二〇二〇年最後の作業(混ぜこぜエンジンを組み立てる③)

 腰下が出来れば次は腰上。ここまではどちらかと言えばエンジンってよりもクランクケースの中がメインでした。自動車で言えばトランスミッションの組み立てに近いですね。オートバイはコンパクトに作らなければいけないから一体になっているのです。文献によると黎明期の国産オートバイにはエンジンとトランスミッションが別なモデルもあったとか。


「それじゃあ~ですね、腰上の整備を始めま~す」


 なんだかいつもと雰囲気が違いますが、これが誰の口癖かわかるあなたはトヨタ関係の某専門学校卒業生かも。まだあの学校に居るのかなぁ、ランクルのM先生(その後アクアに乗り換えたらしいけど)


 実は私、ピストンピンのクリップ取り付けが苦手です。だからクランク単体の時にピストンの取り付けをしてます。当然ピストンピンのクリップも取り付け済みです。もうね、何回かピストンピンのクリップを無くせば嫌になるってもんですよ。飛んで行って無くすだけならまだしもクランクケースに入った時はもう「世の中全て滅びろ」って気持ちになります。クランク単体の時に組んじゃえば結構簡単に取り付け出来るんですけどね。ピストンピンクリップの奴は思いもよらない所からクランクケースに入るからねぇ。


「ピストンの取り付けが出来たらスタッドボルトをセットします」


 スタッドボルトの取り付けはダブルナットで行います。


「ダブルナットは名前の通り二つのナットをスタッドボルトに取り付けます。片方のナットを固定して、もう一方を締め付けて……手前側のナットを時計回りに回すとスタッドボルトがクランクケースにねじ込まれます」


 奥のナットを反時計回りに回すとスタッドボルトが緩みます。スタッドボルトを取り付けたらシリンダーの位置決めをするノックピンを二個取り付けてシリンダーにピストンを挿入です。おっと、シリンダーの下側に付くベースガスケットとオイル通路のOリングを忘れないように取り付けておきましょう。


「Oリングはシリコングリースを塗っておくと作業中に取れてしまうのを防げます」


 純正ピストンを純正シリンダーに挿入する場合はシリンダー下面の面取り部分を利用してピストンリングを押し縮めて取り付け出来ますが、今回の八八㏄用直径五二㎜ピストンはスリーブ自体の厚みが薄くて作業に苦労しました。


「どうしてもセットできない場合は無理せず専用工具を買って取り付けましょう。ピストンリングコンプレッサーは大よそ三千円(送料込み)ほどで買えます」


 私は専用工具ではなくてペットボトルを切ってピストンリングコンプレッサーの代わりにしました。要するにピストンリングを縮められればOKです。


「工具を買うときは、死ぬまでに何台エンジンを組むかを考えないようにしましょう。絶対に元は取れません」


 シリンダーにピストンを挿入で来たところで私の体が活動限界に達しました。四十代半ばになると寒さが膝や腰、更に肩や背中に来ます。


「残念ながら二〇二〇年の作業はここまでです。次回はシリンダ―ヘッドを取り付けてエンジンを完成させます。ではまた次回、二〇二一年にお会いしましょう!」


 とか何とか言いながら、この文章は二〇二一年の一月六日に書いております。

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