクリアーを吹いただけです」


 要するに錆が進行しなけりゃOKかなってところです。全体がボロなのにチェーンカバーが再塗装でピカピカなんて浮くでしょ? とはいえ錆びたり傷が付いたりしているのに触るとツルツルしているのは面白い感じです。


「さっそく取り付けしましょう……ん?」


 何とチェーンカバーとハブが接触して取り付け出来ません。


「もしかすると違う部品でしょうか?」


 ハンドルを作り分けてしまうホンダの事です。チェーンカバーも別の部品にしている可能性があります。よく考えればプレスカブのリヤハブ周辺は二五〇㏄モデル級のゴツイ部品が使われています。


「ハブを避ける為にチェーンカバーも専用品……ホンダならやりかねん」


 ただ、今の私には確認するのに必要なパーツリストが有りません。


「私の手元にあるカブ用のパーツリストは『スーパーカブ七〇・九〇』と『リトルカブ』の物だけです。今までは何とかなっていましたが、今回は違う部品が多すぎます」


 プレスカブは手強い相手です。このままでは作業が進まないのでプレスカブのパーツリストを買う事にしました。多分、値段に関してはあてにならないと思います。


「パーツの品番さえわかれば正しい部品を購入できます」


 今回のプレスカブはコストダウンがされる前の端々の造りが良い(と言われているらしい)中期型の個体です。初期型よりも改良され、後期型よりコストダウンされていない。独特な部品が多いみたいです。


「今回はステップをインジェクションのモデル、リヤブレーキシューを前期型の物を購入してしまいました」


 ステップは左足側が少し長いくらいなので使えます(足が大きい人には都合が良いとか)が、ブレーキシューはとある掲示板のカブ賢者曰く恐らく違う部品。買ったけれど使えないと思います。


「ブレーキシューは年式を調べて社外品を注文しました」


 パーツリストは毎度のことながらネットオークションで入札中なので置いておくとして、チェーンカバーが違う部品なのか調べます。


「一番良いのは『現物あわせ』です」


 二つの部品を並べて比べる『現物あわせ』は最も確実な方法ではないかと思っています。同じなら取り付け可能、違うなら使えない。単純明快な方法です。


「試しにヤフ〇クの画像で見比べてみます」


 やはりハブが収まる部分のくり抜きが大きいみたいです。試しに買ってみましょう。え? 「プレスカブ用は程度が悪いんじゃないか?」ですって? 


「プレスカブの部品に期待してはいません」


 新聞配達で使い倒されたプレスカブから剥ぎ取ったであろう部品に期待なんてしちゃ駄目です。錆びや傷、凹みが有って当たり前、届いてびっくりなんて標準装備です。


 タンクシーラーは硬化待ち、チェーンカバーは部品違い。作業が進まなくてイライラします。


 次回は十一月七日の様子をお伝えします。

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