混ぜこぜエンジンを組み立てる

 今回は年末の倉庫整理を兼ねて、スーパーカブのエンジンを社外部品を使って組んでみます。倉庫整理と思って作業を始めたんですが、良く考えると社外部品はエンジンに組みこまれて整頓できますが、代わりに純正部品が出てくるんですね。余った純正部品とジャンクのクランクケースを使ってジャンクエンジンを組み、そのエンジンを完成させるために部品を買って(こーゆー場合はジャンク部品をまとめ買い)しまうと余った部品が倉庫の肥しとなって仲間を呼ぶ……。


「片付かんわぁぁぁぁぁあっ! あと、寒いっ!」


 このエッセイを書いているのは十二月半ばの某週末。どこそこ自動車道で数百台が雪で立ち往生しているニュースが流れています。我が家のある地域も冬将軍が到来です。気温は一桁、私が作業している物置は冷暖房が無く電気も通っておりません。もうね、倉庫に入った時点から『京丁椎初号機、活動限界までの残り○○分○○秒です!』な世界ですよ。活動限界を超えたらどうなるかって? 風邪をひくか腰が痛いかで寝込みます。


「自警団の巡回やら年末の大掃除やらで忙しいのに、何やってるんやろう……」


 自問自答しながら作業は進みます。冷え込む前にベアリングの交換は済ませておきました。ついでと言ってはなんですが、クランクケースのカウンターシャフトの逃げ加工もしました。カブ五〇カスタムのミッションを使えば必要ないのですが、今回はカブ九〇用社外四速ミッションを使うからです。


 カブ九〇のクランクケース幅に合わせたミッションへカブカスタム五〇の凸付きギヤを組みこんでます。カブカスタム五〇のミッションをカブ九〇に組むときの逆をやってるわけですね。もう訳が分からない。


「ついでにオイルポンプのピボットが収まる様に加工しておけば面倒が減ったのですが……」


 オイルポンプピボットの件は後ほど書くとして、純正部品や不良在庫の部品を使って組んでいきます。主な社外部品はカブ七〇クランクにカブ九〇用ミッション、タケガワ製のオイルポンプにシリンダーキット。細かな部品は純正品だけではなくてポッシュの補修部品やキタコのガスケットキットを使って組みます。


「ベアリングを交換したクランクケースに部品を組み付けていきます」


 何度か作業しているのでサクサクと進みます。


「あれ? カブのケースやと大丈夫じゃなかったっけ?」


 プレスカブのクランクケースにカブ九〇のポンプを組んだ時は普通に組めたのでカブのクランクケースならモンキーやカブ九〇に使われている『細いスピンドル+ピボット』の組み合わせが出来るもんだと思っていました。ところが今回のクランクケースは凹部が浅い物でした。


「あ~あ、またポンプ加工するんか~面倒くさい~!」


 前回の遠心四速ロータリー(八五㏄)でやった加工を再びすることになりました。オイルポンプの凸部分は鉄製で固いのです。普通の鉄用ヤスリでは歯が立ちません。ダイヤヤスリで削ってもサンドペーパーで削っても時間がかかります。


「オイルポンプの凸部分は取り外しができます。まず最初にオイルポンプを分解します……ここでトラブルです。強化オイルポンプに使われている低頭ネジを舐めました」


 低頭ネジは大容量オイルポンプと遠心クラッチのクリアランスを稼ぐために使われている特殊(ホームセンターで不通に売っていないという意味で)なネジです。残念ながら京のジャンク箱にはありません。


「傷めたネジは再使用できません。部品を注文します」


 低頭ネジは鋲螺店で売っているかもしれません。ですが、バイク専門店から取り寄せる方が早いでしょう。今回は愛知県の専門店に発注しました。ついでにクラッチアウターカバーの皿ビスも注文しました。+ビスが使われている部分です。


「注文ついでに暖かな部屋へ移動して作業を続けます。削るのは約一ミリです」


 ネット動画を見ながらサンドペーパーで少しずつ削ります。三十分でコンマ一㎜しか削れませんが、削らなければオイルポンプを取り付け出来ません。削ってはノギスでチェックを繰り返します。コンマ二㎜ほど削ったところで思い出しました。


「あ、この前リューター買ったやん。リューターで削ったらエエやん」


 そうです、すっかり忘れていました。リューターとは細かい加工をする切削機です。歯医者さんのチュイ~ンって削る奴と言えば解りやすいですか? え? 何か痛くなる? プロ用ほど回転数は上がりませんが、似た音がします。


「電動工具の威力は絶大です。さんざん苦労した加工が数分間で出来ました」


 リューターで荒削りをしてからオイルストーンで面を整えます。私はサンドペーパーで面取りをしたのちにコンパウンドで磨きましたが、そこまで神経質にならなくても良いと思います。削った凸部をオイルポンプに取り付けて仮組みします。オイルポンプとクランクケースに隙間が出来なければOKです。


「挿入時に抵抗が有りませんね、ポンプとケースの隙間も有りません。作業は成功です。低頭ネジが到着したら作業再開です」


 オイルポンプ本体の組み立てが出来ません、今回の作業はここまでです。


「次回はオイルポンプを組み立ててから組み立てを続けます」


 くたびれたエンジンが蘇るのを読みたい方は次回の『京丁椎とスーパーカブ・その他ミニバイク』をお楽しみに。また次回お会いしましょう、ではまた。

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