狐と狸の騙し合い。

 正直な所、車を買う契約なんぞ狐と狸の化かし合いである。まぁ個人的見解ですとは言っておくが。


 根本的にウチの親父は時代について行けていない。未だに軽自動車は車体が五十万円くらいと思っている辺りから脳みそが昭和とタバコのヤニで固まっているのだと思う。二ストのアルトバンじゃあるまいし、今どきそんな値段では四駆の軽が買える訳が無い。そこで、京丁椎はN-VANの見積もりを一番高いグレードのフルオプションと本命の質素なグレードの二つ出してもらいました。前車は軽の商用バンなのに諸費用込みで二百二十万円超え。わ~おって感じです。


「……っと、まぁこっちを見せてからこっちを見せる訳や」

「なるほどなぁ」


 まぁ後車も諸費用込みで百八十万円くらいになってしまうのだが、今回は『ナビを付けろ』『ドライブレコーダーも付けろ』とリクエストも有るのだから仕方がない。


「ちなみにこっちを見せて『ご近所付き合いに支障をきたすレベルで値引き交渉をした』って言うた」


 もちろん強引な値引きなどしていない。高い方の見積もりを見せて四日後に安い方の見積もりを見せただけだったりする。それでも値段しか見ない親父は「四十万も値引きさせたか! よっしゃ!」と大喜び。


「届いて『安い奴やんけ』って怒ったりせんか?」

「大丈夫、値段しか見てない」


 京丁椎と先輩に言わせると「〇〇を付けて〇〇〇万円で!」等と言ってクソ偉そうに踏ん反り返ってる奴は案外楽な客だったりする。実際に思うより車には利益が乗っているもので。バカな客がクソ偉そうに言った値段は案外普通に出来る値段なのだ。しかも『〇〇』にもピンからキリまである。例えばだが、ナビゲーションシステムだって最低限の情報しか表示しない物から「うぉぉっ! ナイト二〇〇〇?」と思うほど精密な物までピンきりだ。


「ナビかてよ、そこそこでエエねん」

「そもそも僕は滋賀県内やったらナビ要らんし、県外に行く事も少ないしなぁ」


 滅茶苦茶な値引きをしてくる客も先輩に言わせれば楽らしい。「いや~、ウチでは無理ですわ~」と追い返してしまえば良い。そもそもそんな客は点検や修理でも値切る。実際のクルマ屋さんって車検とか点検、その他保険や一般整備で長くお付き合いがある方が新車を売るより利益を生むんだとか。


「で、一番面倒なんがお前みたいにお互いの手の内を知っていて、ご近所付き合いがあって、こんな風に決算期でも何でもない時にフラッと来る奴や」


 まぁそんな訳で値引きの交渉は無し。こっちも先輩の店にどれだけの利益が落ちるかはおおよそわかっているし、店が潰れて面倒を見てもらえないのは困る。だからその辺りはお任せです。


 問題は親父です。先程書いた「〇〇を付けて〇〇〇万!」みたいな事を分からず言います。そこで『高価なグレードで見積もりを出して、実際に買うのは安いグレード作戦』が発動。解決しました。さすがに冷静になってからは「四〇万円も値引きさせて後々の整備やご近所づきあいは大丈夫やろか?」と言っていますが……知らん。


「一応ダメ押しで親父に会ったら『お宅の息子さん、えげつない値引きするわ~今後の付き合いは考えさせてもらいますわ』くらい言っといて」

「まぁエエけどよ……エエんかなぁ?」


 N-VANは安いのと高いので五十万円くらい差があります。高価なグレードでの見積もりを見せておいて、実際には安い車体に必要な物を取り付けてもらうのが一番無駄が無い。まぁ稀に必要な物が全部付いていて、要らない物は何もついていないみたいな車種も有ったりしますが。そもそも一番高価な車体の装備は京丁椎に要らない物が多過ぎる。何も無い所へ必要な物だけ付ける方が良い。


「一番下のGで良いわ」

「いや、Gやとナビパッケージが付けられん。下から二番目のLの方がドライブレコーダーの配線も付けられる」


 一番安いグレードは付けたい装備を付けようとするとフィッティングキットや追加装備(助手席のサンバイザーとかステレオ用のスピーカー)が必要になるのでお得感が薄いそうです。そこで下から二番目のLってグレードにしました。トータルで五万円ほど上がりますが、他にも若干快適装備が増えるのでまぁいいでしょう。室内色もシート地も高いグレードと同じになりますからね。


 結局、必要な物を取り付けても最初の見積もり(4WDターボCVT車)よりも三十万円ほど安くなることが分かりました。多分だが両親は「思ったより安くで買った」と大喜びするでしょう。どうせ高価な装備なんてわかりません。見栄を張って無駄な金を使うくらいなら見栄を張らずに節約した方が良い。そして、節約した分でスタッドレスタイヤを買います。


 京丁椎にはメッキや木目パネルよりもスタッドレスタイヤと四輪駆動の方が重要なのです。多分、母ちゃんもそうだと思う。


 さぁ、注文したので一旦ここで区切りますね。納車まで三ヶ月在りますので、本来のバイク弄りとガレージライフのお話に戻りましょうか。


 納車後はホンダN-VANのインプレをちょこっとする予定です。

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