京丁椎とスーパーカブ・その他ミニバイク

ついでに直しておく。

　さて、液体ガスケットが固まるまでの間に細かな不具合を直しておきます。別に頼まれたわけじゃないけれど、気に入って乗ってくれているなら調子良く乗り続けてほしいと思いません？

「せっかく預かったんで、細かな部分を整備しておきます」

　最初に気になったのがヨロヨロ走る事です。原付スクーターのタイヤは比較的小径なものが多く、小さなタイヤは少し空気が抜けただけで空気圧が低下して不安定な走りになります。

「タイヤの空気圧低下は燃費にも悪影響を及ぼします」

　調べてみると前後共に手で押せば凹むくらいに低下していました。

「これはいけません、空気を入れておきましょう」

　自転車用の空気入れでも調整はできますが、私はエアーコンプレッサーを持っているのでそちらを使いました。空気入れやエアーコンプレッサーが無いご家庭は給油する際にガソリンスタンドに頼んで調整してもらっても良いでしょう。

　続いてキックペダルの固着を修理しておきます。

「ホンダのスクーターは素晴らしいのですが、何故かキックペダルが固着します」

　構造的か材質の問題かわかりませんが、シャフトが錆びたりグリス切れになったりで固着することが多い傾向です。錆びた部分はワイヤーブラシなどで錆を落としてグリスアップしておきましょう。ご家庭で作業すれば三千円ほどの節約です。

「あまり知られていませんが、ツーストスクーターでもオイル交換は必要です」

　オイルを燃焼させながら潤滑するツーストロークエンジンはオイル交換が不要です。ですが駆動系にもオイルが使われています。駆動系のオイルはドレンボルトが無く完全交換はできません。車体を傾けて古いオイルを抜くのが一般的ですが、私はシャンプーなどのポンプを使って吸い出します。スーパーディオのミッションオイルの量は九十㏄です。

「丁度手元にミッション用オイルがあるので交換しておきましょう」

　注入口から新しいミッションオイルを入れ、あふれ出たら規定の量です。ミッションオイルを入れてからも作業は続きます。エアクリーナーのチェックや清掃、ブレーキの調整などついでに出来る部分は一通り整備しておきます。外装が無いのでエンジンも掃除し放題です。ついでのスパークプラグも掃除しておきました。

「ここで整備は一旦中断です。丸一日おいて液体ガスケットを硬化させましょう」

　後付けの社外製サイドスタンドも分解して可動部をグリスアップしておきました。組み立てで一苦労したのは内緒です。

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　丸一日が経過したので液体ガスケットが固まっているか確認します。

「液体ガスケットは数時間で固まりますが、念のために一日時間をおきました。では、タンクにオイルを入れて漏れが無いか確認しましょう」

　幸いなことに漏れは止まりました。オイルタンク周辺をパーツクリーナーで掃除してから外装を組んでいきます。

「外装の組み付けが出来たら洗車です。整備をするとどうしても手垢や油脂類で汚れますから必須です。ついでにシリコンを塗って樹脂を保護しておきましょう」

　個人的見解ですが、乗りっぱなしにする人ほど愛車がキレイになると喜ぶものです。車体を艶々にしてからタイヤワックスをかけてタイヤも黒々させます。

「タイヤを洗剤で洗ってからタイヤワックスをかけます。トレッド（接地）面にワックスが付くとスリップするので、一旦ウエスにタイヤワックスをスプレーしてからサイド面に塗りこみます」

　これで作業終了です。早速試乗に出かけます。もともと調子良くセル一発でかかっていたエンジンですがスパークプラグを掃除したからか、更に調子が良くなりました。ためしにキックペダルで始動しましたが、きちんとエンジンかかりペダルもスムーズに戻りました。

「おおっと、加速が良くなってフラフラしなくなりました」

　タイヤの空気圧は大事です。ビシッと走る様になりました。ブレーキも効きが良くなりました。万が一何かが飛び出してきたとしても止まれるでしょう。半日ほど市内を走り回って異常がなかったので納車です。ガソリンとオイルを補充して持ち主に返しました。

「今回は応急処置的な修理なので整備代は請求しませんでした」

　納車の時に「オイル漏れとついでに少し診といた」とだけ言っておきました。その後持ち主に調子伺いをしたら「オイル漏れが直って良かったんですけど、なんかメッチャよく走るようになりました。サイドスタンドも軽く動くし、いろいろ直してくれたんですね」と言ってたので修理は成功でしょう。

　これでスーパーディオの修理は終わりです。次回からはホンダゴリラに積むエンジンを組み立てます。使い倒したスーパーカブやスーパーディオを修理している間に季節は夏になりました。暑さと戦いながらエンジンを組み立てましょう。