エンジン完成……そして奴がやってきた。 

 ホンダのスーパーカブと言えば、社外製の補修部品が多く出回っております。キチンと組みこめて使えるものはもちろん、精度が悪くて使えたもんじゃない三流品まで色々な部品が色々なメーカーから出ています。


「完成間近なのに部品が無い事に気づきました。オイルシールとアルミワッシャーです」


 どちらもエンジン分解時に交換するほうが良い部品です。オイルシールはシャフト根元に取り付くゴム部品です。車体にエンジンを載せてから交換出来ない事はない部品ですが、エンジンを分解したときに交換するほうが楽ですから変えてしまいます。そもそもエンジン分解時にオイルシールは取っ払ってますからね。そのほうがきれいに掃除できますもの。


「アルミワッシャーは潰れてオイル漏れを防ぐことからクラッシュワッシャーとも呼ばれています。オートテンショナーとヘッドのボルトからのオイル漏れを防ぐパッキンです。


「純正ガスケットキットを使ってカブやモンキーのエンジンをオーバーホールする場合、ヘッドサイドカバー取付けの長いボルトに使うクラッシュワッシャーが入っていませんので注意してください」


 以前組んだエンジンで某ショップのボルトセットを使いました。そのボルトセットに銅の分厚くて硬いワッシャーが付いていたんです。潰れないから部品にフィットせずオイル漏れをしてしまいました。銅ワッシャが潰れるほどトルクをかけてボルトを締めていたらオイル漏れはしなかったかもしれません。でも部品に良い影響は与えなかったでしょう。


「メーカーが『この部品をここに』と指定するのは理由があります。なるべく土台のエンジン本体へダメージを与えないように気を付けましょう」


 オイルシールを組みこんで、オートテンショナーにオイルを注入してからアルミワッシャーを介してボルトを取り付けます。


「最後にエンジンオイルを注入してギヤを入れ、フライホイールを仮付けしてクランクシャフトを回します。エンジン内部へオイルを行き渡らせたら完成です」


 今回完成したエンジンはプレスカブのクランクケースへCD五〇のトランスミッションを組みこんで四速化、ニュートラルスイッチの接点にカブ五〇カスタム用を使ってトップギヤ走行時にランプが点灯可能。実質『プレスカブ四速』のエンジン一式です。


「ところで皆さん、オートバイって部品が部品を呼ぶんです」


 プレスカブは走行中に三速からニュートラルへギヤチェンジできます。これは新聞配達時に便利だからなんですって。もしも走行時にニュートラルから一速にギヤを入れたら非常に危険です。だから三速で走行時にメーターの『③』ってランプが点きます。普通のカブに在る安全装置がありません。素人が乗ると少し危ないプロ御用達なカブです。


「多分ですけど、オートバイの部品は寂しがり屋さんなんですね」


 なぜプレスカブの説明をしたかと言いますと……来ちゃったんですね、プレスカブが。


「最近、某有名ベースのタレントさんが弄ったりアニメになったりで古いカブの値段が上がっています。カブなんてまともに動く個体は私の手が届かないお値段になってしまいました。つまり、今回我が家へ来たのはジャンクです」


 とある週末の早朝、文字ラジオの準備を終えて某オークションを見物していた私が見つけたのがエンジンの無いカブ。欠品こそ多いものの県内からの出品で引き取り可能となれば安く買えるチャンス。でも基本的に冷やかしなので開始価格に数百円足した値段で入札していました。


「ん~っと、書付きフレームとハーネス。えっと、足回りも付いてるなら有りかぁ……取りに行ったら送料もかからんし……」


 でもってオークション開始から数日後、高値更新の通知が来て「うんうん、縁がなかったんだねー」なんて思っていたところ、更に翌日になって『繰り上げ最高入札者』のお知らせがきました。高値を付けた人が何らかの原因でキャンセルしたか入札取り消しになったみたいで私が繰り上がってしまったみたい。


「ん~? ま、あと何日か有るし誰かが買うやろう……」


 それでもどーせ誰かがもっと高値で入札するだろうと高を括っていたんですが、そのまま落札出来てしまいました。欠品があるとはいえカブです。立派なオートバイです。総生産台数一億分の一がまた我が家へ来ることに!


「やばい、もしも私が居ない時に届いたら大変な事になる!」


 速攻で出品者に連絡を取って直接引取りにしてもらい、日曜日に取りに行くことになりました。場所は県内だけど我が家から遠い場所です。


※引き取りに行ったのは蔓延防止等重点措置が適用される前です。尚、新型コロナウイルスに対する対策は出来る限りして行きました。

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