正月三が日もエンジンを組み立てる。
医師からお酒を止められ思うように食べられない私にとって、正月三が日ってのは何の楽しみも無く只々苦痛な時間です。ただ、去年(二〇二〇年)から今年(二〇二一年)にかけてはそれほど苦痛ではありませんでした。新型コロナ肺炎騒動は全く落ち着かず、終息の気配が無いまま年が変わりました。おかげで年末から年始にかけての行事が軒並み中止に、当然ですが「正月くらい呑め」と酒を勧めてくる来客も無く、何をしていても何も言われない。暇なのでラジオを聞きながら作業の続きです。
「年末はピストンをシリンダーに挿入した所まで作業しました。これからシリンダーヘッドやカムチェーン、そしてオイルシールを組み付けます」
私の個人的見解ですが、スーパーカブのエンジンオーバーホールで一番の難所はピストン周辺だと思っています。ピストンリングやピストンピンのクリップ取り付けはコツが必要な場所です。ピストンをシリンダーに挿入する時も注意が必要です。
「純正のシリンダーに純正のピストンなら組み付けしやすいのですが、シリンダー内径を目いっぱい大きくした八八㏄ボアアップキットの場合は道具を使う方が作業が楽でしょう。これから整備するシリンダーヘッド周辺は正しく組めるように目印が有ります。修理書を熟読して正しく組み立てましょう」
実は組み立てる前にヘッドガスケットで悩んでいます。部品取りエンジンは分解して直そうか迷ったのでしょう、一度シリンダーヘッドを外した形跡が有りました。ヘッドを外した時点でクランクがダメなのがわかったのでしょう、そのままヘッドを乗っけて形にして某オークションに出品……だったと思われます。
「実はシリンダーによって使うガスケットが違います。間違えると組み立てが出来なくなるばかりかエンジンを破損する恐れがあります」
スーパーカブやモンキーのヘッドガスケットの場合、二種類の違う厚みの物が有ります。『ペーパータイプ』と『ステンレスタイプ』です。
ペーパータイプのヘッドガスケットは厚みが一・五㎜です。
ステンレス製のヘッドガスケットは厚みが〇・二五㎜です。
大手メーカーがシリンダーとガスケットの組み合わせをホームページで紹介しています。シリンダー高が六二・六㎜の物に組み合わせるのは一・五㎜厚のペーパータイプを、シリンダー高が六三・四㎜の物には〇・二五㎜厚のステンレス製を使います。
「間違えた組み合わせをするとカムチェーンを取り付け出来なかったり、ピストンとヘッドもしくはバルブがヒットする恐れがります。前回書き忘れていましたがシリンダー高は測定済みです」
今回使うシリンダーは高さを測定したら六三・三㎜でした。
「メーカー公表値は六三・四㎜ですが、これ位なら誤差と言っても良いでしょう。今回はステンレスガスケットを使います。それでは作業にかかりましょう」
取り寄せたガスケットキットはK社の製品です。今回使うシリンダーはT社の物ですが、個人的考えですが、メーカーごとにヘッドガスケットを自社で製造しているとは思えません。
「実際はわかりませんが、ガスケットを作っているメーカー自体は同じだと思います。K社とT社のガスケットを比べましたが、違いがよく解りませんもの」
まぁ真意はさておきガスケットを介してヘッドを載せ、カムチェ-ンを通したり中古部品から程度の良いカムスプロケットを探したりしながら組んでいきます。今回は社外シリンダーって事で純正ならOリングが入るところに何も入らなかったりしました。
「K社やT社、その他D社にM社あたりなら普通に組めると思います。ネットオークションで売っている妙に安いボアアップキットは少し注意しましょう、仕上げが荒い物が有るみたいです」
カムスプロケットやフライホイールの合いマークがヘッドやクランクケースにある印と合うかを確認します。合いマークを確認してぴったり合ったら各部のカバーを取り付けましょう。
「カムチェーンテンショナーと予めオイルシール類を交換しておいたジェネレーターベースを組み付けます。カムチェーンテンショナーのボルトを外してオイルを注入しておきます。この際、必ずアルミのワッシャーを新品に交換しましょう」
アルミのワッシャーは潰れることによりオイル漏れを防ぐ役割をします。一見再使用できそうですが必ず交換しましょう。純正がガスケットキットには入っていますがそうでないガスケットキットには入っていない場合が有ります。
「今回の社外ガスケットキットには入っていませんでした。でも大丈夫、こんな事は想定内です」
純正の部品番号は『90461-357-000』、品名は『ワッシャー.シーリング6.5×12』です。一台のエンジンをオーバーホールすると二個使います。小さな部品が無くて作業が進まないのは効率がよくありません。まとめて注文しておくと良いでしょう。私は在庫が四個未満になると注文します。
「これでヘッド周りの組み付けは終了です。続いてキックペダル・チェンジペダルのオイルシールを取り付けます。これでエンジンが完成です。今回はエンジンを車体に搭載して始動するところまではいきません。暖かくなるのが待ち遠しいです」
コロナ禍で外出がままならない日々が続きます。外出が出来ないならお家でバイクのメンテナンスをしてみましょう。きっと愛車がますます愛おしくなります。
では今回はここまで。くたびれたミニバイクが蘇る様子を読みたい方は次回の『京丁椎とスーパーカブ・その他ミニバイク』でお会いしましょう。ではまた!
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