家族会議
説明した所で理解は出来ないと思うが、出資者である父と母にカタログを見せて説明する。やはりお年寄りは頭が固く、デッキバンは「変な車だ、ご近所の目があるからやめてほしい」と言われ、ハイゼットカーゴとエブリィは「バンにしか見えない、もう少し良い奴を」と言われてしまった。両親からするとバモスは立派なワゴンに見えるらしいのだが、京丁椎にはその感覚が分からない。
もちろん日産GTRは今回も却下されました。四輪駆動で四人乗れるオートマ車なのに(まだ言うかw)
やはりN-VANも気に食わないらしい。「若向きではない」のだと言う。
(N-VANにはタコメーターが付いている。充分若向きではないか)
ちなみに私はタコメーターを見て運転することが多い。あとで付けても良いのだが、やはり純正で付いているならそれに越したことはない。
そこで京丁椎は考えた。老い先短い老人は生き急ぐ。奴らは残りの寿命が短いせいかやたらと未来を求めたがる。そう、老人こそ人類の中で最も未来を夢見るのだ。実際に未来を見る事が出来ないからであろう。老人には遥か未来を目指す為の羽根が無いのだ。そんな老人に必殺と言える殺し文句が有る。それは……。
『最大』『最新』『最高』『全自動』『電動』である。
最近は『ハイブリッド』も老人にとっては魅惑のキーワードだ。そして、最新の心躍る『未来の車』に乗った老人は老いた体を未来に適応できずにアクセルとブレーキを踏み間違えてコンビニへ突っ込むんだ、間違いない。
デッキバンに後ろ髪を引かれる思いであったが、どう転んでも車検は近付いているし、オカンの乗るバモスは屋根がベコベコだし、京丁椎の乗るアクティバンは車体底部がサビサビだ。もう悠長な事は言っていられない。
「N-VANは『最新』のミニなバンで、クラス『最大』の車内スペース。今、『最高』の車体(クラス最大級の全高らしい)やで」
そう、老人にとって魅惑のキーワードを並べて騙すくらい、『KAC10 カタリorバーグさん』で話を作る事に比べたら屁でも無いのだ。
「しかも『電動』格納ミラーやで!」
「良く分からんけど新しいならエエかなぁ……」
カクヨムで鍛えた文章力を使い、京丁椎は老夫婦を説得することに成功した。やはり老人は新しい物に弱い。恐らく自分が古ぼけているからだろう。
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